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第四章 新魔王誕生編

髪色

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 ノースラインに着いて数日が経った。
 ホテルの朝食を食べている。

「ねぇアレクサンド、何かを痛めつけないと爆発しそうだわ。こんな小さな町で殺しをする訳にもいかないし」
「一番手っ取り早い方法があるじゃないか。依頼を受けて魔物を殺しに行こう」
「あぁ、そうね。人族ばっかり殺しすぎて忘れてたわ」

 久々の冒険者ギルド。
 かなり規模は小さいが、王都と比べるのは酷だ。少ない依頼に目を通す。

「SSランクは無いのね。いや、そもそもSランクすらほとんど無いわ」
「ギルドの依頼なんて人族の生活範囲内でしか無いからね。害が無ければ依頼にはならないのさ」
「なるほどね。じゃ、とりあえずSランク受けて、山を北上して暴れる?」
「あぁ、そうしようか」


 Sランクの依頼は帰りでいい。
 とりあえず山を越えて飛んでいく。

「ねぇ、こんな山の上に人族が住んでるわよ」
「本当だな。ん? 髪が赤いぞ? 魔族じゃないのか?」
「よく見なさいよ、赤茶色よ」
「あぁ、本当だ、少し茶色がかってるな」

 ――髪が赤っぽい人族か……自分を見てる様ね。

「イライラするわ……集落に魔法ぶっ放してやろうかしら」
「まてまて、あまり問題は起こすなよ」
「バレやしないわよ」

 アレクサンドが近くの山を見て目を凝らした。

「……ん? 向こう見てくれ。あれ、火山じゃないか?」
「そうね、魔法ぶち込めば噴火するかしら?」

 気力のボールを頭上に何個も作り、全てに火の自然エネルギーを混ぜた魔力を圧縮する。

「行くわよー!」

『連続火魔法 炎熱地獄ブレイジングヘル

 火山に無数の火魔法が降り注ぎ、火口を広げていく。

「少し地が揺れてるようね、来るわよ」

 轟音と共に火山が噴火した。

「キャーッハッハ! やったわ! 大噴火よ! マグマの自然エネルギーなんてなかなか無いわよ、取り込んでおきましょ!」

 粘度の低いマグマが、一気に赤茶髪の人族達を飲み込んだ。

「キャーッハッハッ! 見て見て、逃げ惑ってるわ!」
「確かに絶景だな。しかし性格の悪いヤツだなキミは」

 集落は全てマグマに飲み込まれた。
 煙がモクモクと上がっている。

「あー、スッキリしたわ。当分この記憶を見返して楽しめるわ。もう魔物なんてどうでもいいけど、金儲けして帰ろうかしらね」
「あぁ、そうかい。ボクの事を忘れてないか? 魔物はボクが殺るよ」

 
 帰りにSランクの魔物を狩って帰った。
 ギルドで達成報告をし、大衆酒場に入る。アレクサンドのリクエストだ。酔っ払いの喧騒の中で飲むのもたまにはいい。

「はぁ、酒が美味いわね」
「ボクが言える立場じゃないけど、キミも相当な悪党だね」

 横の席の男達が話しているのが耳に入った。

「おい、今日の火山の噴火で『センビア族』全滅らしいぞ」
「あぁ、そうみたいだな。前の地質調査の結果じゃ、千年以上は噴火してないんだろ? その兆候も無かったって。何でいきなり噴火したんだろうな……」
「まぁ、ここに被害が無かったのがせめてもの救いだな」
「あぁ、ゆっくり酒も飲めなかったかもしれないからな。あの赤茶髪も見ることが無くなるのか……可哀想にな」

 あの赤茶髪は民族特有のものらしい。二度とあの紛らわしい髪色を見る事も無いだろう。

 今日は楽しかった。
 夢でも楽しめそうだ。

 数ヶ月はここに滞在しよう。


 ◆◆◆
 
 
 結局ノースラインには一年滞在した。
 依頼に無いような強い魔物を倒しながらストレスを発散した。少ないSランクの依頼を片っ端からこなし、マモン達はもう一生遊んで暮らせる程の金を持っている。
 殺しをすれば町から追われる、それくらいは二人にも分かる。
 
「マモン、ここから南に行くと町がある。そろそろ移動するか? ボクの噂が回りすぎてレディが相手をしてくれない。は極力使いたくないからね」
「知らないわよ、自業自得じゃない。まぁ、移動してもいいわよ。王都から見たら東に伸びた街道の先かしら?」
「あぁ、そうだな。町の名前は『ジョカルド』と言う」
「アナタは女の相手がいないと機嫌が悪くて困るわ。いいわ、移動しましょう」

 二人の移動速度なら二日もかからないだろう。色々な町に行くのも楽しい。
 
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