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第三章 大陸冒険編
シュエンの記憶 2
しおりを挟む依頼書にあった森に入る。
いた、あれがマンイーターか。思ったより大きいな、食人植物か。
「植物だ、火属性が効きそうだな」
「そうだね。私が攻撃してみてもいい?」
「あぁ、危なかったら助ける」
『火魔法 紅炎』
なるほど、いい魔法だ。これにも自然エネルギーを込めているようだ。
マンイーターに効いてるな。触手の攻撃をしっかり避けている、感もいい。
「よし、だいぶ弱ったな。俺が残りを燃やそう。おっと、依頼品は触手だったな」
『剣技 斬返三段』
三本もあればいいだろ。
とどめだ。
周りに燃え移らないようにしないとな。
『火遁 業火殺』
よし、燃え尽きたな。
「シュエン! 周りが燃えてるよ!」
「術が強すぎたか!」
『水遁 大津波!』
消火活動は終了だ……。
「シュエン、凄いね……」
「ソフィアも使えなくても、国の術があるんだろ?」
「私はまだ国の術は扱えないの。習う前だったから。私の魔法なんてシュエンの術の足元にも及ばないよ」
「まぁ、長いこと生きてるからな……」
ギルドへの報告が終わり、俺達は晴れてAランク冒険者だ。
「二人で倒したのか? 報酬は30万ブールだよ」
「あぁ、この子が弱らせて俺がとどめを刺した。半分づつにするか、これだけあれば当分は暮らせるな」
「やっとここのお金が手に入ったよ……」
夕方か。
この町に長居する気は元より無かったが、さてどうするか。
「今から町を出て野営の練習をするか?」
「うん、そうだね。お肉は解体したのがあるし、野菜も調味料も買ったしね」
「よし、出発だ」
俺もまだ慣れが必要だが、飛んで移動できるようになった。
「お、さっきの教えによると、あの河原辺りが良くないか?」
「そうだね、あそこにテント立てよっか」
なるほど、簡単に立てられるんだな。
かまどもソフィアが上手く作ってくれている。しかも鍋料理まで……。
「ソフィア、すまん。俺が料理出来ないばっかりに……」
「いいよ、シュエンに出会わなかったら、一人じゃ旅にも出られなかったんだから。よし、あとは煮込むだけだよ。今日は暑かったし、水浴びしようよ」
おいおい、普通に脱ぐのか。
12歳とはいえ、乳が膨れかけてるのに……。
「ソフィア、男の前で恥ずかしくないのか……?」
「ん? 何で?」
「いや……恥ずかしくないのなら良いが……」
俺が恥ずかしくらいだ。
水を浴びているうちに、鍋は食べ頃だ。
「うん、美味い!」
「ホント、美味しいね! 色んな魔物のお肉食べてみたいな」
「そうだな、何が美味いか食べ比べだな。旅の楽しみが一つ増えたぞ」
退屈な島生活からみれば、大陸の旅は全てが新鮮だ。ソフィアには色々教えてもらおう……代わりに術を教えるかな。
「よし、寝るか。テントは割と広いからな、一緒でいいな?」
「ん? ソフィア?」
「あぁ……憑依する奴を間違えたな……」
なんだ……この魔力は……。
ソフィアから何者かが出てこようとしている……。
「クソォ……なんなんだコイツは……出られねぇ」
何かは分からんが、こいつは絶対に出してはいけない……。
遁術は駄目だ、ソフィアを巻き込む。
刀だな。
『剣技 朧』
「グッ……何だテメェは……」
練気の斬撃だ、一応効いてはいるらしい。
すぐに再生する、霊体のようなものか。斬り続けるしかないな。
『剣技 乱れ氷刃』
「クソォ……テメェ、覚えとけよ……」
奴はソフィアの中に戻った。
「おい、ソフィア! 大丈夫か?」
「ん……あぁ! シュエン、大丈夫だった!?」
「あぁ、大丈夫だ。何だあれは?」
「うん、ちょっと待って。抑え込むから」
何かを詠唱している。
「ふぅ……シュエンがいなかったらと思うとゾッとするね……」
「あれの説明も内緒なやつか?」
「いや、さすがに言うよ……私の中にはとんでもない魔神が憑依してるの……」
「魔神? 憑依ということは、やはり霊体に近いのか」
「どうやって私の中に戻したの?」
「あぁ、斬った」
「斬った!? あれを!?」
「すぐに再生はしたが、効いてはいたようだ」
「信じらんない……斬れるのあれを……?」
普通は切れないのか……練気術があって良かったな……。
「私は『魔封眼』っていう力を開眼したの。だから青紫に変化してる。私の能力は封印術に特化してる」
「憑依する奴を間違えたって言ってたな」
「うん、私に憑依して良かった。けど……私はまだ未熟だな……私自身が強くならないと……ねぇシュエン、私を鍛えてくれない?」
「あぁ、俺も色々教えてもらったしな。あの呼吸で遁術も強くなりそうだ。俺が教えられるものなら教えてやる。あとは、またあいつが出てきても俺なら戻せそうだしな。魔力が暴走するような事があっても、俺には『魔力吸収』の能力がある」
「魔力を吸収できるの? それは頼もしいね」
野営先で良かった。
落ち着くまでは町に行くのも恐ろしい。
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