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第五章 四種族対立編

始祖四種族の真実

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 沈黙の中、シュエンが静かに口を開いた。

「マモンがあの魔神に興味を持っていたのは分かっていました。俺があれを復活させるなんて以ての外だと釘を刺し、ソフィアの救出の為に宝玉の力を試してみようと言う話になりました。俺以外の三人、マモン、アレクサンド、サランは最初からあれの復活に向けて動いていたと言う事ですね……」

「さっきも言ったが、君は魔力障害を患いながらもあの魔神を抑えてくれた。気に病むことはない」

 シュエンとソフィアが出会っていなければ、あの魔神がこの世界で何をしていたか分からない。今までの平和を守ってきたのは間違いなく二人だ。

「ソフィア、儂からもう一つ聞いて良いか?」
「はい、何でしょう?」
「天界なる場所には神族と悪魔族がおると言うたな? その二つの種族は、儂ら四種族の祖では無いのか?」

 里長にそう問われたソフィアは少し黙った。
 考えをまとめたのか、少し間を置いて話し始めた。

「……魔神ルシフェルがこの世界に降りてしまったのは、神族の責任です。もう私は向こうに帰る事は無い、全てお伝えします。ただ、私は当時幼かった。伝えられるのは神族に伝わる神話のみです。少し龍王様の考えとは異なる内容です」
「十分だ、聞かねば儂らが何者なのかなど死ぬまで分からんかった事だ」

 ソフィアは神族に伝わる神話を語り始めた。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
 
 大昔『仙神せんしんゼウス』と『魔将ましょうサタン』が天界を二分する争いをしていた。
 ゼウスには『神龍しんりゅう』サタンには『悪鬼あっき』と言う従者がいた。
 
 彼等は従者と共にそれぞれの手下となる種族『神族』と『悪魔族』を創り上げた。
 
 神族にはゼウスの眼の力の一部と、神龍の気力量と俊敏性しゅんびんせいが。悪魔族にはサタンの特異能力と魔力量、悪鬼の頑強な肉体がそれぞれに継承された。

 天界の争いは神族と悪魔族の争いに代わり、二種族は遂にゼウスとサタンを超える勢力となった。

 ゼウスと神龍、サタンと悪鬼はそれぞれ二種族に追いやられ、最期の力で『下界』を創造し、それぞれが新たな種族と封玉を創り出した。

 ゼウスの仙族。
 神龍の龍族。
 サタンの魔族。
 悪鬼の鬼族。

 それぞれが封玉を持ち、互いに争い始めた。その四種族の争いが終わり封玉が揃った時、ゼウスとサタンの復讐が始まる。

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 
「これが神族に伝わる神話です。この話が事実である事は天界の皆は分かっている。天界ではこちらを『下界』と呼んでいます。天界の二種族には下界に行こうと思う者はいません、方法も分からないのです。なぜ私とルシフェルがこの世界に来れたのかが分からないけど……『下界の種族に会ったら正体を明かすな、復讐されるぞ』小さい頃からずっと言われてきたけど、この世界を旅して分かった。天界の事なんて誰も知らない」

 当然誰一人知らなかった事実だ。
 今日一番の沈黙が流れ続ける。

「やはり我々は創られた種族であった……」
「うむ……一切の記憶もなく500人程でこの世界に放り出された。ご丁寧に住居まで用意されてな。儂らが宝玉を……いや、封玉を求めたのはそういう事か。深層心理に組み込まれていたのやも知れんな」
 
 この世界と始祖四種族の成り立ちを知り、仙王と里長の中で全てが繋がったようだ。

「我々は天界に復讐する為に創り出された。しかし……そう言われてもなぁ……」
「うむ、それよりもまずは魔族と鬼族であろう。奴らもこの話は聞かされるであろうがの」

 この話を聞いたマモンやアレクサンドはどう思うのか。暇が嫌いな奴等だ、興味を持つのは間違いないだろう。

 皆が押し黙る中、シュエンが口を開いた。
 
「あと聞きたかったのは、ミックス・ブラッドの事だ。鬼人シュテンは魔力過多で自我崩壊した、魔人マモンは特異能力で魔力を吸収、放出できる為に、魔力過多による自我崩壊を免れた。ユーゴは今後大丈夫なのか? まぁ、俺が魔力吸収するが」

 ソフィアは一つ頷き、返答した。

「エミリーちゃんは仙族と人族の間に生まれたけど、人族は仙族の因子を持ってる。だから同系種族の混血児なの、だから魔力の異常な増大はない。ユーゴも同じ、龍族は神族の因子を持ってる。だから魔力の異常増大は無いわ」
 
「……なるほどな。俺たちは同系種族だから子が出来る可能性が高かったのか」
「えぇ、出来ないとも限らないって言ったわよね?」


 仙王は目を瞑って少し考えている。誰も発言しない。そしてゆっくりと目を開いた。

「よく分かった。君がこちらにいなければ何一つ対策を練る事が出来なかっただろう。ソフィア、礼を言う。良し、五年は奴らは動かん。これにて一時的に軍を解体する、しかし王都の厳戒態勢は崩さぬように」

 こうして軍議は終了し、砦に常駐の軍を残して皆が王都への帰路に着いた。
 
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