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双子の冒険者
2-08『カリバーンー街並み』
しおりを挟む人がまるで虫のようだ!!とはまさにこういう事なのだろう。
軍隊アリのように沢山の人々が所狭しと行き交う大通り。
模様は違うが同じ様な作りの建物が何処までもズラっと並び、建物の前にある露店も同じ様にずっと続いている。
食べ歩きが楽しくなる様な、持ち歩きグルメ専門の店や、子供達が集うおもちゃが当たるくじ引きの店、婦人をターゲットにした宝石店、おじさん達が占領してるのは立ち飲みの店だろう、他にも宝くじ、洋服、素材屋、アクセサリー、食材、異世界にしかなさそうな物から、前世でもよく見るような店まで何でもござれの大通りである。(……そりゃ人も多いよな~)みぅもあっちこっち見てキャッキャ言ってる楽しい場所である。
まぁ……(僕には無理だ……)そんな所は、僕には耐えることは出来ず、直ぐに裏の通りへとみぃに言って、みぅの手を引いてもらい移動してきた。
「にゅ~あっちのが色々あったのに~」
みぅは不満そうである。
「みぅ?ご主人様の言ってることだからちゃんと聞かないと駄目だよ?人が沢山居るってことは、人間じゃないねこのこ族のみぃ達には危険かもしれないんだからね」
この素晴らしい説明を見よ!と言いたいところではあるが……
(みぃの口数が珍しく多いな……余っ程人混みが嫌ってことか)
「うみゅ~みぅ……楽しかったの、ごめんなさい」
僕とみぃはたぶん今、心の痛みを共有したと思う。
☆☆☆☆☆
表通りを避けて裏通りに来たとはいえ、結局この辺もそれなりに人はウロウロしているみたいだ。
(大きな街だからか?どこにでも店があるんだな~)
前世の世界にはなかった。
武器屋、防具屋、奴隷屋、凄く気にはなるが今向かっているのは冒険者ギルド。理由は至ってシンプル。(お金が無いんだよな~)世の中金とはまさにそうだと思う。
2人に手助けするつもりは無いとは言っても、稼ぎ方すら知らない2人に街で頑張って生きろよーなんてのは正直ありえないからな、異世界あるある冒険者ギルドなら仕事もあるだろうと、道だけを示して向かわせているのだ。
西の入口に入ってから数十分ぐらい歩いた場所、何の問題もなくたどり着く。
(うん、冒険者ギルドだな)
ゲームばかりしてる奴なら、正直これをギルドだと理解するのは一瞬だと思う。
元解体屋の僕は建物を見るとついつい作りを見てしまうのだが、この街の建物は殆どがRC構造(鉄筋とコンクリートで建てられた建物)の建物ばかりである。
高さや大きさ、規定があるのだろう。
大通りの建物は全て同じ高さで同じ幅、たぶん土地の広さも同じに作られてると思う。
なのに、大通りにあるこの冒険者ギルド、そんな中で唯一木造建築、しかもかなーり大きい。
正面玄関には広いテラスが設けられ、そこには沢山の筋肉ゴリラ達がきっとビールだろう木製のジョッキを持ち上げぐいぐい飲みながらわいわい騒いでいる。
テラスから吹き抜けの店内、大きなカウンターが見える、茶髪の受付のお姉さんがここからでも見えるが、胸の部分がやたらとボリューミーである。(やばい、わくわくしてきた)下心なんてありません!!
そしてまぁ、何故ここが冒険者ギルドだと分かるのか?まぁゲームばかりしてる奴なら1目とは言ったが、少しは心配もあるだろう。けど大丈夫。
4階建てはありそうな高い建物、その入口の高ーい位置に、すっごい大きく書かれている。
『冒険者ギルド、アーク大陸ーカリバーン支部』
なのでまぁ誰でもわかると思う。
☆☆☆☆☆
店に入る前にみぅとみぃとお話中。
「やっぱふゆふゆ飛んでる赤ん坊って居ないよな……」
「はい、みぃも今のところ確認してないです」
「みぅも見てないよ!!」
こんな大きな街なのに、全く見当たらないってことは珍しい、または僕が特殊って事だと断定してもいいだろう。
(対策考えないとな~)いつまでもみぃに、言葉の通りおんぶにだっこはダメだと思うしな。
とりあえずそれは先の事、今は冒険者ギルドについて。
「そういやみぅってなんか貰ってなかったか?」
「にゅ?……あっ!これ、貰った!!」
「……うっうん」
きっと完全にみぅはテンションが上がりすぎて忘れてたんだろな。左手でずっと持ってたこれ、まぁ紙切れなんだがぐしゃっと握りしめられてくしゃくしゃになってるわ。
かさかさと音を立ててとりあえず折り畳まれたそれを開く。
少し読みにくいが、まぁ読めないことは無い。
「んーと」
僕は読み書きのできないみぅに聞こえるように読みながら説明する。(みぃは読み書きを教えたら一日でマスターしました)
☆☆☆☆☆
「なんか色々書いてたけど、つまりは紹介状だなこれ」
読み終えると納得した様子のみぃと、まぁ分かってないみぅだな。
内容は簡略化すると、信頼出来る方達ですので、身分証の発行をお願いします。って事だと思う。
みぃに受付出来るか?と尋ねたところ「頑張って見たいです」との事なので、本人がやる気ありそうだしぶっつけ本番だがとりあえず店内に入っていった。
冒険者ギルドには様々な人がいる。
たぶん外で飲んでた人達は冒険者、店内の端の方で飲んでるのも冒険者、けどギルドカウンター付近に座ってる人は冒険者という面構えでも体格でもなく、たぶん依頼者だと思う。
そう思う理由としては顔つき、深刻な悩みを抱えてそうな表情の人が多いからだな、それに子供から年寄りまで居て、服装も冒険者というには防御力も俊敏性も無さそうな普通の服だからだ。
(あの辺も冒険者か……あークエストボードって奴だな)
左右対称の壁にはじっと壁に貼ってあるたくさんの紙を見る冒険者達がいる。
(ゲームしてると1度は見たいなって思うんだよな~)
そしてみぃに抱かれたままギルドカウンターへ到着する。
「冒険者ギルド、アーク大陸ーカリバーン支部へようこそ!」
(へ~まさにゲーム通りのセリフ)
ここからみぃの初めてのおつかいならぬ受付が始まる。
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