【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~

久悟

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第四章 新魔王誕生編

殴り込み

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 ジョカルドに来て二ヶ月、アレクサンドとランチをしている。

「どう? いい女はいる?」
「あぁ、絶好調だよ。でもな……そうだマモン、鬱憤晴らしをする気はないかい?」
「どういう事?」
「このあいだ一夜を共にしたレディがね、初日に寄った焼肉屋の主人が言ってた、ラオン一派の幹部の女だったらしいんだよ」
「で? そいつがイチャモンつけてきてるって訳?」
「あぁ、そうだ。宿泊してるホテルはバレてるからね。次嫌がらせしてくるなら殺してやろうかと思ってね」

 ――こないだ、ここに住みにくくするのはやめてくれって言ってたくせに……。

「……まぁ、ワタシは良いわよ、付き合ってあげる。どうせならこっちから出向いてやったら?」
「あぁ、それもいいな。レディに場所を聞くか」
 

 その日の夜、アレクサンドは女からアジトの場所を聞いてきた。

「場所は分かったよ。レディは言いたくなかったようだけど、少し脅したら喋ってくれたよ」
「脅したらって……非道い男だわ。まぁ、行きましょうか」


 繁華街の裏路地に建つ大きな屋敷。
 これがラオン一派のアジトなのだろうか。

「とりあえず、入口から入れてもらおうか」

 流石に入口には人がいる。
 アレクサンドは足を止めることなく男の前に立ち、声を掛けた。

「おい、ヒョンジュンというヤツに会いに来たんだが」
「面会の約束はしてるのか?」
「あぁ、ヤツがボクに会いに来る前に来てやったんだ。いいから呼べ」

 全く会話になっていない。

「何なんだお前は。こんな危ない奴を通せるわけないだろ」
 
「よし、マモン。コイツはくれてやるよ」
「ええ、分かったわ」

 マモンは見張りをドアごと中に殴り飛ばした。
 声を出すことも無く気絶している。

「何よ、こんな弱いヤツを入口に置いて何の役に立つの?」

 中には沢山人がいる。
 突如飛んできた仲間を見て狼狽えている。

「なんだお前らは!」
「ヒョンジュンと言うヤツを出せと言ったんだが、門番には話が通じなくてな。キミらも死にたくなければ言うことを聞いた方がいい」

「ヒョンジュンさんは上だよ、通すわけはないけどな」

 そう言って十人程の戦闘員らしき男達は剣を抜いた。
 構わずアレクサンドは階段に向けて歩く。

「ボクは上に行くから、マモンはコイツらを頼むよ。顔を覚えられたら面倒だ、殺しといてくれ」

 男達の剣は、アレクサンドの守護術に弾き返されている。

『風魔法 空気銃エアバレット

 両手の指から無数の空気銃を放ち、全員の体を撃ち抜いた。
 雑魚たちの処理が今日のマモンの役目らしい。ついでに鬱憤晴らしに殴っておこう。

「グハッ! ブホッ! ブグッ!」

 全員を必要以上に殴り、撲殺した。

 ――はぁ……快感……。

 アレクサンドの後を追い、二階に上がる。
 もう既に戦闘員達が皆息絶えている。

「ヒョンジュンてのは何処にいるの?」
「この上かな?」

 二人で上がると、男が座っていた。

 三十前くらいの人族だ。
 いや、眼が緑色だ、昇化している。

 男は立ち上がり、アレクサンドと対峙した。

「キミがヒョンジュンか?」
「あぁ、そうだ。お前が俺の女に手を出した奴だな? 女を俺から奪いに来たのか?」

 アレクサンドは眉を顰めて言葉を返した。

「あのレディは一夜限りだ、もう興味はない。そんな事より問題なのは、キミがボクにちょっかいを出してきた事だ」
「その為だけに来たのか? 俺は怒りが収まらんがな。俺の女とは一夜限りだと……?」
「なんだ? 二回目に及んでも良いのか? なら有難く借りるが」
「舐めた野郎だ、覚悟は良いんだな?」

 そう言ってヒョンジュンは剣を抜いた。

「ほう、剣を抜いたという事は、斬られる覚悟があるという事だね? 良いだろう、久しぶりに剣を振るうかな」

 アレクサンドは空間から剣を出した。
 装飾が施された片手剣は眩しく光っている。

「なかなか見られないよ。『聖剣アスカロン』だ」
「ほう、良い剣を持ってるな。俺が頂こう」
「ボクの剣が見えるかな?」

『剣技 刺突剣ソードストライク

 速い。
 一気に間合いを詰めてヒョンジュンの胸に剣を突き刺した。
 相手は声も無く倒れた。

  
「アナタの剣術初めて見たわ、凄いのね」
「あぁ、腕のある者が剣を抜いたら、こちらも抜くのが礼儀だよ。さっきの雑魚達にはその価値はない」
「この男は仙人ね、強いんでしょうね」
「あぁ、見ることは出来なかったけどね。こいつの剣もなかなかいいよ。キミも剣を振ってみるか? レクチャーするよ?」
「そうね、杖で殴るのは違うわね。剣も使ってみようかしら」

 マモンはヒョンジュンの剣を拾い上げた。
 二級品らしいが、初めての剣には良すぎるくらいだ。

「石造りだし、中を燃やしとこうか」
「ホント、自分に楯突いたヤツには容赦ないわね」

 その後、屋敷内に火を放ち帰路についた。

「ラオン一派のアジトではなかったのね」
「そうだな、幹部の屋敷であの大きさだ。聞けば分かるだろうけど、ボク達には関係のない話だ」
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