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第三章 大陸冒険編

エミリーの恋 2

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 少し王都から移動した。
 いい岩山がある、この辺でいいだろう。魔物がいてもBランク程度だ。

「えっと……マシューは冒険者のランクカードは持ってるの?」
「うん、数年前に取ったっきりなんだ。Cランクだよ」
「そっか、私は十歳の時にCランクになったな」
「今は?」
「あぁ、こないだSSSトリプルエスになったんだ」
「SSS!? そんなランクあるの!? とんでもない人に弟子入りしちゃったね……」
「うん、仲間に恵まれたね。一昨日の他の三人はすごい冒険者だよ」
「凄い人たちとお酒飲んでたんだね……」

 マシューの力を見ておこう。

「じゃ、魔法を見せてもらうおうかな? マシューはアタッカーなの?」
「うん、魔法剣をメインにしてたからね、アタッカー志望かな……」
「私は回復術師だけど、アタッカーに回るときもあるから基本的なことは教えられるよ。じゃ、岩山に向かって魔法剣を放ってみて」
「分かったよ」

『魔法剣 炎の破斬ブレイズブレイク

 岩山が少し溶けた。相当高温だ。

「うん、いい魔法剣だね。でも、私がするとこうなる」

『魔法剣 炎の破斬ブレイズブレイク
 
「うそ……岩山が溶けて大穴が空いた……」
「これが魔力操作の精度と、放つ魔力量の差だよ」
「凄いな……」

「でもね、人族に魔法や魔法剣は合わない。魔力操作の精度は修練でなんとかなるけど、込める魔力量はどうしても少なくなっちゃうから」
「そんな……小さい頃からやってたことは無駄だったってこと……?」
「ううん、そうじゃない。魔法は全ての術の基礎になる。マシューは魔力操作の精度はいいよ。だからこれから教える術も問題なく修得できるはずだよ」

 練気術をマシューに教える。

「魔法剣は、魔法に気力を練り込んで剣に纏わせてるでしょ? それを気力だけ練り上げるの。それが練気術」
 
「……なるほど。すごい力が身体の中にあるのが分かるよ」
「それを剣に纏ってみて。コツは剣に練気を練り込むように、その後、剣の先から薄く纏うように意識してみて」

 マシューが剣に練気を流す。

「ダメだ……相当訓練が必要だね……」
「うん、一昨日いたユーゴでも二ヶ月かかったからね。普通は半年はかかるよ。でも、これを習得すれば、マシューの戦闘法はガラッと変わるよ。毎日時間を取って、コツコツ練習してね」
「そうか、これで音を上げるわけにはいかないね……頑張るよ!」

 ――真剣な顔もいい……。

「後は家の庭や広場でもできることだよ」
「うん、分かった! 頑張るよ!」

 その後、守護術と回復術と補助術の基礎を教えた。錬気術と並行して修練して貰おう。

 
「そろそろお腹空いてきたね。王都に戻ろうか」
「お礼にご飯を奢らせてよ!」
「いいの? ありがとう!」

 
 ◇◇◇
 

 王都に帰ってきた。
 マシューは王都の住民の為、出入りは自由だ。
 
 マシューおすすめのお店に入る。
 スパイスのいい香りがする。

「ここのカレーライスが絶品なんだ」
「カレーライス?」
「うん、肉や野菜をスパイスで煮込んだ料理だよ。僕はライスにかけて食べるのがお気に入りだ」

 エミリーは初めての料理だ。マシューのおすすめを注文した。

「この料理は初めてだね、大抵食べたと思ったけど……」

 スプーンですくって口に運ぶ。
 スパイスが鼻から抜けて、その後にコクや旨味が口いっぱいに広がる。

「美味しい! なにこれ!」
「良かった! 気に入ってくれたかな」
「うん、ライスとすっごく合うね!」
「スパイスでもっと辛くしたりできるんだよ。僕はもう少し辛いのが好きだな」
 
 これは皆にも教える必要がある。
 トーマスがこだわって作るに違いない。
 

 半日以上マシューと一緒にいて、やっと目を見て話せるようになってきた。いい笑顔を向けてくれるマシューを見ているだけで楽しい気分にさせてくれる。

「マシュー、今日はこれから用事ある?」
「いや、今日はお店にも行かないからね。何もないよ?」
「あの……今日一日遊ばない……?」
「うん、いいよ! どこに行こっか?」
「ホントに!? 私はギャン……いや、あまり遊びに行く事が少ないから、マシューにお任せしたいなぁ」

 マシューが真剣な顔で考えている。
 
 ――正直、マシューと一緒ならどこでも良いんだけどな……。

「ベタだけど、シャーリーズパークに行く?」
「行ったことないな」
「ホントに? じゃ、行こうよ! 僕も小さい頃に行ったっきりだ」


 店を出て西エリアに向かった。

 ――あっ、これがシャーリーズパークか。いつも上を飛んで通り過ぎてただけだったから気にもしてなかったな。

 ただの公園かと思ったが、沢山のキャラクターがいる。着ぐるみらしい。

「シャーリー・ベルナールっていうデザイナーがデザインしたキャラクターのテーマパークだよ」
「あ、あれ見たことある!」
「あぁ、ピンキーキャットだね。一番人気の猫のキャラクターだよ」

 チケットを買うために列に並ぶ。

「私が誘ったんだ、払うよ!」
「ダメだよ、ここを選んだのは僕なんだから」
「んー、分かった! 自分の分は自分で買おう!」
「えー、良いのにホントに」
「いいの! また遊んで欲しいんだから!」

 チケットを買って、パーク内に入った。

 可愛いキャラクター達と触れ合える。対象年齢は低そうだが、大人でも十分楽しめそうだ。

「あ、エミリー! あれに乗ろうよ!」

 ――ん? 乗る? あのクルクル回ってるやつかな。

「うん、行ってみよう!」

 二人乗りの乗り物にマシューと乗り込んで、ベルトで体を固定する。
 音楽が鳴って、支柱を中心にクルクル動き出した。

「へー! すごいねこれ!」
「うん、子供の乗り物だけどね。童心に帰れてなかなか良いだろ?」

 ――また可愛い笑顔だ……。

「今度はあれに乗ろうよ!」

 いっぱい走り回った。すごく楽しい。

 いつもの三人と一緒にいるのもすごく楽しい。が、マシューとの楽しいは少し違った。

「最後に観覧車乗ろうよ!」
「あのおっきいやつ?」

 二人で箱の中に入った。
 
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