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第三章 大陸冒険編

プライベートな事

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 久しぶりに昼寝をしたが、寝すぎて身体がダルい。夕飯にはまだ少し早いか、軽くストレッチをして部屋を出た。
 
 ――トーマスいるかな。あぁ、魔力を感じるな。
 
 トーマスの部屋をノックする。

「ただいま、トーマスもランチ行ってたのか?」
「うん、ちょっと前に帰ってきたよ」
「どうだった?」
「うん、僕ジェニーちゃんの事、最初はバカな子だなぁって思ってたんだ。でも、あの子みたいにマイペースでプラス思考な子と一緒にいたら、すごく癒やされるんだよね……」
「そうか、なら良かった。いい子だもんなあの子」
「エマちゃんと何かあったの?」
「いや、すごく楽しかった。でもな……」

 少し考えたが、ストレートにそのままをトーマスに伝えた。

「実はな、エマの姓が……ベルフォールらしいんだよ」
「ベルフォール?」

 トーマスは少し止まった。

「ベルフォール!? え!?」
「うんそう、王家の姓だ」
「え!? 平民が名乗れる姓じゃないよね? てことは……」
「うん、そうなんだよ。両親の事は覚えてないらしいんだ。王都から両親がここに移住して、何かがあったんだろうな。小さい頃から娼館で育ったらしいから」
「王族の子なんだ……でもこの辺であまり名乗らない方が……」
「うん、トーマスも同意見か。オレもそう思ってそう伝えた。でもなぁ……」
「どう伝えようもないもんね……」
 
「……いや、エマは頭のいい子だ、事実を伝えても受け入れて、相応の対応をすると思うんだよなぁ……」
「うん、あの子は頭がいい。そうか……伝えても良いのかもね。その方があの子の今後に良いのかもしれない。別に誰に追われてる訳でもないんだ」
「トーマスも悩むか……相談してよかった。ちょっと考えみる」
「ユーゴは今晩どうするの?」
「オレは晩飯食って、エマの店行こうかなって思ってる」
「僕も一人でも行こうと思ってたんだ。一緒に行く?」
「おう、そう思ってエマにはトーマスと一緒に行くかもって言っといた」
「決まりだね、夜は冒険野郎だね」
「もちろん、あの店は外せない」

 いい時間だ、冒険野郎に向かった。と言っても道向かいだが。

 もう、入るだけで落ち着く。
 エミリーとジュリアの魔力を感じる。

 二人の席に同席してビールを注文した。
 
「お前らもか。考える事は一緒だな」
「あ、二人共! 楽しんでる?」
「うん、この店は外せないね」

 ビールをグイッと飲む。
 昼寝でだらけた身体に染み渡る。
 
「おいユーゴ、お前今日、競馬場辺りにいたよな?」
「あぁいたよ、あの辺のパスタ屋に行ったんだ。二人の魔力は近かったな、気づいてたよ」
「それはいい、なんで魔力を抑えた?」
「え……? そんな事してないよ……?」
「おいおい、魔力を抑えてアタシらを避けただろ。嘘はいけないよ」
「いや……それはプライベートな話なので……」

 ジュリアが鋭い目でユーゴを刺すように見つめる。ユーゴは堪らず目を逸らした。

「まぁいい、アタシが信用できないんだな。分かったよ」
「いや違う! 言うよ、女の子とデートしてたんだ……」
「いや、分かってたよ。なんで嘘ついた?」
「なんか言われそうで……」
「責められるような事してたのか? そうじゃないだろ? 別に責めてる訳じゃない。男だ、そういう事もあるだろう。でも嘘はつくなよ、仲間だろ」
「はい……ごめんなさい……」

 それを聞いて二人は笑い出した。

「ジュリアの言った通りだね!」
「キャハハッ! ユーゴの顔見た!? ごめんよ、からかっただけだ!」

 ――は……?

「ちょっとジュリア、ユーゴのテンション下がってんじゃん。ユーゴ意外と泣き虫なんだからイジメちゃダメだよ?」
「はぁ……おかし……ごめんごめん、あからさまに魔力を内に留めただろ? その先を見たらいい女がいたんだよ。これを問い詰めたら、正直に言うか言わないかをエミリーと賭けてたんだよ!」
「私の負けだ……明日のランチは奢るよ……でもジュリア楽しんで尋問してたじゃん! あれは白状するって! 卑怯だよ!」
「それはあるかもしれんな! 楽しみすぎたよ」

 ――コノヤロゥ……。
 
 しかし、これはあまり言い返さない方がいい。ユーゴは一瞬で練ったプランを実行した。

「嘘はつかないようにします……ごめんなさい……」
「いや、ユーゴ……? 分かればいいんだよ……?」
「いや、オレみたいな奴は、嘘ついて皆に迷惑かけるのがオチだ。すまなかった」
「ちょっと待ってくれユーゴ……アタシの悪ノリだ、悪かったって、あまりしょげるなよ……」
「いや、オレが完全に悪い……二人の叱責は受けるよ……好きなだけ叱ってくれ……」
「いや……頼むから、普通に飲もうよ……? アタシが悪かったって……」

 ――フフッ、勝った。

 徐々に機嫌を戻し、普通に宴会になった。
 ユーゴの勝利だ。

「で、二人のギャンブル運はどうだ?」
「んー、エミリーはボロ負けだが、アタシはチョイ勝ちだな」
「まぁ、私はまだまだお金あるからね! スレイプニルレースでは少し取り戻したよ!」
「今日もカジノに行くの?」
「当たり前だろ! もうディーラーのジェームスの傾向は分かった。今日も勝ちだね」

 ――誰だよジェームス。

「昨日はバーで冒険者達に魔人達の話を聞いたんだ、何年か滞在してたみたいだな」
「うん、カジノでも聞いてみたけどここ一年以上見てないって言ってたね」
「そうか、あの赤髪と金髪は目立つしな。父さんがゴルドホークを出たのが一年と少し前だ、だとしたら既にここを出て出会ってると見るのが自然だな」
「魔都シルヴァニアの方に拠点があるのかな? だとしたら近い王都の方がいい情報があるかもね」

 毎晩の会議は欠かさない。
 ユーゴ達の目的はあくまでも奴ら三人だ。

「よし、ジュリア! 今日もジェームスとの死闘を繰り広げるよ!」
「あぁ、ヤバくなったら最悪色仕掛けだ! 行くよ!」

 似たものコンビだ。
 エミリーはジュリアに育てられたようなものだ。あぁなるのも当然だろう。

「あいつら、当たり前のようにここのお代払わずに行ったな……」
「まぁそこまで高くもないしね。僕たちも行こうか」

 お代を支払い、店を後にした。
 
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