【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~

久悟

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第三章 大陸冒険編

ウェザブール王都

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 次の日の夕方、ウェザブール王都に着いた。

 レトルコメルスよりも厳重に囲われた都市だ。豪華な門には、とんでもない列が出来ている。やはり王が住む場所だけあって、検問も厳しく行われているようだ。
 
 ユーゴ達はいつも通り通行手形所持者用の通路を通る。
 彼等は若い、ジュリアも見た目は三人とそう変わらない。SSランクのカードを見せると驚かれる。

 冒険者カードで通行手形所持者用通路を通るには、Aランク以上でなければならない。低ランクカードは依頼品を金で買えるからだ。高ランクの依頼品も金で買えるが、相当高い。
 Aランク以上のカードを所持している者は、相応の実力者か金持ちという事になる。
 ということで、SSランク所持者の四人は、とんでもない実力者という訳だ。
 ちなみに、冒険者カードは偽造ができない。詳細は知らないが、多分魔力が関係しているんだろう。
 
 
 ウェザブール王都は、仙神国に似た町並みだが自然が少ない。レトルコメルスとはまた違った大都会だ。
 人族だけではなく魔族も見かける。しかし、化粧はしていない。すごく背の高い角のある人も見かけたが恐らくあれが鬼族だろう。
 鬼人が暴れて以降、数百年の平和だ。人族の世界に興味がある他種族も移住しているのだろうか。

「私は12年ぶりかな。やっぱりよく覚えてないな」
「アタシはエミリーと出てからは数回しか来てないな」
「とりあえず、いいホテル探そうか」
「とりあえずは一週間くらい宿泊予約しようか?」
「そうだね、ご飯食べながら相談しよう」

 王都は見事に聳え立つ二つの城の周りを囲むように発展した街だ。東西南北の四つの門から、二つの城に向けて街道が整備されている。その街道に沿って、城に近づくほど豪華な建物が増えていく。
 門に近い場所でも街道沿いは比較的綺麗な建物が多いが、少し路地に入ると華やかな街道沿いとは違った印象を受けた。
 それでもユーゴにとっては大都会だ。路地裏の方が合っているかもしれない。

「とりあえず、ホテルは良いとこに泊まりたいな。城に近い場所に泊まろうよ」
「そうだな。ベッドと布団はフカフカな方がいい」

 ただ、ホテルの数がすごい。
 選べずにいるととある店が目に入った。

「お、いい感じの酒場があるな」
「本当だ、見たことあるような店構えだけど」
「そりゃ見たことあるはずだよ。店名が『冒険野郎』だ」
「ほー! 王国内に店舗広げてるんだね!」

 ならホテルは決まった、冒険野郎の道向いのこのホテルにしよう。サウナがあるかどうかの確認が必要だ。

「うん、サウナはあるみたいだ。セキュリティも当然しっかりしてるな。でも、武具を預かっておいてください……」
「トラウマだね、ユーゴ……」
「じゃ、お風呂入って酒場に集合しようか」
「また後でね!」


 脱衣所で服を脱ぎ捨て、洗い場で汗を流す。 
 かなり広い浴場だ。サウナと水風呂が温度別に三種類ずつある。一番熱いサウナに入ってみた。

「うぉぉ、これは熱いな……レベルが違うぞ……でも、いつもよりドライだな。水かけていいのか?」

 少しすると、一礼して誰かが入ってきた。

「皆様、本日担当させていただきますボブです。熱風エンターテイメントをお楽しみくださいませ」

 ――なんだ? 何が始まる?

 ボブは大量の焼石に、水を回しかけた。

『ジョワァァァ……』

「あっつ……温度が高い分熱いな……」
「これは今までで一番熱いね……」

 するとボブは大きなタオルを振り回し、客に向けて仰ぎ始めた。

「うおぉぉぉ! アッチィィー!」
「ダメダメ! 火傷するってこれ!」

 熱風エンターテイナーボブ、二つ名に偽り無し。これは水風呂が凄そうだ。

「皆様、おかわりはよろしいですか?」

 ――なんだと……?
 
 ボブからの挑戦だ。SSランクの名がすたる、受けて立とう。

「よろしくお願いします」

『ジョワァァァ……』

 ボブがタオルを振り回して、さっきより強く仰いできた。

「アッチィィー!!」
「ヤバイヤバイヤバイ!!」

 二人はサウナ室から飛び出て、一番冷たい水風呂に飛び込んだ。

「ヒャアァァ! 冷たっ!」

 一気に火照った身体が冷やされる。冷たすぎるのか、徐々に痛みを伴ってきた為、一つ隣の水風呂に飛び込んだ。

「はぁ……体が大パニックだな……完敗だよ、ボブ」
「今までで一番水風呂が気持ちいい……」

 このあとの休憩は過去イチだった。

 ――凄かったな……熱風エンターテイメント……。

 さすが王の住まう都のサウナだ、素晴らしかった。

「いやぁ、凄かったな……ビールが欲しい」
「酒場までの導線は今まで通りだね。向かおうか」

 
 レトルコメルスにもあった大衆酒場『冒険野郎』はここでも皆を楽しませてくれそうだ。
 中に入ると、エミリーとシュリアはすでにビールを飲み干していた。

 エミリーはいつも通りだが、ジュリアもオシャレに着飾っている。トーマスからのプレゼントだ、本当に良く似合っている。
 暑くて大股を開いていることに目を瞑れば。

「お先に頂いてるよ。アタシ達の身体は今、パニック状態だよ……」
「うん、熱風エンターテイナーのミアにやられたね……」
「そっちもか……こっちはボブにやられた……早くビールをくれ……」

 ビールで火照った体を冷やす。五臓六腑に染み渡るという言葉を、ここまで体感した事は無かったかもしれない。

「ほぅ、こっちの冒険野郎もまたいいな」
「メニューが一緒な訳じゃないんだね!」

 食事と酒を楽しみながら、この先一週間の予定を立てよう。
 
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