【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~

久悟

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第三章 大陸冒険編

別行動

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 次の日の朝。
 目を覚ますと、ユーゴの腕の中でエマはすでに起きていた。
 
「おはよう」
「次はいつここに来るの?」
「んー分からないな……特に予定を決めて動いてる訳じゃないからな。でも数日後には寄るよ。泊まるかどうかは分からないけど」
「そっか。また会えるの楽しみにしとくね」
「うん、オレも」

 エマは着替えて帰っていった。
 朝食にしよう。

 三人は円卓について談笑していた。

「おはよう」
「ユーゴ! おはよう! 用事は終わったの?」
「あぁ、とりあえずはいい方向に進んだよ」
「三人は何してたんだ?」
「三人でカジノだよ!」
「トーマスも行ったのか」
「うん、結構楽しかったね」

 ――トーマスがカジノ……ハマらないといいけど……。

「ここからは二手に分かれるんだな」
「あ、テントサウナ同じやつもう一セット買っといたよ!」
「あぁ、ありがとう。多分今から出ると一泊は野営だもんな」
「あ、ユーゴ、醤油と味噌と吟醸酒を買っといてよ」
「あぁ、分かった。日持ちするもんな、大量に買っとく」

 ホテルをチェックアウトした。
 荷物は異空間の中だ、用意するものはない。軽装で外に出た。

「じゃ、気を付けてな!」
「うん、ユーゴとエミリーも!」

 トーマスとジュリアは南の仙神国に。
 ユーゴとエミリーは、南東のルナポートからリーベン島を目指す。

「よし、エミリー! 全速力で行くぞ!」
「了解! スレイプニルがいれば久しぶりに馬刺しだね!」
「いいねぇ。そうしよう」

 全力の浮遊術で移動する。

「スレイプニル発見!」

 練気銃でスレイプニルの頭を撃ち抜いた。

「じゃあ、処理するかな」
「ユニコーンがいればいいのにね」
「あぁ、向こうの二人はペガサスとユニコーンの馬刺しだな」

 処理した馬肉を異空間に収納し、移動を再開する。

 ――空間魔法……最高。


 日が沈む前に、いい野営地を見つけた。
 緩やかに流れる川のほとりだ。

「よし、エミリーはサウナと就寝用のテントの設営を頼む」
「了解!」

 エミリーが野菜を買ってくれている。馬肉のポトフにしよう。

 ユーゴはトーマスのレシピをノートにまとめている。切り分けた具材を鍋に放り込む。
 あとは火を入れるだけだ。

「火入れあっつい! 準備できたよ!」

 エミリーはもう水着になっている。
 二人で中に入り、焼け石に水魔法をゆっくりと回し掛けた。
 
『ジョワァァァ……』

「あぁ……いいねぇ……」

 ユーゴは大きなタオルを振り回し、エミリーに全力のアウフグースをお見舞いした。

「あっつー!!!」
「熱風エンターテインメント! まだまだ行くぞー!」

『ジョワァァァ……』

「ギャァ――! 火傷するって!!」

 たっぷり汗をかいて湖にダイブする。

 ――あぁ、すばらしい……。
 
 リクライニングチェアで休憩だ。
 暫しの沈黙。ユーゴが話しかけた。

「なぁ、エミリー。お母さんとイリアナさん、良かったな」
「うん。でも、親族の半分は死んじゃった。アレクサンドは許さないよ」
「そうだな。父さんとマモンは魔力障害の可能性があるけど、アレクサンドはそうじゃない」
「うん、私達は強くなった。ぶっ飛ばすよ」

 アレクサンドが全ての元凶な気さえしてくる。全ての事に通ずるが、憶測で物事を考えてはいけない。が、アレクサンドのしてきた事は紛れもない事実だ。
 
 綺麗なシャツに袖を通し、馬肉料理を食べて食後の紅茶を飲んでいる。

「どうだろう。Cランクくらいの魔物しかいないけど、見張りはいるんだろうか?」
「要らないんじゃない? 襲われたらさすがに起きるでしょ」
「そうだな。じゃ、ゆっくり寝るか。テント一つしか立ててないけど?」
「いいんじゃない? 一緒に寝れば」

 少し戸惑ったが、一緒にテントに入った。
 エミリーに発情はしないはずだと自分に言い聞かせる。

「じゃ、おやすみ!」
「あぁ、ゆっくり休もう。おやすみ」

 
 ◇◇◇


 朝だ。
 結局魔物に襲われることもなく朝を迎えた。
 目を開けるとエミリーがユーゴに抱きついている。起こさないようにそーっと……エミリーは更にユーゴを抱き寄せる。
 逃げられない。

「ん……」
「起きたか?」
「ん……? あ! ごめん、ユーゴにも抱きついちゃったんだね……」
「にも?」
「私、何かを抱いて寝る癖があるんだよね……いつもジュリアに抱きついて寝てた」

 女の子に抱きつかれるのは悪い気はしない。大歓迎だ。
 

 レトルコメルスから持ってきたパンを食べて、移動を再開した。

 昼過ぎにはルナポートに着いた。

「最初は十日以上かかったのにな。オレ達も成長したもんだな」
「んだね、ここを出たときよりも早くなったね」

 昼食は魚料理を楽しみ、リーベン島へ向かった。
 
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