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第四章 新魔王誕生編
オルトロス
しおりを挟む三人の浮遊術ではそう遠くない。すぐにアズガルシス山に着いた。
「そこまで高い山じゃないのね」
「あぁ、ここにいても魔力を感じるな」
「ヘルハウンドを狩りながら登る? 飛んで現地まで行く?」
「一頭だけわたくしに狩らせてくださる? SSランクに挑戦できるかの確認ですわ」
「サランは回復役だぞ? まぁ、Sランクを一人で倒せれば文句なしのSSだろうな」
前方にはヘルハウンドが一頭。どんな攻撃をしてくる魔物なのかも全く知らない。
四足でもサランの背丈ほどある大型の犬だ。
「結構大きいのね」
「危なくなったら手伝うよ」
「えぇ、お願いしますわ」
サランは双剣を構えた。
ヘルハウンドがサランに飛びかかる。さすがはSランク、かなり速い。
サランは守護術でヘルハウンドの爪攻撃を弾いた。良く見えているようだ。
「うん、自然エネルギーも上手く使えている。良い守護術だ」
ヘルハウンドも速いが、サランは更に速い。さすがはスピードタイプの双剣使いだ。
サランの補助術は身体の構造を熟知しているからか、かなり効果が高い。サランの記憶を貰ったマモン達も、及ばないまでもその恩恵を受けている。
『剣技 苦難の十字架』
ヘルハウンドの噛みつきを避けながら、二本の斬撃で十字に切りつけた。
「お見事。回復術だけじゃなくアタッカーとしてもかなり優秀だね」
「えぇ、ワタシも負けてはいられないわね」
サランは文句なしのSランク超えの冒険者だ。
ヘルハウンドの爪や長い犬歯を採取し、火魔法で火葬する。魔晶石が二個だ、Sランクの魔物からはだいたい二、三個出てくる。
「自信がつきましたわ。わたくしは二人のお陰でかなり強くなってますわね」
「あぁ、サクッとオルトロスを討伐するか」
ヘルハウンド達と律儀に戦ってやる必要は無い。浮遊術で直接オルトロスの住み着いている坑道へ飛ぶ。
「犬なら飛ばないね。途絶が使えそうだが、最終手段にするか」
「そうね、どうせなら剣で倒したいわ」
「よし、ボクが守るから安心して攻撃してくれ。サランは回復と補助だ、サブアタッカーとしても動いてくれ」
「分かりましたわ」
坑道に着いた。
中から魔力が漏れ出ている。
ゆっくりと何かが出てきた。
犬の頭が二つ、オルトロスだ。思ったよりかなり大きい。
「おいでなすったわ! 行くわよ!」
『守護術 堅固な城壁』
オルトロスの敵意は、全て先頭のアレクサンドに向いた。金属盾を構えた姿を久しぶりに見る。
「まずは観察するわ」
「あぁ、ボクの後ろにいるといい」
オルトロスの片方の頭から、強烈な火魔法が放たれた。
『魔力吸収 解放』
マモンは魔力吸収能力で魔法を吸収し、そのままオルトロスに向け解放した。
巨体の割に速い、躱された。
「ここの犬は速いわね。まぁ、ワタシに魔法は効かないわ。さて、どうするワンちゃん?」
オルトロスはもう一方の頭から風魔法を放った。それも吸収して解放する。
今度は狙って解放した。しかし、かすっただけだ。
その後はアレクサンドに向けて爪や牙の物理攻撃に切り替えた。学習能力はあるらしい。
「魔法は封じたわね。アレクサンド、守りは任せたわよ。サラン、両脇から一斉に剣突ね 」
アレクサンドは正面から攻撃を捌いている。オルトロスはアレクサンドしか見えていない。
マモンとサランは横から剣で攻撃だ。一斉に攻撃する。
『剣技 刺突剣』
『グゥォォォ!』
二人の剣が深く刺さった。
が、致命傷にはならない。しかしオルトロスは怯んでいる。
「急所を外してしまったわね。アレクサンドとサランで気を引いてちょうだい。ワタシは意識の外から攻撃するわ」
「「了解」」
オルトロスの敵意は常にアレクサンドに向いている、本当に優秀な盾役だ。
サランがスピードを活かして少しづつダメージを与えている。
急所に届かないなら首を刎ねるまでだ。
『剣技 斬首一閃』
斜め後ろからからオルトロスに斬りかかり、首を刎ねた。
『グゥォォ――!』
片方の首を失い、パニック状態だ。
「終わりよ!」
そのままの勢いで、もう片方の首も切り落とした。巨体が地を揺らして倒れ込む。
「見事。魔族が魔法を使わずにSSランクの魔物を斬り殺すとはね」
「えぇ、自信がついたわ。でも、サランのサポートありきね、いいパーティになったわ」
「そう言って貰えると嬉しいですわね」
ヘルハウンドよりも長く立派な犬歯を採取し、毛皮も剥いでおく。
火葬すると、魔晶石が五つ出た。
「さて、帰って領主の所に行くか」
「このままの勢いでヘルハウンドも減らしておかない?」
「そうですわね、どうせ討伐しなくてはならないですものね」
帰りは歩いて山を降りた。
ヘルハウンドは群れで襲ってくる事はなかった。一、二匹で飛びかかってくるのを斬り殺す作業。オルトロスの後ではただの大型犬だ。
山を降り、領主の屋敷まで飛んで帰った。
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