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第三章 大陸冒険編

ジュリエット

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「ジュリエットよ、お前は口には出さんが、また世界を旅したいのだろう?」
「え……? そりゃ行きたいけど……」
「行ってくるか?」
「え!? いいのか!?」
「この者らさえ良ければ、連れて行ってもらえばよい」
「えー! お祖父ちゃん大好き!」

 ジュリアは仙王に抱きついた。
 仙王は目尻をだらしなく垂らしている。
 
 ――デレデレじゃねーか仙王……。
 
「でも、エミリーは良いだろうけど……ユーゴとトーマスは嫌だろう?」
「いや、オレは問題無いですよ? エミリーの恩人だし。話に聞いた通りのいい人だ」
「僕も文句はないです。ジュリアさんみたいな明るい人が一緒なら、よりパーティが明るくなる。旅は楽しい方がいい」
「私は言うまでもないよ! 行こうよジュリア!」
「本当に!? 本当について行っちゃうよ!?」

 突然の提案で驚いたが、ジュリアがパーティーに加わる事になった。

「あぁ、行ってこい。もしアレクサンドが悪事を働くような事があれば、お前らの手で仕置してこい」

 ジュリアは満面の笑みで首を縦に振っている。

 
「よし、他に聞きたい事はあるか?」

 ユーゴが挙手し、発言を求めた。
 
「オレの父と魔人とアレクサンドが、宝玉というものを求めてリーベン島に来たんです。ここには来てませんか?」
「あぁ、手紙に書いてあったな。さすがに仙族と人族全てを敵に回してまで乗り込んで来んだろう。宝玉は我の空間魔法で管理している。そうだ、我の空間をジュリエットの空間と『契約』させておこう。我に万が一があれば、外界のジュリエットに宝玉が行く。万が一など無いがな」
 
「……契約?」
「あぁ、空間魔法は本人が死んだらそのまま消えてしまうんだよ。そうならないように、信頼する人の空間に移動するよう『契約』するんだ。アタシは、ママと相互契約を結んでいる」
「我は今、息子のライアンと相互契約している。良く考えれば同じ所にいるものに飛ばしても意味がない、飛ばすなら外界が良い。ジュリエットが帰ってきたらライアンと結び直そう」

 そう言って、仙王とジュリアが契約とやらを結んだ。

「そうなんだ、こないだ私も疑問に思ったんだよ。じゃ、私はジュリアと契約しようかな!」
「おいおい、何言ってるんだよ。もうアタシと契約したじゃないか」
「え……? そうだっけ?」
「この話もしたぞ? 寝ぼけてたのか?」
「全然覚えてない……まだ小さかったからかな?」
「あぁ、そうかもな。会った時は七歳とかだったもんな」

 とにかく、仲間が増えた。
 楽しい旅になりそうだ。
 

「よし、いい時間だ。君たちに昼食を用意している、食べて帰ってくれ」
「え? 良いんですか?」

 今座っている円卓に、ナイフとフォーク、ナプキンなどが並べられた。

 ――これはもしかして……。

 例の難解な料理だ。
 昨日の練習が役に立ちそうだ。

「前菜の、クルスティアン・デゥ・フロマージュでございます」

 ――昨日より何言ってるか分からないぞ……。

 見ても何の料理か分からない。これが王の食事らしい。
 
 次々と運ばれてくる難解な料理を、皆と笑いながら楽しんだ。ジュリアは明るい女性だ。旅が明るく楽しくなるのは間違いない。

 
 食事を終え、紅茶を楽しんでいる。高級茶葉だろう、香りが素晴らしい。

「魔人達の目的は何なんですかね?」
「昔、アレクサンドに宝玉の話をしたことがある。我も集めると何が起こるかは知らんがな。それを思い出して世界を周っているんだろう。数人で国を攻めるのは無理だと、国の規模が小さい龍王の所に聞きに行ったんだろうな。今の所そこまで悪事を働いているわけでは無い。アレクサンドの事だ、何をし始めるか分からんがな」

 ――ほんと仙王は、見たように話するな……。

「これから旅をするなら、王都に行く事もあるのか?」
「そうですね。オレたちの目的は魔人達を探すことです。王都は魔人の噂が一番聞けそうですから」
「そうか……ならば……いや、まだか」
「えっと……何か?」
「あぁいや、なんでも無い。こっちの話だ」

 仙王は何かを言いかけてやめた。気になるが問い詰める訳にもいかない。

「では、二人の王への手紙を書いておこうか。会いたければ会うがいい」
「本当ですか? ありがとうございます」

「あと、エミリー。君は青い眼を隠している様だが、我はその眼を人族に晒す事を禁止してはおらんぞ? ジュリアの十年は人族として生活させるために隠させたのだ」
 
「私が眼を隠してるのは、この眼を見られるとトラウマが蘇るからなんです。信頼するユーゴとトーマスに見られただけでも過呼吸で倒れたくらいだから……」
「なるほどな……我が定めた規律で苦しむ者が出ようとはな……悪い事をした」
「アタシもこれから隠して旅するよ! 前回の十年間もそうだったけど、その方が生活しやすいんだ。この青い眼は目立つからね」


 紅茶もおかわりし、十分に楽しんだ。長時間居座るのも気が引ける。
 いい話を聞けたし、仲間もできた。おいとましよう。

「仙王様、いきなり押しかけた上に食事まで頂き、ありがとうございました」
「いや、我も楽しめた、また来るがいい。ジュリエットを頼む。なかなか強いぞこいつは、仙族が誇る天才だ」
「はい、ジュリアさん、改めてお願いします」
「おいおい、仲間になるのにその堅苦しい話し方やめてくれよ! エミリーと話す様に喋ってくれ、ジュリアでいい」
「分かったよ。よろしくなジュリア! んじゃ、行くか!」

 仙王に礼を言って城を後にした。
 
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