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第五章 四種族対立編

三人の連携

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 陽の光とベーコンが焼けるいい匂いで目を覚ました。

「おはようユーゴ君!」
「あぁ、よく寝た……おはよう」
「ベーコンとスクランブルエッグ好きだったよね? トーストも焼いたから食べてね」
「うん、大好物だ、ありがとう」

 トーストの上に全部乗せでかぶりつくのが好きだ。美味い。

「ユーゴ君、口にスクランブルエッグ付いてるよ」

 そう言ってエマは指で取ってくれた。

 ――ん~可愛い……幸せ。

「なぁエマ、ずっと言いたかった事言っていい?」
「え、何……? 怖いんだけど……」
「オレの彼女になってください!」
「えー、私ずーっとそのつもりだったんだけど!」
「オレもそうだ。でも、はっきりと伝えた事なかったからな……どう?」
「もちろんです。お願いします」

 エマを抱き寄せ軽くキスをした、オレの口に付いていたケチャップがエマのほっぺに付いた。

「フフッ、これで正式にユーゴ君の彼女だね」
「あぁ、いい男が店に来たって浮気するなよ?」
「こっちのセリフ!」


 朝食を食べ終え、エマは軽くメイクをする。

「ほっぺにケチャップ付いてたんだけど! 言ってよ!」
「気付いたか、そのまま外出るかなと思って楽しみにしてたんだけどな」
「女の子は依頼受けるにもお洒落するの!」

 エマはべーッと舌を出した。

 ――ん~可愛い……。


 外に出るとちょうどロンが歩いていた。

「あ、ロン君! おはよう!」
「あ、ユーゴさん、エマさん、おはよう!」
「おはよう、しっかり起きれたな。朝には強くなったか?」
「うん、たまに寝過ごすけどね……」
「まぁ少し成長だな、頑張れ」


 冒険者ギルドの前に皆が待っている。

「おはよう、待たせた?」
「いや、さっき来たところだ。早速行くか!」
「みんな練気の扱いがだいぶ上手くなったし、属性もかなり理解した。浮遊術出来ると思うんだよな、どうする?」
「じゃあ、少し練習しようか、まだ朝だしね」

 いつもは弁当を買っていくが、どうせなら。

「昼は魔物を調理して食べないか? スレイプニルも美味いし。ウサギは食べた事ないけど昨日わりと高く売れたな」
「いいね、アルミラージの肉は高級食材だよ」
「賛成! 食べてみたい!」

 昼食は決まった。
 ユーゴは大量の調味料を空間に溜め込んでいる、トーマスと一緒に腕を振るおう。

 
 門を出て少し走り、森に入った。
 開けた場所で足を止める。

「さて、三人にはこれから自然エネルギーを感じてもらう。まずは浮遊術だな、先生はジュリアだ」

 ジュリアが三人の前に進み少し浮いて見せた。

「浮遊術を基礎に、自然エネルギーを扱う術を総称して仙術と言う。始祖四種族の仙族の術だ。簡単に言えば呼吸で自然エネルギーを体に取込み、気力に混ぜて扱う。お前らは昨日各属性を理解したよな? 今日はまず、一番身近な風のエネルギーを取り込んでもらう。深呼吸してみろ」

 言われて三人娘は両手を広げて深呼吸した。

「集中してみろ、肺の中に風魔力に似たものを感じないか?」

 三人は深呼吸を繰り返している。

「あっ、これか! うん、分かります」

 やはりニナが一番早かった。昨日は基本の遁術を放てる程に成長したようだ。

 エマとジェニーは深呼吸を一度やめ、軽く風の生活魔法を放って風の魔力を再認識している。いい方法だ。
 再度深呼吸を繰り返し、ニナに少し遅れて理解したようだ。

「あぁ! これか!」
「うん、私も分かった!」

「よし、鼻から吸って口から吐く。深呼吸を繰り返し、それを身体に取り込む。それを練気に混ぜて浮力にしてみろ」

 そして恒例の肉弾打ち上げ花火が盛大に打ち上がった。
 三人は空中でバタバタと大パニック。ユーゴとトーマス、ロンがそれぞれ三人を受け止めた。

「キャハハッ! やっぱりこうなるんだな!」
「はぁ……ビックリした……」
「混ぜる練気の量を間違えるとこうなる。最初は少しずつからで、まずは浮いてみよう」

 まずはニナが少し浮きあがり、続いてエマ、ジェニーも浮き上がった。

「浮いたー!」
「理解が早いな、そこまで出来れば後は早い。移動しながら慣れてくれ」

 最初はフワフワノロノロと進んでいた三人は、すぐにスピードに乗った。

「まさか私が空を飛べるようになるとはね……」
「ホント、強くなるって楽しいね!」
「二人とも、私を誘ってくれてありがとうございます!」

 ――店の女の子全員強くしそうだな……武闘派クラブでも作りたいのだろうか……。


 依頼のロックリザード棲息地付近まで来た。
 練気の浮遊術だ、ユーゴ達の本気にはまだまだ遠いが、移動速度が跳ね上がった。
 昼食にはまだまだ早い。

「よし、ササッとロックリザード倒してランクアップしようか!」

 周りを見回しながら少し歩く。
 いた、ロックリザードだ。

「あんなに大っきいの……?」
「あぁ、かなり大型だな、オレが見た中でもトップクラスだ。でも、ただそれだけだよ。あとは硬いだけだ」

 
 盾役のジェニーを先頭に、エマ、ニナと続く。エマは刀を抜いた瞬間から練気を込め続けている。

「おい……エマ、練気と風エネルギー纏ってるな……」
「ほんとだ……僕達もした事ないよね……」
「おいおい、あれ『仙神剣術』だぞ?」

 ――仙神剣術……? 後でゆっくり聞こう……。
 
 ニナは自分を含め全員に強化術を施した。各自強化術を覚えたが、ニナの術が一番効果が高い。

 ロックリザードが気付いた、皆準備は万端だ。

『守護術 堅牢!』

 ジェニーが守りを固め、ロックリザードの敵意を一身に集めた。防具を媒介にして上手く張れている、かなり良くなった。トーマス直伝の守護術だ。

『治療術 継続再生』

 ニナの強化術と自身の守護術で、全ての攻撃を難なく受け止めている。そこにニナの継続再生、全く危なげない鉄壁の盾だ。

「継続再生まで教えたのか」
「うん、ニナかなりセンスいいよ。属性魔力の扱いが上手いんだ」
 
 エマが動いた。
 迅速でかなりスピードアップしてはいるが、ロックリザードがエマの方に敵意を向けた。クレバーな個体だ。

『風遁 風刃ふうじん!』

 ニナがジェニーの後ろから風遁を放った。
 ロックリザードの首下辺りにヒットし、奴の敵意は再びジェニーに向かった。上手い、いいサポートだ。

『剣技 斬罪ざんざい!』

 その隙に後ろからエマの剣技だ。
 完全に意識の外からの攻撃、ロックリザードの首が飛び、巨体が地に沈んだ。

「やったー!」
「Aランクだよ私達!」

「いやぁ、見事だな。Sランクもすぐだな」

 ゼロから一年足らずで良くここまで成長出来たものだ。かなり修練を積んだのだろう。
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