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第五章 四種族対立編

原初の龍族

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【リーベン島 里長の屋敷】

 リーベン島に到着して数日、明日王都に向けて立つ事になった。目的は神龍レイの思念を見に行く事、翠の宝玉はまだユーゴが持っている。

 里長の屋敷の広間で夕食を頂いている。仙王と里長以下いつものメンバーと、原初の龍族が二人。

「まさかなぁ……天界なんて世界があるたぁ思わなんだな……明日わしらの始祖に会いに行くんじゃって?」

 この人は『ナンダ・レオン』
 この国の薬調合の専門家だ。メイリンと協力して様々な薬を調合していたが、里長の前の妻、リンファの病気を治すには至らなかった。
 メイファと共にその薬を開発した薬屋街のおさだった。今は隠居しているらしい。

「ほんにねぇ、しかしクリカラあんた元気ねぇ……あたしゃもうすぐお迎えが来そうだわ。最期に仙王と酒を飲むとはねぇ、何があるか分からんもんよ」

 彼女は『マナシ・ツムギ』
 この人も大陸からの産業である大和大蚕やまとおおかいこを島に持ち込み今に伝えている。呉服屋街のおさだった様だが、この人も隠居してる。ミオンの曾祖母らしい。

 二人とも元は龍族屈指の戦士だったらしいが、ここに移住したのを機に武術を捨て仕事に全てを費やしてきた人達だ。

わしもいい加減隠居したいが……シャオウよ、次の里長の話は考えてくれておるか?」
「なんべんも言うけどよ……堪えてつかーさいや……」
「お主の父『シャガラ・リー』は儂の右腕として動いておった。そして鍛冶師として刀を作り上げ、リンドウら弟子達にその技術を叩き込んだこの国の功労者である。その息子のお主こそ、ここの長に相応しいと思うがの」

 シャオウの父は鍛冶師だったらしい。
 しかも、その第一人者だったようだ。

「お主の刀とヤンガスの刀はシャガラが打った特級品であったな」
「あぁ、あの幅広の刀と呼んでも良いのか分からん代物か……シャガラの奴が振り回しよったな。よぉあがーなもん使ぉとるのぉ、ヤンガスや」
 
「あれがあったから俺ぁ盾士になったんですよ。爺さんが扱ってるところを見た事もねぇけど、使ってみたら盾と脇差よりしっくり来たんだよな」

 ――あの幅広の両刃刀、ヤンさんが半分遊びで打ったのかなと思ってたな……。
 
 刀鍛冶の始祖の孫がヤンガスという事だ。
 天才というだけではなく、血が才能を呼び起こす事もあるのかもしれない。

「はぁ……儂がまだ里長をする他ないのかの……」
「まぁ、諦めんしゃい」
「ここで言っておこう、儂が死んだら次の里長はシャオウだ」
「おいおい! 縁起でもねぇこと言いんさんな!」

「なぁティモシー、我も隠居したい」
「無理だ、諦めろ」

 ――2000年以上王として君臨してるんだもんな……大変そうだ。オレは絶対したくない……。

「皆病気や寿命で死んでしまったが、一番多かったのは戦死である……死なぬ為には戦闘力を上げねばならん、神龍とやらが何か思念で残しておれば良いがな」
「ゼウスは天界への恨みの話だけであった、望みは薄いな」

 仙龍の古参達の宴会はお開きになった。
 明日の集合は早朝に屋敷の門前だ、日没までにはレトルコメルスに着きたい。


 ◇◇◇


「良し皆集まったな、増幅エネルギーで一気に飛ぶ故、日没前には着くであろう。握飯はユーゴにまとめて渡してある故、昼食は正午にとる」

 仙族二人に里長、両親とにユーゴ達四人。早めの朝食を済ませ予定通り皆が集合した。

 
 
 日没前にレトルコメルスに到着し一泊後、ゆっくり朝食を食べて王都へ向けて出発。夕方前にはウェザブール王都に到着した。本当に二日で着いた。移動速度が段違いだ。
 
 レオナード王の玉座へ行くと、すぐにシャルロット女王も来た。

「おかえりラファちゃん! ティモちゃんがお付きならいっぱい遊んできたね?」
「いや……遊んでなど無いが……?」
「いやいや、いいんだょ、たまには遊んでくれば。ずっと気を張ってたらしんどいでしょ?」

 シャルロット女王が仙王を労っている。
 何故か仙王の顔は強ばっている。

 ――あ、これ遊んできなさいって言われて逆に怖くなって行けないパターンのやつだ……。

「ラファさん、ティモさん、外に飲みに行かないか?」
「王が気軽に街に飲みに行くなんて、良いのかレオナード?」
「ん? 結構行くけどね。平服フクヘイで行くし、VIPルームに行ったりするから意外とバレないよ」
「そうか、では龍王も行かないか?」
「む、儂も良いのか? では行こうかの」
「んじゃ、シャワー浴びて門前マエモン集合ゴーシューね」

 ――この世界のトップクラスのお偉いさん四人が街に飲みに行った……どんな話するんだろ。

「んじゃ、ウチらはベルフォールの城で食べる? コース料理は堅苦しいでしょ? 大皿で好きな物食べてもらうようにするょ」
「良いんですか? お邪魔します!」

 二人に怒られると言うのは仙王の取り越し苦労なのかもしれない。たまに怒られることはあるだろうが。

 ――あ、怒られ過ぎて怖くなっちゃってるだけなのかな。いや、あの人王だぞ……?

 とにかく、今日は楽しんできて欲しいものだ。

 各自オーベルジュ城の客室に案内され、シャワーで汗を流した。

「あ、リナさんただいま」
「あっ、ユーゴ様! お帰りなさいませ。少し滞在なさるのですか?」
「うん、数日お世話になるよ」
「そうですか、何なりと申し付けくださいませ」

 リナはいつもの笑顔で一礼して仕事に戻った。
 
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