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5話
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「ああ、無月君、よく来てくれた。さぁ、座ってくれ」
無月はギルド協会のギルド長室に案内された。
そのときに聞いた話だが、どうやらギルド長は緊急の仕事で海外に行ったらしく、今回はギルド副長との話し合いらしい。
そしてギルド長室の重厚な扉を開けると、そこには壁一面の本棚と大きなデスクがあり、その向こうにギルド副長が立っていた。
部屋は静かで、ただ時計の針の音だけが響いている。
ギルド副長の顔は強面でガタイもよく迫力満点だったが、温和な声で無月に高級感あふれるソファーに座るよう促した。
無月はギルド副長の前に座る。
「まずは私の自己紹介からしたいと思う、──柊暖。この日本ギルド協会のギルド副長を務めており、そして無月君が助けてくれた柊琴音の父親でもある。……娘とその友人がダンジョンネストに飲み込まれたと聞いたときは、正直に言ってしまうと絶望してしまった。だが、無月君の活躍で3人とも無傷で生還を果たしたこの事実は、ギルド副長として、また1人の父親として本当に嬉しかったんだ! 無月君の生還はもちろん、琴音たちを助けてくれてありがとう」
そう言って暖は深々と無月に頭を下げる。
「いえ、今回は僕にできることをした結果、2人を助けられただけです。こちらこそ、今回は様々な対応をしてくださりありがとうございました」
無月も感謝の言葉を口にして姿勢を正し、頭を下げる。
その後は2人にあった小さな緊急感はなくなり、無月は改めて事の顛末を伝えた。
この時、無月は自分の能力は断りを入れた上で、召喚魔法士だということのみを口にする。
本来ならばギルド副長としての立場として、彼の能力はある程度は聞いておかなければならないのだが、例外と言いうものは世の中存在するものだ。
ダンジョンネストを無傷で生還したダンジョンハンターの機嫌を損ねた方が不利益になると、ギルド長を含めて、上層部の判断により無月の能力は無理に聞かないことが決まっていた。
なので、暖もそのことに関してはそれ以上追及はしなかった。
「──さて。私個人としては、無月君のハンターレベルを上げることには賛成なのだが、そうすると実力が見合っていない者たちの不満が高まっていく。なので、日本ギルド協会上層部で決定したことは、Cレベルハンターから使用が可能になるダンジョンワープの利用権限を与えようと思う」
「ダンジョンワープって、ギルド協会にある大型魔道具の一つで、登録されたダンジョンの入り口近くにそのまま転送される物ですよね?」
「あぁ、その通りだ。無月君の功績を考慮し、特別にその利用権限を与えることにした。これで君のダンジョン攻略もさらに効率的になるだろう」
無月はその提案に感謝しつつも、少し考え込んだ。
「ありがとうございます。でも、これって他のハンターたちから不満が出ないでしょうか?」
暖は穏やかに微笑んで答えた。
「無月君の心配はもっともだ。しかし、君の功績はハンターを含めてギルド全体のほとんどが認めている。安心して受け取ってほしい」
無月はその言葉に深く頷いた。
「分かりました。ありがとうございます」
「さて、話は変わるが、娘の琴音とその友人の茉莉は今日も学校に行っている。彼女たちが無事に戻ってきたのも、無月君のおかげだ。何か困ったことがあれば、遠慮なく相談してほしい。私たちはいつでも君をサポートするつもりだ」
無月は改めて感謝の意を表し、ギルド副長の暖に深く頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも頑張ります」
その後、無月はギルド長室を退出し、さっそくダンジョンワープを使ってIレベルダンジョンであるゴブリンダンジョンのボス攻略を果たすために受付場に移動した。
無月はギルド協会のギルド長室に案内された。
そのときに聞いた話だが、どうやらギルド長は緊急の仕事で海外に行ったらしく、今回はギルド副長との話し合いらしい。
そしてギルド長室の重厚な扉を開けると、そこには壁一面の本棚と大きなデスクがあり、その向こうにギルド副長が立っていた。
部屋は静かで、ただ時計の針の音だけが響いている。
ギルド副長の顔は強面でガタイもよく迫力満点だったが、温和な声で無月に高級感あふれるソファーに座るよう促した。
無月はギルド副長の前に座る。
「まずは私の自己紹介からしたいと思う、──柊暖。この日本ギルド協会のギルド副長を務めており、そして無月君が助けてくれた柊琴音の父親でもある。……娘とその友人がダンジョンネストに飲み込まれたと聞いたときは、正直に言ってしまうと絶望してしまった。だが、無月君の活躍で3人とも無傷で生還を果たしたこの事実は、ギルド副長として、また1人の父親として本当に嬉しかったんだ! 無月君の生還はもちろん、琴音たちを助けてくれてありがとう」
そう言って暖は深々と無月に頭を下げる。
「いえ、今回は僕にできることをした結果、2人を助けられただけです。こちらこそ、今回は様々な対応をしてくださりありがとうございました」
無月も感謝の言葉を口にして姿勢を正し、頭を下げる。
その後は2人にあった小さな緊急感はなくなり、無月は改めて事の顛末を伝えた。
この時、無月は自分の能力は断りを入れた上で、召喚魔法士だということのみを口にする。
本来ならばギルド副長としての立場として、彼の能力はある程度は聞いておかなければならないのだが、例外と言いうものは世の中存在するものだ。
ダンジョンネストを無傷で生還したダンジョンハンターの機嫌を損ねた方が不利益になると、ギルド長を含めて、上層部の判断により無月の能力は無理に聞かないことが決まっていた。
なので、暖もそのことに関してはそれ以上追及はしなかった。
「──さて。私個人としては、無月君のハンターレベルを上げることには賛成なのだが、そうすると実力が見合っていない者たちの不満が高まっていく。なので、日本ギルド協会上層部で決定したことは、Cレベルハンターから使用が可能になるダンジョンワープの利用権限を与えようと思う」
「ダンジョンワープって、ギルド協会にある大型魔道具の一つで、登録されたダンジョンの入り口近くにそのまま転送される物ですよね?」
「あぁ、その通りだ。無月君の功績を考慮し、特別にその利用権限を与えることにした。これで君のダンジョン攻略もさらに効率的になるだろう」
無月はその提案に感謝しつつも、少し考え込んだ。
「ありがとうございます。でも、これって他のハンターたちから不満が出ないでしょうか?」
暖は穏やかに微笑んで答えた。
「無月君の心配はもっともだ。しかし、君の功績はハンターを含めてギルド全体のほとんどが認めている。安心して受け取ってほしい」
無月はその言葉に深く頷いた。
「分かりました。ありがとうございます」
「さて、話は変わるが、娘の琴音とその友人の茉莉は今日も学校に行っている。彼女たちが無事に戻ってきたのも、無月君のおかげだ。何か困ったことがあれば、遠慮なく相談してほしい。私たちはいつでも君をサポートするつもりだ」
無月は改めて感謝の意を表し、ギルド副長の暖に深く頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも頑張ります」
その後、無月はギルド長室を退出し、さっそくダンジョンワープを使ってIレベルダンジョンであるゴブリンダンジョンのボス攻略を果たすために受付場に移動した。
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