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第五章 四種族対立編

融合

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 ヤトノカミがいた山だ、獣はいるが魔物は近づかない。

「ヤトノカミの肉を持ってきたんですけど、食べてみます? ユーゴ、毒は無いよね?」
「あぁ、一応エミリーに解毒かけてもらおう」
 
 焼石でステーキにして既製品のステーキソースで頂く。

「なにこれ! 美味しい!」
「確かに美味いな。SSSクラスの魔物の肉食べたのなんてオレらくらいだろうな……」

 やはり魔力の質が肉質に影響するのだろう、今まで食べた肉の中でもトップクラスだった。万が一毒にあたってもエミリーがいる。


 食後のティータイム、皆に紅茶が行き渡った。魔物はいない、気にせずゆっくりできそうだ。
 紅茶をすすりながらレイが話し始めた。
 
「ヤトノカミと呼んでいたか、あれを倒すとはな。ただ、ユーゴの戦闘を見て思った、惜しいな。仙族と龍族の合わせ技だろう? 名はあるのか?」
「自然エネルギーを扱う仙術と気力を練り上げて扱う練気術だ。惜しいとは?」

「その仙術と練気術を合わせるところで止まっているのが惜しい。その二つを融合させてみようとは思わなかったか?」

 ――仙術と練気術を融合……?
 
 そんな事が可能なのかと質問する。

其方そなたらは自然の気と、その練気なるものを混ぜているが、異なる種族の技術だという先入観が邪魔をしていると見る。自然の気と自身の気を混ぜ合わせたのちに変質させてみると良い」

 なるほど、自然エネルギーと気力を混ぜてから、それを練気術で練るという事だ。確かにそうなると更に一体化しそうではある。

 皆腑に落ちた様だ、それぞれが立ち上がり実践する。増幅エネルギーと気力を混ぜ合わせ、それを変質させる。

「おぉ……これは練気術とは全く別物になったな……」

 皆がその力を武器に纏い、感嘆の声を上げている。

「自然の気と自身の気の融合、我々はこれを『聯気れんき』と呼んでいる。練気術とやらの練気とは似て非なる物だ」

 自然と体内、二種類の気がつらなって融合した気力。
 聯気れんき、これは仙龍の戦闘法の最終形態かもしれない。
 
 そのままの自然エネルギーと気力を混ぜてから変質してみよう。

「あれ、最初と変わらない……これもしかして、自身の修練の成果がそのまま聯気れんきの精度に繋がってるんじゃないですか?」

「……どういう事だ?」
「そのままの自然エネルギーと気力を混ぜて練るのと、増幅エネルギーと気力を混ぜてから練るのとで出来上がる聯気れんきが全く同じなんです。空を駆ける程に精度を高めたオレ達の気力がそのまま聯気の精度に繋がってる」

「なるほどな、わざわざ自然エネルギーを増幅してから混ぜる必要は無いということか、仙術や練気術の精度がそのまま聯気れんきの精度に繋がると。面白いな」

 聯気れんきは人族でもすぐに習得できる物だ。ここに居る皆も更に修練を積むことで精度を上げることができそうだ。

「先程ユーゴが言った、空を駆けるとは?」

 レイの質問に対し実践して見せる。

「練気による空中歩行ですね」 
「ほう、それは変質気力の精度に一役買うだろうな。では、純粋な気力のみで同じ事をしてみてはどうか?」

 レイの的確なアドバイスに皆が真剣に耳を傾けている。

「なるほどの……気力その物の質を更に上げよという事か、結果的に聯気の精度の向上にも繋がる」

 言うのは簡単だが、かなり難易度が高い。帰ってやってみよう。


「そして最後に」とレイが皆に話しかける。

「感のいい者なら気が付いているかも知れんが、自然の気と自身の気、更に属性魔力を混ぜたのちに変質させる。それを『魔聯気まれんき』と呼んでいる」

 ……魔聯気……仙術と遁術を変えそうだな。

 気力に自然の風エネルギーと風魔力を混ぜこみ、変質させる。もうこれは仙術でも遁術でも無い、しかしユーゴは龍族の戦士だ。

『風遁 風刃』

 前方の岩に向け放った風遁の基礎術は、一瞬で岩を粉々にして消えた。

「凄いな……今まで通り込める魔力量で威力が変わるな」
「うん、これは守護術も治療術、強化術も全てが変わるね」

 勉強会は終わりだ、持ち帰って皆に水平展開し、各自修練だ。純粋な気力で空を駆ける事が出来れば更に強くなれる。

 鬼国を後にし、南東に向け飛び立った。
 

 
 聯気れんきは更に移動速度を速くした。行きより一日早く四日で王都に到着した。

 今回の野営ではサウナは出していない。人数が多過ぎたからだ。オーベルジュ城に行く前にサウナに入りたい。皆賛成した。

 シャワーで垢を落とし、いざサウナ室へ。
 人族の世では普通にあるサウナだが、仙族の二人は意外にも初めてだったらしい。里長もシュエンも存在は知っていたが入ったことはなかった様だ。

「暑いな……何が良いのだこれは……」
「この後の水風呂がご褒美ですよ」

 ロウリュで更に湿度を増す。
 皆暑さで苦悶の表情だ、何かの修行のようだ。

 すぐさま水風呂へダイブ。
 皆が恍惚の表情を浮かべる。

「ほぉ……良いなこれは……」
「この後の休憩で完璧にととのいますよ」
「整う……? 何がだ?」

 皆でリクライニングチェアに移動し休憩する。

「これは……里にも作らねば」
「薬草蒸風呂とは全く別物だな……」

 皆がサウナの虜になった。
 勿論ソフィアもジュリアとエミリーに無理矢理連れて行かれている。


 オーベルジュ城に帰って部屋に荷物を置き、王達に報告だ。連絡を受けシャルロット女王も来ている。

「おかえりみんな! 夜は飲むでしょ? ディナー準備するね!」
「今回もシャルロットに任せるかな。んじゃいつも通りこっちの部屋ヤーへーでべシャロウよ」

 昼食時だ、軽食をつまみながら王二人にヤトノカミ討伐と、聯気れんきについて報告し方法を伝えた。

「ほぉ……これはこれは、人族ゾクジンの戦闘が根底テイコンから変わるね」
「うん、今までの修練が無駄になる事も無い、全てが聯気の精度に繋がるね。早速近いうちに軍事演習するょ!」

 
 ベルフォール城でのディナーまで少し休もう、流石に疲れた。
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