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第三章 大陸冒険編
予定変更
しおりを挟む次の日の朝。
ここの朝食もビュッフェ形式だ。ほとんどのホテルはそうなのだろうが、問題は質だ。昨日のソーセージもある、素晴らしい。
魔力で気付いてはいたが、トーマスと向かい合って座った。
「おはよう、ここのホテルもいいなぁ」
「あぁ、おはよう。ソーセージは朝食にもいいね」
トーマスの皿には、まだソーセージが五本残っている。ハマっているらしい。
基本的に大陸はパン食だ。
ユーゴも生まれた頃からそうだが、一年間の島生活ですっかり米好きになった。卵かけご飯が恋しいが、スクランブルエッグとパンで我慢だ。
少し食べ進めると、エミリーとジュリアが起きてきた。
「おはよー! 昨日は楽しかった?」
「二人共おはよう。昨日は進展があった。とりあえず食べながら話そうか」
二人は食事を皿に盛ってきて、隣のテーブルに向かい合って座った。
エミリーは割りとキレイに盛り付けるが、ジュリアは……この辺は性格だ。
「ソーセージもあったぞ。これハマってるんだよ。パンにも合うんだな」
「うん、私もいっぱい取ってきた!」
ここの朝食も、皆が大満足だ。
「昨日の話だけど、あの魔人が働いていた店を見つけたんだ」
「え!? 行ってきたの?」
「あぁ、マモンと一緒に魔都から出てきた人から話を聞けた」
二人にモレクの話をかいつまんで話した。
「なるほど。魔力障害の事なら、奥様からもらった医学書に書いてあったね。シュエンさんがそうなってる可能性があるのか……ちょっと良く調べてみるよ」
「トーマスに言われてるだろうけど、ユーゴ、憶測で物を考えるなよ? 少なくとも、ミックス・ブラッドとして生まれる事をお前が選んだ訳じゃない」
「あぁ、分かってる。そのために昨日は気分転換に付き合ってもらった」
「そうか、ならいい」
ジュリアはそう言ってユーゴに釘を刺すと、目の前のソーセージにフォークを刺して頬張った。
「マモンとアレクサンドが王都に戻ってきてる可能性は低いよね……」
「モレクさんの話を聞く限りそうかもな。一応噂は聞き回ろう」
マモンは恩人のモレクに会いにくいはずだ。王都は広いとはいえ、帰ってくる可能性は低そうだ。
「それでだ、モレクさんがオレ達に魔族の戦闘法を教えてくれる」
「え? じゃあの三人に対抗できる力が手に入るかもしれないんだね!」
「ほー、アタシらはまだ強くなれるんだな」
「とりあえずは王に会うのが先だ。数日後に伺いますと言って別れた。住所も聞いている」
「いや、今から王のところに行って、すぐに会える訳じゃないぞ?」
――あ……そうだよな。
「今から二人の城に手紙を持って行って、明日以降の日程で返事をもらう予定だ。今日は何するか相談しようとしてたところだ」
当然だ。
相手は王だ、すぐに会える訳が無い。
「ごめん、そうだよな。すごい人に会いすぎて麻痺してた……」
「じゃ、アタシがひとっ飛びして二つの城に手紙渡してくるよ」
「ジュリア、これも一緒に渡して。このホテルの名前と部屋番号だ」
「あぁ、これで連絡をこのホテルに貰えばいいのか、考えてなかった。じゃ、明日以降で取り次いでもらうよ」
食事を終え、ジュリアは文字通り飛んでいった。
「じゃあ、ジュリアが帰り次第モレクさんとこに行ってみるか。いつでも良いとは言ってたけど、大丈夫かな……?」
「無理なら後日にお願いしよう」
少しすると、ジュリアが帰ってきた。
「ただいま! 門番がどっちも顔見知りで良かったよ。話がスムーズだった」
「おかえり! 今からモレクさんのとこに行くんだって!」
ホテルを出て、住所を書いた紙の通りに進む。着いた場所は立派な集合住宅の一室。ショーパブ・リバティの近くだった。
夜には賑わう繁華街も、朝は静かなものだ。朝まで飲んでいたであろう人たちがチラホラいる程度だ。
「ここだな」
呼び鈴を鳴らす。
少しすると、渋い男前の魔族が出てきた。
「あれ……まちがえました……?」
「おはようユーゴ君。いいえ、間違えてないわよ。スッピンでごめんね」
スッピンの方が良いような気がするが……いや、それはユーゴの価値観だ。
「数日後に伺いますと言いながら、すみません朝から」
「いいえ、いいわよ。朝ごはん済ませて何しようか思案してたとこだから」
「もし、ご用事が無ければ、魔族の戦闘法を指南していただきたいなと思いまして」
「ええ、いいわよ。準備するから、そうね……南のギルドで待っててくれる?」
「分かりました! ギルドはすぐ分かりますか?」
「あぁ、さっき城行くときに見たよ。アタシが連れて行く」
「じゃ、準備するわね」
裏路地を抜け、城の方へ向けてメインストリートを進む。
「モレクさんは、マモンみたいな喋り方なんだね」
「あぁ、冒険野郎で聞いてあの人の店に行ったんだ。マモンみたいな人がいっぱいいる店だったよ。トーマスは苦手みたいだけど、エミリーやジュリアは楽しめるんじゃないか?」
カイトシールドを枠に、クロスした剣に獅子。どこのギルドよりも巨大なシンボルマークが目に入った。
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