105 / 243
第三章 大陸冒険編
エミリーの恋 2
しおりを挟む少し王都から移動した。
いい岩山がある、この辺でいいだろう。魔物がいてもBランク程度だ。
「えっと……マシューは冒険者のランクカードは持ってるの?」
「うん、数年前に取ったっきりなんだ。Cランクだよ」
「そっか、私は十歳の時にCランクになったな」
「今は?」
「あぁ、こないだSSSになったんだ」
「SSS!? そんなランクあるの!? とんでもない人に弟子入りしちゃったね……」
「うん、仲間に恵まれたね。一昨日の他の三人はすごい冒険者だよ」
「凄い人たちとお酒飲んでたんだね……」
マシューの力を見ておこう。
「じゃ、魔法を見せてもらうおうかな? マシューはアタッカーなの?」
「うん、魔法剣をメインにしてたからね、アタッカー志望かな……」
「私は回復術師だけど、アタッカーに回るときもあるから基本的なことは教えられるよ。じゃ、岩山に向かって魔法剣を放ってみて」
「分かったよ」
『魔法剣 炎の破斬』
岩山が少し溶けた。相当高温だ。
「うん、いい魔法剣だね。でも、私がするとこうなる」
『魔法剣 炎の破斬』
「うそ……岩山が溶けて大穴が空いた……」
「これが魔力操作の精度と、放つ魔力量の差だよ」
「凄いな……」
「でもね、人族に魔法や魔法剣は合わない。魔力操作の精度は修練でなんとかなるけど、込める魔力量はどうしても少なくなっちゃうから」
「そんな……小さい頃からやってたことは無駄だったってこと……?」
「ううん、そうじゃない。魔法は全ての術の基礎になる。マシューは魔力操作の精度はいいよ。だからこれから教える術も問題なく修得できるはずだよ」
練気術をマシューに教える。
「魔法剣は、魔法に気力を練り込んで剣に纏わせてるでしょ? それを気力だけ練り上げるの。それが練気術」
「……なるほど。すごい力が身体の中にあるのが分かるよ」
「それを剣に纏ってみて。コツは剣に練気を練り込むように、その後、剣の先から薄く纏うように意識してみて」
マシューが剣に練気を流す。
「ダメだ……相当訓練が必要だね……」
「うん、一昨日いたユーゴでも二ヶ月かかったからね。普通は半年はかかるよ。でも、これを習得すれば、マシューの戦闘法はガラッと変わるよ。毎日時間を取って、コツコツ練習してね」
「そうか、これで音を上げるわけにはいかないね……頑張るよ!」
――真剣な顔もいい……。
「後は家の庭や広場でもできることだよ」
「うん、分かった! 頑張るよ!」
その後、守護術と回復術と補助術の基礎を教えた。錬気術と並行して修練して貰おう。
「そろそろお腹空いてきたね。王都に戻ろうか」
「お礼にご飯を奢らせてよ!」
「いいの? ありがとう!」
◇◇◇
王都に帰ってきた。
マシューは王都の住民の為、出入りは自由だ。
マシューおすすめのお店に入る。
スパイスのいい香りがする。
「ここのカレーライスが絶品なんだ」
「カレーライス?」
「うん、肉や野菜をスパイスで煮込んだ料理だよ。僕はライスにかけて食べるのがお気に入りだ」
エミリーは初めての料理だ。マシューのおすすめを注文した。
「この料理は初めてだね、大抵食べたと思ったけど……」
スプーンですくって口に運ぶ。
スパイスが鼻から抜けて、その後にコクや旨味が口いっぱいに広がる。
「美味しい! なにこれ!」
「良かった! 気に入ってくれたかな」
「うん、ライスとすっごく合うね!」
「スパイスでもっと辛くしたりできるんだよ。僕はもう少し辛いのが好きだな」
これは皆にも教える必要がある。
トーマスがこだわって作るに違いない。
半日以上マシューと一緒にいて、やっと目を見て話せるようになってきた。いい笑顔を向けてくれるマシューを見ているだけで楽しい気分にさせてくれる。
「マシュー、今日はこれから用事ある?」
「いや、今日はお店にも行かないからね。何もないよ?」
「あの……今日一日遊ばない……?」
「うん、いいよ! どこに行こっか?」
「ホントに!? 私はギャン……いや、あまり遊びに行く事が少ないから、マシューにお任せしたいなぁ」
マシューが真剣な顔で考えている。
――正直、マシューと一緒ならどこでも良いんだけどな……。
「ベタだけど、シャーリーズパークに行く?」
「行ったことないな」
「ホントに? じゃ、行こうよ! 僕も小さい頃に行ったっきりだ」
店を出て西エリアに向かった。
――あっ、これがシャーリーズパークか。いつも上を飛んで通り過ぎてただけだったから気にもしてなかったな。
ただの公園かと思ったが、沢山のキャラクターがいる。着ぐるみらしい。
「シャーリー・ベルナールっていうデザイナーがデザインしたキャラクターのテーマパークだよ」
「あ、あれ見たことある!」
「あぁ、ピンキーキャットだね。一番人気の猫のキャラクターだよ」
チケットを買うために列に並ぶ。
「私が誘ったんだ、払うよ!」
「ダメだよ、ここを選んだのは僕なんだから」
「んー、分かった! 自分の分は自分で買おう!」
「えー、良いのにホントに」
「いいの! また遊んで欲しいんだから!」
チケットを買って、パーク内に入った。
可愛いキャラクター達と触れ合える。対象年齢は低そうだが、大人でも十分楽しめそうだ。
「あ、エミリー! あれに乗ろうよ!」
――ん? 乗る? あのクルクル回ってるやつかな。
「うん、行ってみよう!」
二人乗りの乗り物にマシューと乗り込んで、ベルトで体を固定する。
音楽が鳴って、支柱を中心にクルクル動き出した。
「へー! すごいねこれ!」
「うん、子供の乗り物だけどね。童心に帰れてなかなか良いだろ?」
――また可愛い笑顔だ……。
「今度はあれに乗ろうよ!」
いっぱい走り回った。すごく楽しい。
いつもの三人と一緒にいるのもすごく楽しい。が、マシューとの楽しいは少し違った。
「最後に観覧車乗ろうよ!」
「あのおっきいやつ?」
二人で箱の中に入った。
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チート魔法の魔導書
フルーツパフェ
ファンタジー
魔導士が魔法の研究成果を書き残した書物、魔導書――そこに書かれる専属魔法は驚異的な能力を発揮し、《所有者(ホルダー)》に莫大な地位と財産を保証した。
ダクライア公国のグラーデン騎士学校に通うラスタ=オキシマは騎士科の中で最高の魔力を持ちながら、《所有者》でないために卒業後の進路も定まらない日々を送る。
そんなラスタはある日、三年前に他界した祖父の家で『チート魔法の魔導書』と題された書物を発見する。自らを異世界の出身と語っていた風変わりな祖父が書き残した魔法とは何なのか? 半信半疑で書物を持ち帰るラスタだが、彼を待ち受けていたのは・・・・・・
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる