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第五章 四種族対立編
ファーヴニル討伐
しおりを挟む皆は普段と変わらず朝食を食べた。いつも通り談笑しながら食後の紅茶を飲んでいる。
ルシフェルの朝食は、パンとスクランブルエッグとハッシュポテトを数枚だ。どれだけポテトが好きなのだろうか。
「皆、緊張はある?」
「緊張? する必要ないだろ。ボクが完璧に守るからね」
「いい自信ね、魔法を放つ魔物ならワタシが吸収するわね」
ホテルを追加予約し、荷物はそのまま置いていく。ファーヴニル山には昼前には着くだろう、昼食を準備した。
皆無言で飛び続け、予定通り昼前には到着した。山の麓の時点で途轍もない魔力を感じる、でも禍々しさはない。
「シュエンちゃんは、リーベン島の魔物は禍々しい魔力だったって言ってたわね。封印されてたのが関係してるのかしら」
「怒りとかもあるのかもしれないですわね……」
「よし、テメェら、サクッと倒して宴会しようじゃねーか!」
「身体強化は大丈夫? 行くわよ!」
目を瞑っていても何処にいるかわかる程の魔力の方へ飛ぶ。
いた、間違いなくあれがファーヴニルだ。
四足歩行の赤いトカゲにドラゴンの様な羽が生えている。体長はマモン二人分くらいだろうか。
いきなり襲ってくる事はない、向こうもかなり警戒している。
「よし、皆ボクの後ろにね」
アレクサンドがアズガルシスの盾を構え、ファーヴニルに対峙する。
『守護術 堅固な城壁』
ドッシリと構えたアレクサンドを前に、ファーヴニルは動かない、相当慎重な魔物だ。四足で地面に深く伏せたままだ。
未知の魔物に想定外ということは無いが……ファーヴニルは突然、瞬間移動のような速さでアレクサンドに襲いかかった。
「グァッ!!」
アレクサンドは守護術ごと吹き飛ばされ、パーティーは突如危険に晒された。
「皆! 防御よ!」
言い終わらないうちに、それぞれが守護術や闘気を纏った。
『仙術 途絶!』
マモンとサランの途絶は、素早い動きでいとも簡単に躱され、一瞬でマモンの眼前にファーヴニルが迫る。が、アレクサンドがそれを張り直した守護術で防いだ。
一瞬の攻防に皆が言葉を失っている。
「これは驚いた……コイツ相当だね……」
「助かったわ……えぇ……速すぎるわね……」
「すまない、ボクが突き飛ばされるとはね……気合い入れるよ」
アレクサンドの顔が変わった。
ファーヴニルの敵意を一身に受けている。
「サラン! アレクサンドのサポートに回って!」
「分かりましたわ!」
「ルシフェル! テン! とにかく攻撃するわよ!」
「おう!」
瞬間移動レベルの速さから繰り出される体当たりは、単純だがとてつもない威力だ。
アレクサンドはその動きに合わせて押し返し、地に足をつけてガードしている。それにはサランの効果の高い強化術も一役買っている。
『風魔術 風魔召喚!』
ルシフェルが放つ強力な風魔術がファーヴニルを襲う、皆がヒットしたと思った。しかし……ヤツは消えた。
「どこいった!?」
「おい! 上だ!」
上を向いた瞬間、災害級の火魔法が降り注いだ。
『魔力吸収!』
間に合った、マモンは全ての魔法を吸収した。
『解放!』
その災害級の魔法に更に自然エネルギーを付与し、更に圧縮して空にいるファーヴニルに向け解放した。
次の瞬間、ファーヴニルは地面に戻りアレクサンドに襲いかかった。
「なっ……なんなんだコイツの速さは!」
「クッソ……魔眼さえあればこんなトカゲ……」
――本当に瞬間移動してるのかしら……速すぎる……。
サランのサポートを受けながらアレクサンドは必死の防御だ。マモン達三人も攻撃を繰り出すが、ようやく掠る程度で致命傷は与えられない。
最初は逸れていたファーヴニルの敵意は、今は完全にアレクサンドに向いている。
「もうコイツの敵意はボクから逸れることはないよ! 存分に攻撃してくれ!」
「分かったわ!」
ただ、速すぎる。
――どうすれば当たる……。
「ルシフェルはヤツの上から、テンはワタシの反対側に行って! ワタシが攻撃するから避けたところに斬りかかって!」
「分かった!」
強化術を掛け直して、錬気で爆発的に移動する。デュランダルで渾身の一突きをお見舞いしてやる。
「鬱陶しいわね! いい加減止まりなさい!」
『剣技 刺突剣!』
マモンの渾身の一突きはトカゲの左肩辺りを突き刺した。
――え……? さっきファーヴニルの動きが止まった……?
「シャァァァァ――ッ!!」
ファーヴニルはパニックに陥った。
「今よ!!」
言われるまでもなく、ルシフェルとテンは同時に斬りかかった。テンは右脚、ルシフェルは右肩から腕ごと斬り落とした。
マモンもこの好機を見逃さない。
『剣技 光創の一撃!』
肩辺りに刺さったデュランダルを引き抜き、真横から両手で振り降ろし、胴を真っ二つにした。
「やったわね……」
「あぁ……強かったな……」
皆でへたり込んだ。確実に最強の相手だった。
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