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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》

05《赤子スタート》

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俺はこいつをどうしてやろうかと考えている。

「ほへ?」

「んぎゃ!」
(ほへ? っじゃねぇよ可愛いなくそ!)

なんか頬っぺが痛いなぁと目が覚めたら、横には巨大化したねこのこが居て、俺の頬をつついてたんだ。
まぁ何故か夢でこの景色を見てたから、さほど驚きはなかったんだけどな……

「ほらほら、ねこのこちゃん、あまりススムをつついたらダメですよぉ」
何故この母さんはねこのこの存在をこうも受け入れてんだ? って普通はなるがまぁ……それも寝てる間に見た寝てる間の夢のお陰で分かっている。

♢

僕が頬をつつかれること10分ぐらいの頃か、驚く老婆の声のせいで「んん……」と目が覚めた母である。

「ススム……ふふ、よしよし」寝ぼける母の手。

「ふにゃ?」俺でなく、俺をつついてるねこのこの頭を撫でたようだな。





「…………え!? 耳!?」
まぁ母が驚くのも無理はない。なんせ無いはずの猫耳が撫でた頭についてるんだからな。
驚き耳を確かめるのにガシッと掴む母。

「ふにゃ!!???」ざまぁ! じゃなかった。驚くねこのこ。

母さんは飛び上がるように布団を退け起き、自分の手の先を見た。

「にゅぅ……ぐしゃぐしゃ……」あっ気にしてんのね……
頭の毛が逆立ったねこのこは腕で頭を擦り整えている。それを一気に目が覚めた母はぼけーっと見ている。

多分あれだろうな、じっと見られてるのが少し気まずかったんだな。「にゃっ!」なにがにゃっだよ! 手を前に出し、まるでよっ! て感じにねこのこは母に挨拶した。

「…………………………だれ?」
まぁそうなるわな。
「ねこのこはまだねこのこ!」
まだってなんだよまだって! ていうか名前を聞いてるんじゃないよそれ!!

「……ねこ……のこ……?」





再度硬直した母さん、そして母さんは時間差で言う。

「!!?? ねこのこ族!?」
ねこのこは、コクコクと頷く……母さんの驚きように対しこの堂々たる適当具合、本当にマイペースだなって思うわ。
いや、ふふんと小さくドヤ顔したとこからして、意外と照れてる可能性もあるな。
そんなねこのこを置き去りに母さんは続ける。

「まさかうちの子に勇者の証である、ねこのこ族が産まれるなんて……!」
と、言う言葉で、俺は母さんが何故ねこのこをこうも簡単に受け入れたのがわかったってわけだな。

たしか、ねこのこ族の設定……勇者(プレイヤー)をサポートする。
つまりねこのこが僕の元に産まれた事で、俺は生まれて間のなく母さんに尋常じゃない程の期待を寄せられてるって訳だな。

「あなたは私の自慢の息子よ、なんたって……いつか世界を救う勇者なのですから」
やめて頂きたい。見た目は赤子でも中身はただの引きこもりニートだった男なんだ。
ていうか、今現在どうして俺はこうして赤子から人生やり直す事になってるのすら、曖昧で分かってないんだからさ。

「なでなで」「つんつん」

あと、産まれたばかりの赤ちゃんはもっと優しくめでましょう。

♢

そんなこんなあって数日が過ぎた今日この頃。

「……んぎゃ!」
(腹減った!!)

ついこの間まで首も座らない赤子だったと言うのに、俺は前世の記憶があるからだろう。マッハ速度での成長を果たし進化した。
なんせ生まれてから数日、俺はもう……ハイハイが出来てしまうのだからな!

「あらススム、お腹すいたのかな?」
下を向き行ってくる母さんだが、俺の目線は常にスレンダーな母さんの足、やはりうちの母さんは若くていい足してるわ。
「とっとことことことーー!!!」
足に見惚れていると現れる、次はちっこい子供の足だな。
こいつは危険、さっと台所にあるリビングテーブルの椅子の下に潜り込む。

耳をぴくぴくさせきょろきょろしてる。
あれは俺を探してる。ねこのこに見つかったらどんな目にあうかわかったもんじゃない。
首が据わらず身動き取れない時は毎日頬っぺを赤くなるまでつんつんしやがって、俺はもうハイハイ出来る、お前にはもう屈指な……なっ……がくぶるぶる。

「ちち、めっけ!」

「んぎゃーーーーー!!!!!」
(おーーたーーすーーけーー!!)

まぁそりゃ当然、ねこのこはあまり見た目は変わってないが、結局のところねこのこも産まれたばかり。
サイズは5歳ぐらいの子供と同等で、椅子の下に潜ろうが簡単に見えてしまうのは当然の事だった。

ガシッと腕を捕まれ、ずるずるずる~と引き摺られる俺。

「相変わらず仲良しね~ご飯できたらまた呼ぶわね」

たぶんうちの母さん大きな目は付いてるが、かなりの節穴だと俺は思っている。

「おぎゃっおぎゃっきゃっきゃっ」
(やめろ、やめてくれー、脇をむにむにするなー)

「むにむに、つんつん、むにむにむに~えへへ~」


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