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第四章 新魔王誕生編

鬼人解放

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 朝食を済ませ、ロビーに集まる。

「魔族のレディは本当に情熱的だったよ。いい刺激を得たね」
「あら、魔族の女にも物好きがいるのね、それは良かったわ」

 各々一週間ゆっくりと英気を養った。長旅になるが準備は万端だ。

 地図によると、鬼国と魔都の間には海に面して東西に伸びる『エルドワース山脈』がある。
 山脈沿いに進むと『オオイブキ山』に当たる様だ。目的地は鬼国寄りに位置している。

「魔物の強さはどうでしょうね。軽装で行けそうな気はするけど」
「武器を使うのも勿体ないかもしれませんわね」

 まだ暑い時期だ、いつも通り軽装で旅をする事にした。身の危険を感じた時には防具を付ければいい。

「まずは適当に北西に進んで、山脈まで行きましょ。長旅になるけど宜しくね」


 見渡す限り何も無い広大な大陸を、ひたすら北西に向かって飛んで行く。食料の調達に魔物を狩り、野営を挟みながら山脈を目指す。

 四日後の午後、山脈に到達した。

「広いわね大陸は、着かないかと思ったわ」
「あぁ、ゆっくりお湯に浸かりたい気分だ。シュエン、頼めるか?」
「あぁ、任せてくれ。今日は買い込んだウイスキーでも飲もう。ホーンオックスよりも上位の牛の魔物を捌いたからな、美味いはずだ」

 上位の魔物の肉のステーキは格別だった。
 風呂釜にも入ってみたが、なかなかいい物だ。たまに入るのも良いかもしれない。


 
 更に山脈沿いを西に三日、ようやくオオイブキ山に到着した。

「やっと着いたわ、一週間かかったわね」
「魔力を感じないな、宝玉の封印てのは完璧なようだ。場所は分かるのか?」
「記憶を貰ってるからね、こっちよ」

 山の中腹に木や蔦に覆われた洞窟の様なものを見つけた。

「この中ね、ネトラスの記憶が無かったら見つけられなかったわ。魔物も近づかない様ね」
「確かに、全く居ないな、宝玉の力なのか?」
「まぁ、入ってみよう」

 火魔法で辺りを照らし、中に入る。
 割と広いが、天然の洞窟ではないようだ。洞窟内の壁は溶岩が固まったように見える。おそらく強力な火魔法で貫いた穴だろう。

「いたわ、鬼人よ」

 無造作に切られた薄いブラウンの髪の毛、額には小さい角が生えている。
 吊られて動きの無いマリオネットの様に浮いている鬼人の左右を、紅と黄の宝玉が不規則に浮遊している。赤と黄色のオーラの様なものが、鬼人の周りを満たしているのが見える。
 
「浮いているね、途絶を使うとすれば地に落とす必要がある」
「おそらく、あのオーラのような物が封印結界ね。触れたら解ける可能性があるわ。ワタシが結界の中に入ってみるから、もし封印が解けたらすぐに三人で途絶ね。すぐに魔力を吸収するわ」
「暴れられでもしたら困るからな。念には念をだ」

 鬼人に近付き、オーラの中に手を伸ばす。
 すると、オーラの様なものは消え失せ、鬼人と宝玉は地に落ちた。

『仙術 途絶フリーズ

 三人の途絶が鬼人を縛る。が、鬼人は倒れたままだ。
 マモンは鬼人の頭に触れ、魔力を吸収する。鬼人の記憶と共に、魔力が安定するまでゆっくりと。

「もう大丈夫よ」
「生きてはいるようですわね」
「500年も飲まず食わずで生き長らえさせるとは、どういう仕組みだ? しかも子供のままだ」
「獣の冬眠に近いんじゃない? 宝玉にそういうエネルギーがあるようね」

 鬼人を外に運び、サランが回復魔力をゆっくり注いだ。

「確かに仮死状態だったようですわね。健康に問題は無いけれど、極限まで衰弱してますわね。不思議な状態ですわ」

 サランは仕上げに圧縮した回復魔法を鬼人に向け放った。

 少しすると鬼人は目を覚ました。

「……ん」
「おはようシュテン、助けに来たわよ」
「ん……? 誰だあんた……? なんでオラの名前を……?」
「覚えてない? アナタ大暴れして鬼族と魔族に半壊させたの。だからアナタは封印された。もう500年も経ったのよ?」
「あぁ……思い出せねぇ……あんたたちが助けてくれたのか?」
「ええ、そうよ、ワタシ達はアナタの味方よ。ゆっくり思い出せばいいわ」

 シュテンは身体を起こした。
 同時に腹の虫が音を立てた。健康に問題がない証拠だ。

「……とりあえずオラ、腹が減った……」
「よし分かった、ちょうど昼時だ。飯にしよう」

 周りを見渡し、いい場所を探す。
 少し山に入ると緩やかな小川を見つけた。
 
 シュエンの指示でそれぞれが準備をする。

「昼飯が出来たぞ、バーベキューソースのお陰で肉を焼くだけでご馳走だ」

 切り分けられた肉をシュテンが頬張る。

「ぅんめぇ――! 何だこれ!」
「美味いだろうシュテン、シュエンの料理はなかなか……おい、ややこしいな二人の名前」
「オラ、みんなからは『テン』って呼ばれてたぞ?」
「じゃあ、そう呼ぶわね。ワタシはマモンよ」
「ボクはアレクサンドだ。こっちの美しいレディはサランだ」
「あんたら、助けてくれたうえにこんなにうめぇ飯まで……いい奴らなんだな」
「気にしなくていいわよ、これからよろしくね」

 テンは夢中で目の前の食事にかぶりついた。
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