92 / 241
第三章 大陸冒険編
リーベン島に帰省
しおりを挟む王都を出て三日、フドウの里に到着した。
「まずは里長の所に行くか」
「そうだね!」
里の中心部、里長の屋敷に飛んだ。
門番は顔見知りだ。
「あれ? ユーゴ、おかえり」
「ただいま! 里長は?」
「あぁ、執務室だと思うよ」
執務室に向かう。
コンコン
「入れ」
「失礼します。帰りました、里長」
「お主ら……あれだけ盛大に送り出したのに、一月もせず帰ってくるとはの……」
「いや……ほんと、そうですよね……」
「ユーゴ、右眼はどうした?」
「朝起きたらこうなってたんです」
里長に夢の話をした。
「神眼とな。夢の話を鵜呑みにするのもどうかとは思うが。眼の色が変わっておるのだ、無視はできぬな……で、何か用で戻ったのであろう?」
「あぁ、オレたち仙神国に行ってから、仙王様の孫と一緒に旅してるんです。仙族の戦闘法を練気術に組み込んだところ、とんでもなく戦闘能力が上がりました。仙族も練気術を取り込むと、同様の効果を得ました」
「ほう」
「そして、王都で魔族と出会い、魔族の戦闘法を教わり更に戦闘力が増しました。それを里の皆に伝えれば、里の戦力の増強になると思い戻りました」
「なるほどの。では見せてもらおうか」
里長と共に庭に出る。
一年間修行してた場所だ、まだ一か月程前の事だが、懐かしく感じる。
「まず、仙術の基本は呼吸法にあります」
自然エネルギーの取り込み方を里長に説明した。
「なるほどの。この風エネルギーとやらで浮遊するわけか。練気に混ぜるとすれば、量を間違えてはならんようだ」
そう言って、里長は普通に浮いた。
皆これで吹き飛ぶのがお約束だが、そうはならなかった。
――やっぱり凄いなこの人は……。
「遁術に自然エネルギーを混ぜると、更に効果が段違いに上がります」
里長は右手を見ている。
自然エネルギーを遁術に込めているんだろう。
「ほう、これは凄いな。こんな所で放つわけにもいかぬ。ナグモ山へ行こう」
そのまま山へ飛んだ。里長はもう浮遊術を我が物にしている。
流石は龍王、センスの塊だ。
「浮遊術は素晴らしいな。しかし、練気でなければここまでの速度は出まい」
「そうですね、仙族もそう言ってました」
蜘蛛から牛の頭が生えた魔物、懐かしのギュウキだ。
「よし、自然の風エネルギーを風遁に取り込んでみよう」
『風遁 風刃』
牛鬼が一瞬で真っ二つになった。
全く見えなかった……。
「ほう、これは素晴らしい」
「次は魔族の戦闘法です。練気のボールに風遁を詰め込んで圧縮します。それを開放です」
「圧縮からの開放か。なるほど」
里長は練気のボールに風遁を一気に詰め込んだ。それを前方の牛鬼に放った。
『風遁 鎌鼬』
ユーゴ達とはレベルが違う。
無数の風の刃が、一瞬で牛鬼を斬り刻んだ。
「すっごいね……」
「なるほどの、種族間の戦闘法を混ぜるとこうも術の威力が上がるのか。これは良い」
「次は、この全てを用いた魔法剣です。刀に纏った練気を一つのボールだと思ってください」
「そうか、刀身と纏った練気の間に遁術を詰め込むのだな」
里長の倶利伽羅刀が風遁を纏った。
『剣技 剣風』
途轍もない斬撃が木々を斬り倒し、岩山に突き刺さり、岩山の上部が落ちてきた。
「おぉ……ユーゴよ、これは恐ろしい剣技を作ったものだな……」
「里長のはレベルが違いますねやっぱり……」
「よし、屋敷に戻り、皆を集めよう」
屋敷に戻り、里長は幹部を夕方に修練場に集める手配をした。
「もう一つ、お使いを頼まれてきたんです。仙王様からです」
通話システムの通信機だ。
里長に理解してもらえるかが心配ではある。
「何だこれは?」
「離れたところにいる人と会話ができる機械です。ウェザブール王都の女王が開発したそうです」
「ほう、これをなぜ儂に?」
「仙王様が、龍族と連絡を取りやすくするために渡しておけと言われ、持ってきました」
里長だけでは心配だ。娘のリーファに来てもらった。軽く仙術の基礎を教え、通信機の概要を説明した。
「なるほどね、私は理解したよ」
「ふむ、よく分からぬ」
「仙王様と通話してみますか」
使い方を理解したリーファが、仙神国に通信を飛ばした。
「はい、仙神国です」
「こちらはリーベン島の龍王です。仙王様に取次ぎお願いします」
「少々お待ち下さい」
リーファが通話機を里長に渡した。
「ラファエロだが」
「おぉ、仙王か。儂だ」
「龍王か、久しいな。これで何かあれば連絡が取れるということだな」
「うむ、儂はよく使い方が分からぬが、娘が理解した」
「心配するな。我も分からん」
――心配するなってなんだよ。
「ユーゴがそちらにおるのだな? ジュリアとトーマスはもうこちらについておる」
「そうですか。オレもまた行きますね、仙王様」
「あぁ、待っている。ではまたな、龍王」
「うむ、何かあれば連絡する」
通信が切れた。
「凄いなこの機械は」
「はい、天才ですよね」
これで仙族、龍族、人族が繋がった。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
ショボい人生からの異世界転移〜チートスキルが10円玉召喚ってどういうこと!?〜
後藤権左ェ門
ファンタジー
ショボい人生からの異世界転移、略して『ショボ転』
生まれた時からショボい人生を歩んできた子甫 伊人(しほ いひと)は不慮の事故で亡くなり異世界転移することに。
死因はうめぇ棒? チートスキルは10円玉召喚? いくらなんでもショボ過ぎない?
異世界転移でショボい人生は変わるのか!?
ショボい人生からの異世界転移、開幕!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?
雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。
特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。
その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった!
吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか?
※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる