最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子

文字の大きさ
上 下
35 / 78
双子の冒険者

2-12『東の森ー精密機械』

しおりを挟む

とりあえずこのままみぅをほっとくのは危ない。
「みぅ、教えるからこっちこい」
「うみゅー!」

うおって驚く速さのジャンプで宙に浮く僕が入るコタツの上にみぅはちょこんとのっかった。
(……怒るべきなのか?机に乗るなと……)猫の躾は最初が肝心だと教わった事がある。

まぁ(……許そう)きらっきらした赤い宝石のような瞳で見られた日には、許すしかないよな?

「みぃ、とりあえずあのゴブリン達は任せる、職業スキルのみで倒してみろ」

「……!はい!!」
(あ、みぃも試したかったのね)
みぃはかなーり良い返事と共にシュッと木の上を移動し、慌てて戦闘隊形をとったゴブリンたちの上に移動した。


☆☆☆☆☆


僕はみぅに説明する。

「みぅ、とりあえず説明の前に……前にも聞いたが、身体の中に巡る魔力の流れはなんとなくわかるよな?」

「うみゅ!」
(よかった~)と、とりあえず一安心。

僕には魔力が視える。もしくは前世の記憶がある。そのせいか感覚というのがいまいちないのだが、みぃに聞いて知ったのだが魔力というのは体内の中に流れてる。そういった感覚があるらしい。

魔法を使用する際は、身体の中にある魔力の道を感覚のみで操作して発動させるらしい。
そしてフィジカルスキル、身体能力に魔力を乗せるのも同じ様なものらしく、魔法能力が外へと働きかけるなら、身体能力は内に魔力を働きかける力。

なので結局この魔力の流れる感覚というのが重要ということだ。

「なら、今はどの辺に集まってるかわかるか?」

「ここ!この辺が強い感じする」
(……みぅの感じる感覚を言われてもな~)とは思うものの、まぁどこに流れてるか把握してるので充分合格点だな。

「腕か、ならその魔力を拳に移動はできるのか?」

「うみゅ!ぐーって叩く感じにしたら出来るよ?」
(……それ、もうフィジカルスキル出せてたんじゃね?)

フィジカルスキルの発動方法に言霊は必要ない。
隙の多い詠唱が必要ないから隙がなくかなり強いと思う。とはいえ発動には条件があり、身体の中の魔力を動く事により爆発寸前まで活性化させる必要がある。

(僕には向いてないな~)
つまりフィジカルスキルとは、インドア派の人間には到底扱えないアウトドア派な力である。
(いや……仕事と割り切れば解体屋をしてたし……僕って案外オールマイティだったな)

「ならその拳に力を入れて敵にぶつけた時にイメージしろ、今みぅの感じてる強そうな感じがする魔力ってのは、火、当たる瞬間燃え盛る炎が拳から爆発するイメージだ」

「……炎が拳から……うみゅ!!」
こうしてみぅに僕は説明を終えた。


☆☆☆☆☆

時は遡り、みぃ。
みぅに説明しつつちらちら見てたのだが、僕の言いつけ通りに職業スキルのみで戦っていた。

ゴブリンの数は7体、そして僕が小隊だと言った理由はゴブリンがそれぞれの役割を個々で持ってそうだったからだ。

みぃから見える位置、手前に構える3体は、ボロボロだけど、剣を持つゴブリン2と盾を持つゴブリン1、その後ろに杖を持つゴブリンが2。
残りの2匹はみぃには見えない位置に隠れてるつもりのようで、手には弓、もう1匹はダガーを持ってるな。

(剣士2騎士1魔法使い2弓士1盗賊1ってとこか、狡猾な性格そのままだな、みぃが1匹と見た途端にやにやしてるわ)

多勢に無勢、けれどみぃは物怖じする様子もなく、むしろみぃが喜んでる時に良くするのだが、猫耳がぴくぴくしている


硬直するゴブリン達とみぃ、火蓋を切って落としたのはみぃ。
(相手の出方を見るタイプなのに珍しいな)
あの無表情な顔つきで内心はワクワクしてるんだな。

頭のいいみぃは既に倒すビジョンを浮かべてるのだろう、いつもどおり段階を踏むように行動に出る。

初級魔法はとても便利だ、短い詠唱を敵に悟られないためか小さな声でぶつぶつと唱えと唱えつつみぃはゴブリンの真上に飛ぶ。そして使用する「『ライト』」やはりみぃも気付いていたのか、近接系のゴブリンの目をくらまし、ついでに自身を影で見てるであろう足りない2匹にその魔法をぶつけ、その驚きで落とし姿を捉えた。

近くに居るというのに近接系のゴブリンを完全無視、離れた所で落ちている弓士ゴブリンに向けて、ライトを終えすぐに詠唱していたのだろう「『アイス』」を唱える。

みぃの前から無造作に造られた数個の氷は落ちるゴブリンの頭へ直撃し即死させた。

そしてアイスはもう一度詠唱が行われていた。
(……にしても、頭いいよな)
職業スキルのみを使え。みぃは当然のように職業スキルを水魔法で得た想像の力で違う魔法へと構築。

「『氷よ、無数の刃となって貫けーアイスー』」

本来は氷の玉を敵の頭上に作り上げ落とす、それがアイスという魔法なのだが、一回目のアイスの時に確かめたんだろうな。
想像によって自分の前に作ったアイスが敵目掛けて飛んで行ったのを、そして確信してこんな戦闘中に僕が教えた少しばかりの漢字を使いこなし詠唱を作った。正直みぃのこういうとこは僕も負けてるとしか思えないな。

みぃの想像により姿を変えた『アイス』
みぃの周りにいくつもの尖った氷を作り上げ、生き残ったゴブリン全てに容赦なく襲いかかった。
舞うのは鮮血、ゴブリンの血潮、そしてゴブリンの血にはばい菌が多く含まれ毒に近い効果があるという事をギルドのお姉さんが言っていた為か、既にそれも対応されていた。

「『ウォーター』」
本来ならば水の塊を作り、敵の頭上に落とすだけの魔法だと言うのに、想像によって水で自信を囲い簡易水の障壁を作り、一滴のゴブリンの血に触れることなく戦闘は終了していた。

(みぃ……完璧すぎ……)

水色の髪を靡かせ、ぴょーんと軽い足取りで僕とみぅの元へ戻ってきたみぃ、青い瞳は何を思ってるのやら?自慢することも無く「ご主人様、討伐しました」はしゃぐ様子もなく、ただ報告だけしてきた。
(精密機械……ん~ストレスたまらないのかな、こんな性格……)

とはいえ、、

「みぃねぇね!かっこよかった~~!!」

「えへへ、ありがとうね」
(妹には完全に素が出るんだよな~)

精密機械みたいなみぃも妹の前ではただの小さなお姉ちゃん。こんな姿を見ると少しだけホッとする。

そのうち僕にも子供っぽくして欲しいものだ。 




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...