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第三章 大陸冒険編

違和感

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 昼食をササッと済ませて、依頼場所に向かった。禍々しい魔力が辺りに充満している。

「強化術は大丈夫か? ジュリアは今から剣に練気と術を込めておいたほうがいいな」
「了解だ」
「僕が攻撃を受けてる間に足止め頼むよ」

「よし、行くぞ!」

 禍々しい魔力の方に飛んでいく。
 いた、上半身は大鷲、下半身は馬の魔物。
 ヒッポグリフだ。

『守護術 堅牢・陣』

 もうトーマスの守護術は、SSの魔物程度ならなんの問題もない。

「ダメだ! 地に降りてくる気配がない!」

 地上ではないと、足止めの効果が格段に落ちる。これでは止められない。

「風魔法来るぞ!」

 ヒッポグリフが風魔法を放った。
 
 ――ん……? なんだ?
 
 周りの動きが遅い。
 魔法がゆっくりと向かってくる。

 と思えばすぐに戻った。

 ――何だ今のは……まぁいい、考えるのは後だ。
 
「ジュリア、オレが中距離で相手する!」
「あぁ、分かった!」

 風魔法には火遁だ。

『火遁 火炎龍』

 赤黒い炎が、ヒッポグリフを何度も襲う。

「下に逃げる! 今だ!」
 
『魔法剣技 流刀乱舞りゅうとうらんぶ!』

 地上で待ち構えていたジュリアが、ヒッポグリフに斬り掛かった。持ち方の改善で剣の振りが変わり、剣技で流れるようにヒッポグリフを斬り刻んだ。
 
「空飛ぶ魔物は厄介だな」
「こないだのグリフォンは、たまたま地上にいてやりやすかったね」
 
 そう話すユーゴとトーマスを他所に、ジュリアがボーっと立ちすくんでいる。

「ジュリア、どうした?」
「あぁ、いや。気のせいかもしれないが、ヒッポグリフの動く方向が視えた気がしたんだ」
「一歩先が読めたってこと? ユーゴの龍眼の能力みたいだね」
「気のせいかもしれない。でも、だいぶ魔法剣技をものにできたよ!」

 ユーゴも周りが遅くなった様に感じたのは気のせいだったのだろうか。いや、魔法が減速して襲ってくる事などない。何かしらの能力を得た可能性が高い。
 

 ヒッポグリフの体皮、蹄など、依頼品を処理し火葬する。
 上質な魔晶石が四つ出てきた。

「んー、フェンリルの魔晶石には敵わないね。売ろう」
「そうか。じゃ、帰ろうか!」


 ギルドでワイバーン十体の依頼達成をカウンターのおじさんに報告する。

「またあんたらか……凄いな……1200万ブールだよ。そっちのお嬢ちゃんだけ手渡しだな?」

 もう覚えられている。ワイバーンはずっと売れ残っていた依頼だ。受付が覚えているのも当然なのかもしれない。

「はい、あとは振込で」
「はいよ、400万だ」

 貴族街にヒッポグリフの討伐報告に行く。600万ブールになった。全部で一人600万ブールの荒稼ぎ。ユーゴ達はもう一生働かなくても良い程のお金を持っている。

「大儲けだな。エミリーには内緒だな、これは」
「さて、礼服を取りに行って王の城にお世話になるか」


 ◇◇◇
 

 三人でオーベルジュの城に到着した。
 門番に話を通し中に入れてもらった。

「使用人のリナでございます。何なりとお申し付けくださいませ。お部屋にご案内致します。大浴場の場所もご案内致しますね」

 ユーゴ達にメイドが付いた。そんな身分ではない二人は、恐縮し挨拶を返した。

「わざわざありがとうございます……」

 石造りの豪華な城だ。
 二度目の訪問だが、前回とは違う塔に案内された。客のために作られたのだろうか。
 豪華な部屋を一人一室あてがわれた。かなりの高待遇だ。

 広い部屋を見渡すと、豪華な家具やベッド、高価そうな絵画が飾ってある。さすがは王城の客室だ。
 今日はかなり汗をかいた、風呂に行こう。ドアを開けるとトーマスもちょうど出てきた。

「あぁ、ちょうどよかった、行こうか」
「王城の風呂はどんなのだろう、楽しみだな」

 もう脱衣所から広い。
 二人だけかと思いきや、先客が一人。

「あぁ、お客さんが他にもか。そりゃそうか」

 入ってみると、間仕切られたシャワーが数個。奥の扉の外は露天風呂だ、素晴らしい。
 まずはシャワーでしっかり汗を流す。

「よし、露天風呂に行こうか」
「王都が一望できそうだね」

 ドアを開けると、湯けむりの奥に先客が湯に足を浸けて座っている。

「こんにちは、お邪魔しますね」

 湯船に浸かる。
 夕暮れ時の空を見上げながら大きく息を吐く。素晴らしい湯加減だ。
 
「おう! 遅かったな二人共!」

 ――へ……? この声は……。

「え……ジュリア!? 何で!?」

 ジュリアが素っ裸で脚を組んで座っている。

「え、オレら間違えた……?」
「いや、仙神国もそうだけど、王族は混浴が当たり前だぞ? 他はだいたい男女別だもんな。お前らは初めてか?」
「そうなの……? というか、胸隠せよジュリア!」
「何で隠す必要がある? 恥ずかしいもんじゃないだろ」

 ジュリアの美しい裸体が眩しい。
 ユーゴの股間はいきり立っている。湯から出ることはできない。
 トーマスは……同じ状態のようだ。

 少し喋って、ジュリアはザブンと湯に浸かった。

「サウナにハマってしまったからな。少し物足りないが、湯で温まって上がって休憩もなかなかいいな。お前ら大丈夫か? のぼせるぞ?」
「いや……オレはまだ大丈夫だ……トーマスは大丈夫か……?」
「え!? あぁ……大丈夫だ……」
「そうか、我慢強いんだな。アタシはサウナもすぐ出てしまうよ」

 ようやくユーゴの股間が落ち着いてきた。

「あっつー! やっぱりアタシは我慢が足りないな!」

 ジュリアは飛び出て、露天風呂の周りにM字開脚で座った。

「ジュリアさん……中身が……見えてますよ……」
 
 ムスコに元気を再注入させられた。
 これ以上は流石にのぼせてしまう。

「よし、アタシはそろそろ上がるよ。食事用意してくれてるみたいだ、また後でな!」

 ジュリアは、キュッと上がったヒップを振って出ていった。
 

「あっつー!!」

 ジュリアが出ていったのを見届けた後、二人で湯船から飛び出て大の字で倒れ込んだ。
 ユーゴもトーマスもビンビンだ。

「オレ達はまだ若いな……」
「あぁ、すぐに反応してしまう……少し休憩しよう……」

 すると、またドアが空いた。

「言い忘れたよ。エミリーがな……」

「「あぁー!!」」
「お前ら……何をおっ勃ててるんだ……?」
「オレ達はまだ若いんだよ……これが正常だ……」
「ジュリアは自分の美しさを分かってないよ……誰でもこうなる……」

「ウブな奴らだな! ここに連れてくればエミリーのも見れるぞ! キャハハ!」

 サウナの水着で見慣れた気でいたが、ジュリアの裸体の美しさはレベルが違った。
 しかし、いいものが見れた。
 ありがとう、王族の風呂。
 
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