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第三章 大陸冒険編

相乗効果

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 練気のボールに、一気に風の魔力を注ぎ込んだ。一瞬で相当量入れたがまだまだ入りそうだ。

『風魔法 風殺ウインドキル

 目の前の岩山に風の刃が突き刺さる。
 
「凄いわね練気術……普通ならさっきので割れてるわ。あと、魔力の込め方一つで効果が変わるの。さっき練気術を教えてもらって分かったわ。私達も魔力で同じようなことしてる。なるほどね、アスタロス様は知らず知らずに練気術と同じことしてたのかもね」
「魔力を練りながら注ぐってことですか?」
「そうね、言葉にするならそれが正しいわ」

 なるほど、練気術を習得した時になぜ魔力を練ってみようと思わなかったのだろうか。
 いや、龍族は魔力は放出するときにしか使っていない。何かに溜め込むなどという事が無かったのだろう。

「三種族の戦闘法を混ぜてみます。あのロック鳥に放ってみよう。基本は風遁だ」

 練気のボールに、風エネルギーを練り込んだ風遁を一気にボールに練り込む。
 パンパンだが暴発する気配はない。

『風遁 嵐塵!』

 数えきれない程の無数の風の刃が、轟音を上げてロック鳥に襲いかかり、跡形もなく切り刻んだ。

 皆が絶句している。

「とんでもないわね……」
「あぁ、これに耐えられる奴いるのか……?」
「術の圧縮。色々使えそうだね」

 ユーゴが閃き、皆に提案する。

「なぁ、これを刀に纏えないかな?」
「いや、さすがにこのボールを纏うのは無理だろうね」
「いや、刀に練気をまとってる状態を、一つのボールだと思ってくれ」

 ユーゴの説明にトーマスは頭にハテナを浮かべたが、少し考え理解した。
 
「……? あぁ、なるほどね、刀身と纏った練気の間に遁術を圧縮して入れるってことだね?」
「あぁ、魔法剣と剣技の融合だ。風でやってみる。的は……あの山にしようか」

 刀に練気を纏い、刀身と練気の間に風エネルギーを込めた風遁を一気に注ぎ込む。
 ここまでは一瞬、実践でも使えそうだ。
 あとはこの思い付き技の威力だ。魔法剣技と名付けよう。

『魔法剣技 剣風!』

 山肌に向け、横薙ぎで剣風を放った。
 放った瞬間分かった、今までとはレベルが違う。

 剣風はどんどん大きくなり、山肌に大きな亀裂を入れた。そして、地鳴りと共に山が滑って落ちてきた。

「何てこと……山を……斬った……」
「すっご……」
「おい、ユーゴ……お前すごい技作ったぞ……」

 技を放ったユーゴはもちろん、他の四人も言葉を失った。

「おいおい……まだ基本の剣風だぞ……遁術を刀に纏うまではしてみたんだ。結果は今使っていない事を見たら分かる事だけど、これは凄いな……オレの戦い方はこれで決まった。多すぎる魔力を存分に使える」
「一周回って魔法剣士に戻ったね、ユーゴ」

 術を圧縮するという発想はなかった。 
 ジュリアは仙術を圧縮してロック鳥を爆発させていたし、モレクは練気のボールに自然エネルギーを組み込んだ魔力を圧縮して、更に魔法を強力にした。

「教えるつもりが、逆に私の方が利を得てしまったわね……」
「いや、アタシたちの技もパワーアップした。これはすごいぞ」

 皆の攻撃力は大幅に増した。

「モレクさん、魔族の守護術や回復術はどんな感じですか?」
「あぁ、魔族の戦闘法はほとんど魔力を使うの。魔力が多いからね。その代わり気力が少ないの、だからこの練気術は大助かりだわ。魔族の守護術は魔力の障壁よ。どう考えても他の種族の守護術の方が強力だわ。回復術もそう」
 
「魔族の戦闘法、守護術や治療術、強化術には使えないかなぁ?」
「守護術はほとんど練気だからね。難しいかな」
「そっか。治療術を圧縮して、対象に放ってみようかな? 回復魔力も練ってみよう。ペガサスさん、ちょっと痛いけどごめんよ」

 エミリーは、少し先のペガサスに風遁を放ち瀕死の怪我をさせた。

「練気のボールに、練った回復魔力と治癒エネルギーの練気を詰め込むよ」

『治療術 再生!』

 輝くシャワーがペガサスを包み込み、瀕死の怪我を跡形もなく治療した。

「おぉ、キレイに治った!」
「どう? 使えそう?」
「うん、治癒効果が圧縮で相当上がってる! 距離があっても治せるし、大人数の治療にも使えるね。ただ、敵も治しちゃいそうだけど……あとこれ、治せるの傷だけじゃなさそう」 
「例えば?」
 
「状態異常も治せるかもしれない。麻痺とか、石化とか。それくらいの効果を感じるよ」
「魔力障害は流石に無理か?」
「わからないけどね、可能性はあるよ。研究してみよう。これは再生じゃないね、何でも治せそう。名前は『快癒かいゆ』にしよう!」
 
「SSランクの魔物に放ってみたらどうかしら? あの凶暴性と漏れ出た魔力は、魔力障害と意識障害にかかってる状態よ。あれが大人しくなったら効き目があると見ていいわね」
「なるほど、グリフォンのとこに行きますか。少し離れたとこですよね」
「そうね、その前にお腹すかない? お昼にしましょうよ」

 Aランクの魔物が彷徨く中、皆で昼食を取った。

「モレクさん、鬼族の戦闘法は知ってますか?」
「えぇ、魔族と鬼族はずっと争ってたからね。生まれ持ったパワーと体力をさらに強化して戦うわ。そして、厄介な事に魔法に強いの。魔族の天敵だったわ」
「その強化術は鬼族特有の術ですか?」
「そうね、パーティに参加した時に聞いたけど、あれは私達が教わってできるものじゃないわね。鬼族の異常な身体能力ありきよ」
「魔法に強いのか。だから龍族は刀で斬る方向にシフトしたのかもね」
「なるほどな。龍族は鬼族の天敵なのかもな」

 昼食を済ませ、午後からはSSの魔物に会いに行く。
 
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