【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~

久悟

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第三章 大陸冒険編

子供

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 食料品街で醤油や味噌などの調味料と野菜、吟醸酒をたっぷり買い込み、昼の弁当を買って里を後にした。
 味噌の中の菌は生きている。空間魔法の中で保管すると菌が死んでしまう為、風味が落ちるのが難点だが、まぁ仕方ない。

「昨日ね、奥様に快癒を見せたんだ。やっぱり凄い術なんだって。医学の常識が変わる! って大興奮だったよ」
「あの効果だもんなぁ。何でも治せそうだ」

 メイファのお墨付きの術。彼女が更に研究を進めると更に進化しそうだ。

「エミリー、ボートレースはいいのか?」
「うん、我慢するよ……その代わり明後日はレトルコメルスでカジノ行くよ!」
「いや、いつもだろカジノは」

 そのままの足で、レトルコメルスへの帰路に着いた。


「お、ホーンオックスがいるぞ!」
「すき焼き肉ゲットだー!」

 この牛の魔物、ホーンオックスは最高のすき焼き素材だ。ランクは知らないが。

「牛の生レバーも上手いんだよなぁ。当たると怖いから一応空間魔法に入れてからじゃないとな」
「今日は吟醸酒、やっちゃう?」
「いいねぇ! 大吟醸買い込んだし、やっちゃいますか!」

 牛の解体と肉の処理を終えた。
 トーマスの元での修行により、ユーゴの解体の腕もかなり上がっている。


 そろそろ昼食にしようかと思ったその時。

「あれ、誰か倒れてないか?」
「ホントだね。子供っぽいけど」

 街道から少し離れた辺りに誰かが倒れている。周りに何も無い為たまたまユーゴの目に入った。
 近づくと、少年が倒れていた。

「おい、大丈夫か? 怪我はないか?」
「助かった……食べ物は……ありませんか……?」

 ――オレの弁当……まぁ仕方ないか。

「ほら、これ食え」
「ありがとうございます……」

 少年は座る事も出来ない。
 
「ダメだね、かなり衰弱してる。快癒掛けるね」

 エミリーは新術の快癒を少年に掛けた。

 顔色が良くなっていく。
 復活だ、本当に万能な術だ。

 少年は泣きながら弁当を貪った。
 

「本当にありがとう……お兄さん達に会わなかったら、俺死んでたよ……」
「それはいいけど……何してたんだ? こんなところで」
「俺、騎士になりたいんだ。だからレトルコメルスに向かってるんだ」
「お前何歳だ? あぁ、お前ってのは悪いな。オレはユーゴだ。こっちのお姉さんはエミリー」

 少年は口の周りの米粒を口に入れ、二人に向き直った。

「俺はロナルド、ロンて呼んでよ。12歳だ」
「両親は?」
「両親はいない。婆ちゃんに育てられたけど、少し前に死んじゃったんだ。だから、夢だった騎士になりたくてルナポートを出たんだ。出発して一週間、六日ぶりのご飯だよ……」
「無謀な奴だな……現に死にかけてたしな」

 さすがにこんな子供を放って行くわけにはいかない。

「オレ達もレトルコメルスに行くんだ。連れてってやるよ」
「本当に!? ありがとう!」

「ユーゴ、お弁当半分食べなよ」 
「おぅ……ありがとう」
「なんか……ごめんなさい」
「いや、気にするな」

 腹は満たされていないが、夜までの我慢だ。出発しよう。

「ロン、オレの背中に乗ってくれ。振り落とされるなよ」
「え? 背中に?」
「エミリー、ちょっと速度落としてから、徐々にスピードあげよう」
「分かったよ!」

 少しスピードを落として飛び立った。

「え!? 飛べるの!? はやっ!」
「もう少し早く飛んで大丈夫か?」
「うん、頑張る!」

 徐々にスピードを上げて、全力で飛んだ。

「ロン、大丈夫か?」
「うん……多分……大丈夫」

 このスピードで耐えている、大したものだ。


 ◇◇◇
 

 夕方になり、いい野営地を見つけた。

「あそこいいな! いい湖あるよ」
「ホントだな、あそこにしよう」

 グッタリしているロンを下ろすと、大の字に転がった。

「大丈夫か……?」
「うん……なんとか……ユーゴさん達、何者なの……」

 何者と言われても困るが。
 腹が減った、さっさと設営しよう。

「ロンはエミリーと一緒にテントを立ててくれ。エミリー、サウナの火入れも頼めるか?」
「了解だよ!」
「オレはすき焼きの準備する」
「さうな? すきやき?」

 すき焼きの準備はすぐに終わるからいい。

「よし、オレが火入れするよ。エミリーは着替えときな」
「ロンは? 水着ないけど?」
「え? 何するの?」
「ロン、風呂に入れてやる。恥ずかしくなけりゃ下着脱いで洗っとけ」
「まぁ恥ずかしくはないけど……」

 皆でテントサウナに入る。

「あつー!! 何これ!」
「いっぱい汗かけよー!」

 
 汗だくで湖にダイブ。

「あぁ、気持ちいい……」
「一週間の汚れ落としとけよ」
「その感動、分かるよ」

 休憩だ。
 ユーゴは川辺の岩に座る、今日は我慢だ。

「何これ……頭がフワフワする……」
「ヤバいでしょ。ロンもサウナの虜だね!」

 
 数セットしてすき焼きだ。

「すごくいい匂いだ」
「生卵につけて食ってみろ」
「生卵に……? ズルッ……。ウマー! なにこれ!」
「皆のすき焼きの反応、面白いよね。美味しいもんこれ」

 ロンは大満足だ。
 初めての生レバーは苦手だったらしいが。

 ユーゴとエミリーも大吟醸で満足だ。
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