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15話

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──21XX年4月18日、木曜日、晴れ。

時刻は20時を過ぎていた。

寒くもなければ暑くもない、ちょうどいい気温のなか、日常における何気ないただの散歩だったのなら、いい気分転換になっていただろう。

そろそろ目的地に着くのだが、それにしても、

……不思議だった。

今なお途切れることのない複数の殺気、一定の距離を保っているのに、しかし一向に襲ってくる気配が微塵のカケラもなかった。

見られている、監視されている、自分の意思で行動しているのに、まるで誘われているかのような錯覚に陥ってしまう。

だが、警戒は必要最低限に、それこそ能天気に最近の流行り曲をうろ覚えで小さく口ずさむ。

(あまりにも『闇のフクロウ』に関して情報がないし、どう対処するかなぁ)

ぐるぐる思考が回る。

闇のフクロウは世間では義賊と呼ばれ、ボスはSレベルの強さ、襲ってきた幹部はBレベルという情報しか知らない。

ここに来るまで散々似たようなことを頭の中で反芻はんすうしているのだが、考えても知らないことに答えが得られる訳がなかった。

(その答えを余すことなく暴くような魔法が使える使い魔もいる、いるけど……)

ダンジョンでもないこんなただの屋外で召喚するにはあまりにもリスクが大きかった。

(いつかはダンジョン攻略を進めていくうちに、めんどくさい連中がちょっかいかけてくるとは思ってたさ。うん、時間の問題ではあったはず! でもあまりにも早すぎるだろ!! 俺が思ってる以上にダンジョンネストのことが広がってるのか?)

そんな愚痴が心の中で呟かれるが、現実逃避もそろそろ終わりにしなければならない。

ダンジョン都市は、『ダンジョン』という天然物を除き、およそ8割が人工物で溢れかえっている。

そんな数少ない自然の1つが、無月が住むボロアパートから徒歩でだいたい30分先にある自然公園だった。

子供たちが遊ぶ遊具、ランニングやジョギング用に塗装された道、サッカーや野球ができるくらいには広いグランド、または憩いの場として小さな池の周りにはベンチがいくつか設置されているなど、やはり人工物もそれなりにはある。

そして池の向かい側には小山があり、展望台ではダンジョン都市の一部を一望できた。

幸いというべきか、この自然公園には人影1つ見当たらない。

迷いなく小山に向かって歩みを進める無月は、洞窟とも呼べないような、大人1人がぎりぎり入れるかどうかの場所で、足を止めた。

無月が洞窟に向かって少量の魔力を送ると、その洞窟が次元を引き裂いたかのように割れた。

「──聴こえているかは知らないけど、白黒はっきりつけようぜ」

友人に語りかけるように言葉を投げた無月は、相手のアクションを待つこともなく、さっさと異次元の狭間を通って行った。

無月の視界に広がるのは、ただただ白い空間だった。

魔力だけで構築された台座がぽつんと置かれているだけで、どこまでも白い。

もしあてもなく探索しようものなら、もう二度と出てこれない、そんな歪で不気味な空間だった。

「……懐かしいな」

じっと台座に目を向け、頭の中ではクリシたち使い魔と初めて出会った時の思い出が瞬時に蘇った。

この空間は使い魔曰く、『ヴィレゼーレ意志ある魂』と呼ばれる異次元空間だという。

ここではどんなに魔力を解放しても、地球には何の影響も与えない。

だからこそ、無月は使い魔と契約したのち、時間が許す限りここで全員を召喚して、交流を重ねてきた。

本来このヴィレゼーレには、無月という契約者しか入ることはできない。

だが異次元の狭間を閉ざさずに、かつ、無月が許可した相手は誰でも入ることができた。

つまり。

「へぇ~、ダンジョンネスト生還者君は、こんなとんでもない場所を隠し持ってたんだぁ」

ぞろぞろと、闇のフクロウのボス、工藤リズムくどうりずむを筆頭に、5人の強者が無月の前に、とうとう姿を現した。

「いらっしゃい、いらっしゃい。俺の秘密基地にようこそ。ここに俺以外の人間を招いたのはあなた達が初めてだ」

無月はにこりと笑みを作り、それなり・・・・に強いのだろう相手方に、堂々とした態度で迎え入れた。

(さぁて、ここからが本番ですよっと。……あーあ、早くダンジョン攻略の続きに取り掛かりたい)

決して顔には出さないように、向こうの挙動を観察する。





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