上 下
110 / 241
第三章 大陸冒険編

弟子達の成長

しおりを挟む

 ユーゴ達が世話になっている塔の客室に、龍族の幹部が案内された。
 
 今から食事だ。

 円卓にはユーゴ達四人と、里長、メイファ、ヤンガスとそれぞれの直属の部下が一名ずつだ。当然、皆ユーゴとも顔見知りだ。

「ジュリアは仙族の方に行かなくていいのか?」
「あぁ、今アタシはお前らの仲間だ。こっちにいるのが普通だろ?」

 それを聞いてヤンガスが前のめりに口を開いた。
 
「あんたがエミリーの恩人の仙族か! 俺の刀ぁ気に入ってくれたか?」
「あぁ、素晴らしいよあれは。今は刀を振る方が多いくらいだ。ありがとう」
「そりゃ良かった! で? この食いもんはどうやって食べるんだ?」
「あぁ、ナイフとフォークは外側から使います」
「おい、箸はねぇのか! 食いにくくて仕方ねぇ!」

 ――ヤンさん……やっぱりそうなるか……。
 
 メイファはさすがに上品だ。理解して普通に食べている。

「おいヤンガス、食わせてもらってんだ。文句を言っちゃぁいけねぇ。皆黙って食ってんだ」
「そうは言うけどよ親父、こんなもんで刺しても口に入らねぇよ」

 里長の直属の部下はヤンガスの父、シャオウ・リー。里長の昔からの側近との事だ。
 
 皆もヤンガスの様に口には出さないが、不満そうだ。食器の指導が必要だろう。
 

「美味かったが、食った気がせんかったの」
「毎日食べてれば慣れますよ。オレらもそうだった」

 食事を終え、皆で紅茶を飲んでいる。
 
「そうだ、親方。これみてくださいよ」

 トーマスはニーズヘッグの防具を広げた。
 ヤンガスが防具を手に取り、食い入るように眺めている。

「おぉ……こりゃ見事な革だな……いい職人見つけたみてぇだな、素晴らしい出来だ。この金属は何だ?」
「そうでしょ? いい職人紹介して貰えて良かったです。それは仙神国の加工金属です、軽くてかなり丈夫なんです」
「ほぉ……こりゃ俺も欲しいくれぇだ……」

 ヤンガスが感嘆するほどの防具らしい。
 確かに素晴らしい、これ以上は考えられない。

「そうだヤンさん、トーマスがとんでもない守護術を編み出しましたよ!」
「とんでもねぇ守護術だと?」
「はい、守護術に防具の特性を写したんですよ。守護術に薄くヤマタノオロチの鱗が見えてるんです」

「……なんだと? トーマス、やってみろ」
「あぁ、はい」

 トーマスはヤマタノオロチの盾を構えた。

『守護術 堅牢』

「本当だな……」
「トーマス、お主……これは凄いぞ……この様な術は聞いたこともない。能力の名をお主が付けて良いのではないか?」
「あぁ、確実に何らかの特異能力だな……いや、眼の力か。どっちにしろお前ぇ盾士として完成しつつあるな」
「ほんとですか? ありがとうございます!」

 里の皆も知らない程の凄い能力だった。
 ニーズヘッグが放つ災害級の魔法を完璧に防いだ守護術だ、当然だろう。

 ヤンガスが思い出したようにエミリーに話しかけた。
 
「そうだエミリー。頼まれてたもん作ってきたぞ! 注文通り細めに作っといた」
「ありがとうヤンさん! また取りに行こうと思ってたけど、ちょうど良かったよ。お代は?」
「要らねぇよ! 絶対ぇ受け取らねぇからな!」
「いつもすみません……」

 四本の苦無くないだ。
 今エミリーは二本の苦無を持っている。

「すっかり苦無使いだなエミリー」
「はい、いい武器を貰いました。ありがとうございます奥様!」
 
「エミリーは足止めの術を苦無に纏わせて、この防具の魔物に突き刺したんですよ」

「……待て、これに苦無を突き刺したのか……?」

 メイファが見たことのない顔で驚いている。
 
「はい! 刺されば動きをとめられるかなって。刺さってよかったです!」
「エミリー、ミモロ山の大蛇にも苦無を貫通させてたもんな」
「あれに貫通させたのか……? おいおい……苦無はそこまでの武器じゃないぞ……エミリー、お前まさか皮膚の弱い部分が視えてるんじゃないか?」
「視えてるというか、分かると言うか……説明が難しいけど……」

 そうエミリーが言うのを聞いて、メイファが難しい顔で考え込んでいる。
 
「……それで分かった。お前が編み出した快癒かいゆだが、私が扱ってもお前程の効果を得られん。お前、然るべき患部に直接術をかけているな?」
「どうなんでしょう……自覚は無いですけど……確かに、奥様から教わった解毒も神経毒には効きにくいって言われてたけど、コカトリスの毒霧に有効でしたね」
「コカトリスの神経毒はアタシ達も苦労したな。五人がかりでやっと倒した上に、三日間寝込んだよ……あれは毒霧の厄介さでSSランクに指定されている。確かにかなり厄介だった」
 
「……そうなのか。あれ、SSだったのか……能力の相性が良かったんだな。エミリーは一瞬で解毒してたよな」
「まぁ、ユーゴが龍眼で早く気付いたってのもあるけど、すぐに動けるまでに回復してくれてたね」

「エミリー、お前は何らかの眼の力を開眼してるな。治療術師としてかなり相性のいい能力だ。しかも、苦無等の中距離攻撃とも相性がいい」
「私、強くなってるんですね!」
「いや……強くなりすぎているぞ……」

 ここ最近エミリーが術や攻撃を外したのを見たことがない。 
 師匠達がベタ褒めだ。皆が特殊能力や眼の力を得ている。
 三人はかなり強くなっている。
 
  
 ◇◇◇


「そうだ、ここは男女の風呂っていうのが、無いんですよ。混浴なんです」
「なんだと……? 大丈夫なのか……?」
「私は構わんが、見られてどうなる訳でもない」

 メイファはジュリアタイプらしい。



 皆でゾロゾロと風呂へと向かう。

「なるほど、ここで身体を洗ってから露天風呂か」

 里長は無駄のない身体をしている。しなやかな筋肉だ。

 ヤンガスは筋骨隆々だ。
 いつも槌を打っている右腕が異常発達している。

 メイファは隠そうともしない。
 人族で言うところの40代くらいだが、身体に張りがあって美しい。メイファの娘も綺麗だ。

 男たちがソワソワしている。

「おい、何だこれは。女達が堂々としすぎて儂らはどこを見れば良い……」
「まぁ、眼福ではあるけどよ……」

「次からは時間をずらしましょうか……」

 龍族の皆との王都生活が始まった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...