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第四章 新魔王誕生編

鬼人誕生 3

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 オーステンは顔を上げ、頭領であるスズカに向かって話し始めた。

「オレはスズカを初めて見て心を奪われた! こんなに強くて美しい女がいるのかと戦闘どころじゃ無かった! オレがここに来たのはスズカに近づくためだ!」

「……え?」

 あまりの事に皆があんぐりと口を開けて言葉も出ない。
 当然スズカもだ。

「スズカ! 何度もここに来ておまえと話して、更に想いは深まった。オレはおまえを愛している!」

「……えっ……ちょっと……待って」

 スズカは顔を赤らめてどぎまぎしている。
 サンキチの知る限り、超がつく男勝りのスズカが男から言い寄られたことは無い。

 オーステンはスズカに近づき手を取った。

「スズカ! もうオレは国には帰らない! オレと一緒になってくれ!」
「はっ……はいっ……」

 圧倒されたスズカは、頬を赤らめてそう返事をした。

「ぃよっしゃぁ――!!」
 
『ゥオォォ――!』
「おめでとうスズカ! オーステン!」

 皆が口々に祝福の言葉を二人にかけた。
 もうすでにオーステンは彼等の仲間だ。


 ◆◆◆


 スズカとオーステンが結ばれた事で少し状況が変わった。頭領の旦那になる男の同族を襲う事に、皆が抵抗を感じ始めたからだ。

「おいおい、オレはスズカの旦那だぞ。おまえらのしてる事も分かって求婚したんだ。山賊はおまえらの生業だろ」
「ウチらは本来、人族の町で生活がしたかったんだ。それを王都の門番に出鼻をくじかれて、今の生活をしてたんだ。この大所帯だ、もう今さら町で生活する気はない。なぁオーステン、ウチらの国に来ないか?」
「行っても良いのか……?」
「あぁ、お前が居ても問題ない所がある。そこで皆で生活しよう」
「分かった、オレはどこでもついて行く」

 
 次の日から鬼国に向けて移動を始めた。
 もちろんソウジャに行く訳ではない、ベンケイの所に向かう。

 スズカ達の移動は、闘気を脚に纏い身体能力を高めて移動する。人族も補助術と言う方法で移動するが、彼ら程のスピードは出ない。

 一日目の野営。
 
「鬼族は速いな……合わせてもらって申し訳ない……」
「いや、分かっていた事だ。けど、それだけ速度が出ていれば問題ない。二ヶ月も見れば着くだろう」

 オーステンは他種族なりの悩みがあるようだった。スズカに対して色々考える事もあるようだ。

「……なぁスズカ、他種族間では子供は出来ないみたいだ。オレは問題ないが、おまえはどう思ってる?」
「ウチは誰かと一緒になれるとも思ってなかったからな、子供なんて考えたことも無かったな。正直どうでもいいよ」
 
「……そうか、それを聞いて安心したよ。それと、これが一番の問題だ。おまえは長寿族だ、千年以上生きるんだろ? オレは生きても百年だ」
「そうなのか。仕方ないだろうそれは、悲しい事だけどな」
「でもな、一つ方法があるんだ。オレと一緒に来た眼が緑色の騎士がいたのを覚えてるか?」
「あぁ、お前らの隊の頭領だろ?」
「あの人は昇化した人族だ。昇化すれば寿命が伸びるんだ。オレは今以上に鍛錬を積んで必ず昇化する。そしていつまでもおまえと幸せに暮らしたい」

 スズカは、オーステンのこの正直で真っ直ぐな所に惹かれている。頬を染めて頷いている。


 その後もオーステンは必死についてきた。
 鬼族以外の種族では闘気は扱えない。教える事は出来ない。かと言って彼等は人族の戦闘法を知らない、指導することも出来ない。
 オーステンは剣を使うが、薙刀に興味を持った。

「今から行く所には薙刀術の創始者でオラァ達の師匠がいるんだ。お前ぇも指導してもらうといい」


 行きと違い、迷う事が無かった事で一月半で着いた。

「爺さん! 帰ったぞ!」
「おぉ、おかえり。一年と少しくらいか? えらく早かったな。ん? 人族を連れて帰るとはな」

 スズカは顔を赤らめて報告した。

「ウチの……旦那だよ」
「ベンケイさん、初めまして。オーステンと言います。人族ですがスズカと一緒になりました」

 ベンケイは驚いたが、すぐに顔を綻ばせた。

「そうか、スズカがのぉ、それはめでたい。では、ここに住むということか」
「あぁ、構わないか?」
「前も言ったじゃろ、ワシは構わんと」
 
「よし、お前ぇら! 改めて祝いに姉ちゃん達の家を作ってやろうじゃねぇか!」

『オォ――!!』

 ベンケイとその弟子達は、長い間自給自足の生活を続けている。屋敷の改修や増築はお手の物だ。
 弟子達の指導で家を建てた。何棟か建てた上で、一番出来の良かった家を二人に引き渡した。

「皆で建てた家だ、大事にするよ。みんなありがとう!」

 ベンケイの屋敷の周りに数件の家が建ち、小規模な集落になった。
 

 オーステンはベンケイとその弟子達ともすぐに打ち解けた。やはり天性の人たらしだ。

「ベンケイ爺さん、オレにも薙刀術を指導して貰えないか? 一つの事を極めると人族は昇化する事があるんだ。オレは薙刀術に全てを捧げたい」
「そうか、良い目だ。お前はやり遂げそうじゃ、薙刀はワシが用意する。早速明日から始めるとするか」
「よろしくお願いします!」

 オーステンは剣を使えるし魔法も使える。ただ、剣をこれ以上極めるにも師匠がいない、魔法も然りだ。全てを薙刀術に捧げることを決めた。
 
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