【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~

久悟

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第三章 大陸冒険編

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「分かった? アナタの中には面白そうなヤツが居るみたいね」
 
 ――オレの中に……魔神が……?

 今も夢に見るあの光景。
 母親の悲鳴だと思っていた。しかし、あれは母親が魔神を封印する叫びだったらしい。

 母ソフィアがユーゴの中で魔神を抑えている。それでたまに夢に出てくるのだろう。
 いや、あれは夢ではなかったという事だ。

 ソフィアの目は青紫色だった。何故忘れてたのだろう。
 そして、ユーゴは人族との子では無いらしい。

 ――オレは龍族と何族との子なんだ。
 
 シュエンの魔力障害は、ユーゴから漏れ出た魔神の魔力によるものらしい。
 
 シュエンは治せる。
 ソフィアも一応は生きている。
 

「ユーゴ……大丈夫かい?」
「あぁ、大丈夫だ。皆には後で話す」

 ユーゴが何者かなど、皆は気にしない。
 彼等の絆はそんなものではない。

「マモン、礼を言うよ」
「良いわよ、これから聞くことに繋がるからね。気持ち良く喋ってちょうだいよ」
「あぁ、知ってることなら話すよ」

 マモンは軽く笑みを浮かべ、ユーゴに質問を投げた。

「アナタの母親は封印術に長けてたみたいね」
「あぁ、そうみたいだな」
「ワタシ達が鬼人シュテンを解放した時、そこには黄と紅の宝玉があったの。シュエンちゃんの話では、リーベン島にはとんでもない化物バケモノがいたそうね」
「ヤマタノオロチの事だな?」
「そう、それを龍王が封印したと」

 ――何が聞きたいんだ。

「その化物を、すいの宝玉で封印したんでしょ? 龍族の元の土地にあるなんて嘘ね。かなりの無駄足を運ばされたわ。少し怒ってるのよ? まぁ、いい掘り出し物があったのは事実だけどね」

「……あぁ、嘘だ。オレが持っている」
「え!?」
「ユーゴが持ってるの!?」

 トーマスとエミリーは驚き、ユーゴに目を向けた。

「……仲間も知らなかったようね」

 ユーゴは淡々と言葉を続ける。
 
「オレのこの目は何か分からないが、空間魔法が使えるようになった、その中に入れている。オレは誰ともしていない。アレクサンドにはこの意味が分かるな?」

 それを聞いたアレクサンドは、片眉を下げて不快な表情を浮かべた。

「……あぁ、キミを殺せば諸共消えるな」
「なるほどね、力ずくで奪うのは無理って事ね」

「……なぜ宝玉を集める?」
「宝玉には強力な封印術式が組み込まれてる。封印術の勉強をしてみたの。宝玉を四つ集めると、封印術式が反転する可能性がある。アナタの中の魔神を復活させる鍵があるとすれば、宝玉以外に考えられないと思わない? アナタを殺しても出てくるかもしれないけど、魔神は霊体みたいだし。封印の術式によっては一緒に消えてしまう可能性もある。しかも宝玉までとなるとアナタは殺せないわ」
 
「……おい、復活させようとしてるのか? どうなるか分かってるのか?」
「面白そうじゃない? ワタシ達より強いヤツだったら喜んで従おうと思ってるわ。その時はアナタ達に宣戦布告ね」

「宝玉を集めた所で、何も起きない可能性もあるぞ?」
「そうね。その時は別の方法を考えるわ。ワタシ達は気が長いの」

 シュエンとソフィアが必死に封印した奴だ。復活などとんでもない。
 シュエンもそれに加担しているという事は、かなり重度の魔力障害だ。シュエンの良心はもう無いと見ていい。

あおの宝玉は仙王の空間魔法の中かしらね?」
「さぁな、その可能性が高いんじゃないか? オレは当然知らない。あかはアレクサンドの空間の中だろ?」
「そりゃそうね」
「あぁ、ボクが持っている。もちろん契約は解除してるぞ」
 

 マモンは少し考え、アレクサンドと小声で喋り始めた。
 話を終えると、ユーゴに向き直り口を開いた。

「提案があるわ」
「なんだ」
「そこの二人はワタシ達に恨みがあるのよね? 戦ってあげても良いわよ? 殺されても文句は言わないわ。ワタシ達は半殺しにはしても、殺さないであげる」
「で? こっちが負けたら宝玉を寄越せと?」
「理解が早くて助かるわ」

 ユーゴはトーマスとエミリーの方を向いた。

「私は今すぐにでもあのクズに斬りかかりたいよ。でも、そんな事を勝手に決められる立場じゃない」
「僕も同じ意見だ。その宝玉の価値は知らないけど、勝手に賭けていい代物じゃない事は分かる」

「まぁそうね、相談するといいわ。ワタシ達は魔都のシルヴァニア城にいる、返事はいつでも良いわよ。ワタシはウソが大っ嫌い、ここを攻める気がないのは本当よ」
「分かった……お前らは本当に暇潰しで行動してるんだな……」
「あら、悪い事じゃないでしょ? ワタシ達は寿命が長いの、楽しく生きなきゃ。じゃあね」

 そう言い残して、マモンとアレクサンドは帰って行った。

 

「ユーゴ、平気な顔して嘘つくんだね……空間魔法の契約はしていないなんて」
「あぁ、里長を見習って表情に出さずに嘘をついてみた、上手くいったな」
「そうだよ。里長さん嘘ついてたのね、上手すぎるでしょ。あれは奥さんに相当嘘ついてるよ」

 ――そうかもしれない……。

「よし、皆の所に戻るか」
「あぁ、心配してるだろうな」
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