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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
04《ここはどこ?》
しおりを挟むここはどこだろう。
真っ白な映像から一変、突如訪れたのは真っ暗闇。
ふわっと浮いてるような、けどまるで聖母に包まれる様な、とても落ち着くようで、でも何か焦るような不思議な感覚。
手を動かす、手は動く。
足を動かしてみる、足が動く。
けれど目は開かないし、口も開かない。
どこか狭い空間に無理に閉じ込められてる感じがするのだが、別に出たいと感じることも無い。
ただ過ぎていくだけの日々が長く続いた。
──俺は一体……? わからない……でもなんだろう、ここにずっと居たいな。
♢
けれど、ある日を境にそれは一変した。
苦しい……苦しい苦しい……助けて!!
目が覚めるというか、突然訪れたのは窮屈感。
まるで狭い空間が閉じてきたように感じ、全身を押し潰そうとする感覚が日々強くなってきていた。
手は動く、足も動く……こんなとこには居られない……!
必死に、ただ必死だっただけに自分がどう動いたかなんて記憶にもない。
苦しくて痛くて辛くて、ただ死にたくない。その一心で動いた。
そして……訪れる。
……「す……すぅーーーー!!!」
俺はここで思い出した。肺で息をするってことを思い出したんだ。
そして次々に俺の脳内を駆け巡るようにそれはやってきた。
─────それは、記憶。
長い長い眠りから覚めたように、俺は思い出していく。
1度産まれたあの日の事を、母に抱かれ生まれたあの日から、一人ぼっちで部屋に閉じこもる事となったあの日の事までを……
───完全に思い出した。
「ほんっっっ………………ぎゃぁーーーーーー!!!!!」
(お前何してくれてんだ……ねこのこーーーーーー!!!!!)
「んぎゃ?」
(へ? 何これ?)
叫ぶ俺は叫ぶと同時に放心することとなる。
「おめでとう 元気な男の子だよ!」
「……はい、はい……私の息子……」
そりゃ当然のことである。
なんせ俺……どうやら、わけも分からないうちに赤子になってしまったようだ。
「あなたの名前はススム、これからよろしくね」
母らしき女性の胸の中、ぎゅっと抱きしめられる我が身はまぁ自由に動かない。
とりあえず俺は言った。
「ほんぎゃ?」
(えっと……よろしくお願いします?)
♢
木造の和室、天井を見てそれはわかった。
たぶんここは家で、俺は産婆さんに家で取り上げられたってとこかな?
「すぅ……すぅ……」
えぇと、出産お疲れ様、産んでくれてありがとう? と言った方がいいのだろうか? ……ていうか、何だこの気持ち……
動けない俺の隣で眠る、俺の世界じゃ違和感しかない……綺麗に染る真っ赤な紅蓮の髪をした女性、見てるとなんだか安心するというか落ち着くというか、好きとは違うんだが、好きって気持ちよりももっとこう、一緒に居たいって気持ちが溢れてくる。
「んぎゃ」
(なんだろこれ?)
と、つい言葉をこぼした俺。
「……! あっ……ごめんね、お母さん寝ちゃったね、怖かったよね……大丈夫よ、一緒に居るから……良い子良い子」
……どうしよう、絶対俺ってば……この人に迷惑かけたよな今……次寝たら起こさないように静かにしといてあげなきゃな。
俺の身体をとんっとんっとゆっくり叩いてくる。
「……………すぅ……」
手が止まったと思うと女の人は俺の腹に手を置いたまま眠ってしまった。
「………………」
……俺も寝よ。なんだか久しぶりに人の温もりに触れた気がするな。俺は幸せな気分のまま眠りについた。
そして眠る俺の身体から光が発生し、それは爆誕する。
「ねねねねね…………ねっこのこーー!!」
ばーっと両手いっぱいに手を広げ、現れたそれは猫耳としっぽが付いた美少女である。
「……なっなんと!?」
驚いてるのは眠る俺でも新たな母でもない。
出産後の掃除を行う産婆。
まぁ空気を読まないねこのこ、驚きすぎて入れ歯飛び出しそうな産婆をスルー、眠る俺の方をじっと見て一言。
「ちち、ちっこい」
この時俺は悪夢にうなされていた。
巨大な何かがほっぺをぐいーぐいーと押してくる訳の分からん夢。
「つんつん……つんつん、つんつん……つんつん、ちっこい」
どうやら悪夢なんかじゃなく、リアルの事が夢に反映されてただけだったようだな。
「これはたまげたわい、まさかねこのこ族が憑く子を取り上げる日が来るなんてのぅ」
産婆が意味深な言葉を零すがねこのこは興味なし。
「つんつん、つんつん、おっきくなれ」
まぁなる訳はない。どうやらこいつ……俺を異世界に転生させた張本人だと言うのに、これは予想外だったようだ。
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