上 下
9 / 16

9話

しおりを挟む
ボスフィールドからダンジョンのスタート地点に戻ってきた無月むつきとクリシは、17時過ぎということもあり、学生ハンターが増えてきたなと感じる。

(クリシのこともだいぶ知られるようになってきたし、そろそろ召喚したまま外に出てみるか)

一応学生ハンターたちの視線から、さり気なくクリシを隠すようにして、ダンジョンを出ようとしたところで、ひいらぎ秋澤あきざわの姿が目に入った。

彼女たちも無月たちに気付いたようで、駆け足で近寄ってきた。

「無月君、クリシさん、お疲れ様」

柊がクールな微笑みで声をかけてきた。

「お疲れ様! 無月くん、クリシちゃん!」

秋澤もにっこりと笑って挨拶する。

「お疲れ様。2人は今からクエスト?」

無月は二人に問いかけた。

「ええ。今日の授業が終わったから、少しダンジョンに潜ろうかと思って」

「2人はクエスト帰り?」

柊が答え秋澤の問いかけに無月はうなずき、

「へへーん! 今日はゴブリンキングを倒してきたんだ!」

ドヤドヤっとクリシが笑う。

「もうランクアップクエスト受けれたの?!」

「確かにすでにそれだけの実力はあるものね」

秋澤がクリシの頭をわしゃわしゃ撫でながら驚き、柊もさり気なくそれに混ざりながら納得している。

「そうだ! これから琴音ことね茉莉まつりについてっていい?」

突然クリシが思いついた! という風に3人に向けて提案する。

「また唐突だな…」

無月は髪がくしゃくしゃになってしまっているクリシの髪を整えながら苦笑する。

一般的に、クエスト中に使い魔を他のパーティーに一時的に預けたり、パーティー同士で勉強や訓練のためにメンバーを数日間入れ替えるというのは意外に多い。

今回の場合はクリシの戦闘能力が高いがゆえに戦闘に参加してしまうと、柊たちの経験にならないのは明白で、クエストを成功させても実績や評価が低くなってしまう。

なので、クリシはクエストの妨げにならないように、戦闘の時は見学することになる。

「うん! クリシちゃんともっと仲良くなりたいからあたしは賛成!」

「私も無月君がよければ構わないわ」

無月に関しても、魔力量をまったく気にする必要がないため、特に問題はない。

どんなに使い魔と離れていても、魔力を供給し続ければ召喚していられるし、使い魔もかえろうと思えば自分で還れる。

「柊さん、秋澤さん、クリシを頼むね。クリシは2人に迷惑かけないようにな?」

無月の言葉に、クリシたちは返事を返して、和気藹々わきあいあいとダンジョンを進み出した。

ダンジョンワープまで戻ってきた無月は、HMDSヒムダスを取り出す。

ダンジョンワープを利用するための支払い方法はとして、ギルド協会からワープするときは、クエスト受注時などに受付嬢にそのまま支払いうのが手っ取り早い。

しかし今回のような場合は、HMDSから簡単に使用料を電子マネーやクレジットカードなどから支払うことができる。

無月は初クエストで得た報酬を半分ほど電子マネーに変えていたため、そこからチャリンと支払った。

続けてクエストクリアのデータ情報をギルド協会に送り、数秒と経たずに承認されたのか、報酬金額が指定の口座に支払われた。

そして新たに、『Iレベルウルフダンジョン、ウルフを10体討伐:成功報酬10.000円』のクエストを受注した。

HMDSだけでこういうやり取りが可能になっている理由は、諸事情によってギルド協会に行けない、またはダンジョンをはしごするためにわざわざギルド協会に戻るのも手間だからなど、様々な理由があった。

ちなみに魔石モンスターコアの換金に関しては、直接ギルド協会に行かなければならない。

無月が背負っているリュックサックには、普通のモンスターより大きいゴブリンキングの魔石が入っているものの、まだまだ余裕があった。

多少なりともクリシのことは心配なものの、無月は新たなダンジョンにワープした。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...