60 / 241
第三章 大陸冒険編
行きつけの店
しおりを挟む「よし、いつものホテルにチェックインして、風呂に入ろう。晩飯は道向かいの酒場でいいか?」
「オッケー!」
「アタシ、外の世界は五年ぶりなんだ! 三泊くらいしてもいいかな!?」
「オレは構わない。ここで魔人達の噂聞いて回るつもりだしな」
「うん、じゃあ四日後どこに向うか酒場で相談しよう」
ホテルを三泊予約し、いつも通り武具をエミリーに渡した。ユーゴのトラウマの為だ。
素手でも十分対応できる。
着替えだけを受け取り風呂に入る。旅の垢を落とし、サウナでサッパリ。服のクリーニングサービスを頼んだ。出来上がり次第部屋に届く。
先日のエスニック料理も良かったが、この街に初めて来たときに入ったこの酒場が一番いい。三人のお気に入りの店だ。ホテルの前というのもいい。
トーマスと二人で入る。二人はまだ来てないようだ。軽くツマミを頼み、ビールで乾杯する。
「プハーッ! サウナ後はやっぱりビールだな!」
「うん、外では冷たいビールは飲めないからね。普通はお酒も飲めないんだろうけど。エミリーのおかげだ」
「ほんと、ジュリアが加わってくれて、更にオレたち強くなれたな」
話しているうちに、女性二人が来た。
「いやぁ、サウナやばいな! テントサウナも良いけど、ここのも良かったよ」
「ジュリア、オマタおっぴろげで椅子に座るんだよ。こっちが恥ずかしくなるよ」
「誰が見るんだよ、女しかいないのにさ。とりあえずビール飲もう! あと、ジャンキーなもん食わせてよ! もう国の上品なコース料理には飽き飽きなんだよ!」
コース料理に飽き飽きなのはわかる気がする。三人はジュリアの為にジャンクなおつまみをオーダーした。
ビールが皆に渡り、ジョッキを目線より上に掲げた。
「では改めて、新たにジュリアを加えて新しい旅立ちだ!」
『カンパーイ!』
ここは大衆酒場『冒険野郎』だ。
ユーゴ達のお気に入りの店。ジュリアもすぐに気に入った。高い料理も美味いが、結局は食べ慣れたものが一番美味い。
「四日後の朝に出かけるとして、どこに向う? ジュリアは十年間でどこ回ったの?」
「ウェザブール王国内は全部行ったよ。街道を北西に進んだら王都だ。南西に進んでも町がある」
「王都か。私の故郷だけど全然覚えてないんだよね。ジュリアに助けられてすぐに出たからさ、知り合いもいないし。王都に行ってみる?」
「そうだね、魔人達の噂が一番集まるのは、ここか王都だろうしね」
「じゃ、決まりだな。四日後の朝、王都に向けて出発しよう」
「了解!」
ジュリアは、ジョッキを傾けながら三人に問いかけた。
「このパーティのリーダーは、ユーゴってことで良いんだな?」
「うん、そうだよ」
「え!? そうなの!? オレそんなつもり無いんだけど……」
「え? 僕はユーゴをリーダーとして動いてるけど?」
「んじゃ、頼むよリーダー!」
「えぇ……やめようってリーダーとか決めるの……」
「まぁ、今まで通りってことで行こうよ」
四人になって初めての酒宴は大盛りあがりだ。ユーゴ達三人も酒に強い方だが、ジュリアはそれ以上だ。飲むペースが違う。
「さてエミリー、カジノの時間だよ」
「そうだね、久々にジュリアと大勝負が出来るんだね」
「あぁ、アタシには100万ブールのあぶく銭があるからね」
彼女にとってのあぶくに当たる銭は相当範囲が広いのだろう。
「「行ってきます!」」
「おい、丸三日あるんだ、考えて使えよ!」
「言われるまでもないね!」
――大丈夫か……?
「オレらは行きつけのバーにでも行きますか」
「だね、今日は変なやつが来ないと良いけど……」
ここからさほど遠くない、エマのバーに向う。
途中、呼び込みに声をかけられるが笑顔で無視だ。もう同じ轍は踏まない。
カランコロン……
「いらっしゃいませ! あ、トーマス君とユーゴ君!」
ジェニーがお出迎えだ。
かなり流行っている、良いことだ。が、二人が座る席は無い。
「多いな、今日は帰ろうか……?」
「あ、ユーゴ君! ちょっと待ってくれる? 席もうすぐ空くから」
少し待つと、空いたカウンターの二席に案内された。客にチラチラとユーゴを見ている。隣に耳打ちする者もいる。
少しするとエマが来た。
「また来てくれたね。飲み物は何にする?」
「ウイスキーの水割りにしようかな」
「僕もそれで」
エマが目の前で水割りを作る。
手慣れたものだ、その奥の胸の谷間も堪らない。
「ユーゴ君、もう有名人だよ。Sランク冒険者を軽くあしらったって。そんな人の行きつけならこの店は安心だって、いっぱい人が来てくれるんだ。ユーゴ君のお陰だよ」
「そうか、逆の評判にならなくて良かった……でも、エマとゆっくり飲めないのは残念だな」
「今回はどれくらいここに居るの?」
「四日後に出発する」
「明日ランチに付き合ってくれない?」
「え、いいのか? 特に何も決めてなかったから、オレは大丈夫!」
「じゃ、決まりね! いつものホテル?」
「うん、待ってる」
エマはニッコリ微笑んで接客に戻った。美しい。
「いいなぁユーゴ、僕もジェニーちゃん誘ってみようかな。丸三日あるもんね」
トーマスもジェニーとのデートの約束をした。
その後、男二人で語り合った。こういう夜もたまにはいいものだ。
『バァァァン!』
激しく扉が開いた。ドアの蝶番が外れて傾いている。
――なんだよ今度は……。
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
騎士学院のイノベーション
黒蓮
ファンタジー
この世界では、人間という種が生存できる範囲が極めて狭い。大陸の大部分を占めているのは、魔物蔓延る大森林だ。魔物は繁殖能力が非常に高く、獰猛で強大な力を有しており、魔物達にとってみれば人間など餌に過ぎない存在だ。
その為、遥か昔から人間は魔物と戦い続け、自らの生存域を死守することに尽力してきた。しかし、元々生物としての地力が違う魔物相手では、常に人間側は劣勢に甘んじていた。そうして長い年月の果て、魔物達の活動範囲は少しずつ人間の住む土地を侵食しており、人々の生活圏が脅かされていた。
しかし、この大陸には4つの天を突くほどの巨大な樹が点在しており、その大樹には不思議と魔物達は近寄ろうとしなかった。だからこそ魔物よりも弱者であるはずの人間が、長い年月生き残ってきたとも言える。そして人々は、その護りの加護をもたらす大樹の事を、崇拝の念を込めて『神樹《しんじゅ》』と呼んでいる。
これは神樹の麓にある4つの王国の内の一つ、ヴェストニア王国に存在する学院の物語である。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる