4 / 16
4話
しおりを挟む
「ニシシ、よ~し! それじゃあクリシちゃんキック行くよー!」
クリシが『フリューゲル・フリーゲン』という無属性魔法を唱える。
この魔法は、具現化されたドラゴンの翼が背中に生えて空が飛べるようになる。
そして勢いよく空を駆けるクリシは、1番近くにいたハーピーに容赦ないドロップキックをぶちかます。
そのときクリシが着ているワンピースのスカートは、魔力操作によって捲れ上がることもなく、絶対領域を完成させていた。
吹っ飛ばされたハーピーが、周りにいたハーピーに弾丸の如く衝突し、巻き込まれたハーピー共々そのまま消滅する。
「『シュペルノヴァ』!」
今度は攻撃系統の無属性魔法で、絶大な魔力が圧縮されて、無属性の塊を複数放ち爆発させる。
過剰な量の弾幕により、瞬く間に残りのハーピーの命が散っていく。
それとほぼ同時に、地上ではオークの群れと対峙していたフレイアシエが、
「ガハハハッ! クリシは相変わらずはしゃいでんな! ……まぁ、俺は魔法を使うまでもねぇけどな」
肩に担いでいた、炎と鋼で形成された槍、『レーヴァテイン』をただ一閃真横に振るう。
その刹那、全てのオークは灼熱の炎に身を焦がす。
──秒殺だった。
使い魔たちの圧倒的な力量差に、ハーピーとオーガに避ける、防御する、カウンターを仕掛けるなどの選択肢をそもそも与えてはくれなかった。
……モンスターたちにとっては、痛みもなく消滅できたことが救いだったのかもしれない。
その光景を柊と秋澤はポカンと口を開けて呆けている。
ここにきた時とは違う意味でまた混乱していたのだ。
「……へ? 終わったの?」
ぽつりと秋澤が呟く。
ぱちぱちと軽く拍手をしながら自分の使い魔を労っている、魔力量が暴力的なまでに底が見えない男を、柊は静かに見つめたが、
「──助けてくれてありがとう。遅くなってしまったけど、私は柊琴音」
「あたしは秋澤茉莉! 助けてくれてありがとね!」
少しして感情が落ち着いてきた2人は、無月に感謝の言葉を口にして、自分の名前を伝える。
「どういたしましてだ。……俺は無月夜空、そしてハーピーを倒したのがクリシ、オーガを倒したのがフレイアシエ」
無月も自己紹介を通して、今回の功労者である使い魔の名前を伝える。
クリシたちも柊、秋澤と簡単に会話を終えて、無月は使い魔を戻し魔力解放を解く。
そして、3人は何事もなく元のダンジョンに帰ってきた。
──『ダンジョン都市』。
ダンジョンの存在が当たり前になっている現代では、世界各国にギルド協会が点在している。
そこには日本も例外ではなく、ダンジョン都市の中心にギルド協会本部がある。
そもそもダンジョン都市とは、東京のとある区域に複数のダンジョンが発生した際に、ハンター協会を中心とした都市が建設された。
今のところ日本にてダンジョンの存在が確認されているのは、このダンジョン都市のみである。
現在では、ダンジョンハンターを始めとした様々な人々が生活しており、柊と秋澤が通うハンター育成専門高等学校もこの都市にあった。
モンスターネストが発生した場合、それを目撃したハンターは速やかにヒムダスを使って、ギルド協会に緊急連絡しなければならない決まりがある。
つまりは、帰ってきた無月たちの周りには、元々いたハンター以外にも、ギルド協会の職員、ダンジョン&ハンターを専門にする特殊部隊ブレイブなど、たくさんの人で溢れかえっていた。
そこからは無月たちにとって怒涛の展開だった。
歴史上2回目、ダンジョンネストから帰還したという衝撃的な光景を目の当たりにした者たちの口から漏れ出し、数日の内には世界的ニュースとして世界を震撼させることになった。
しかしすぐさまギルド協会による緘口令かんこうれいが敷しかれて、世間に名前や顔などまでは知られることはなかった。
また、記者会見や黒い噂の絶えない研究機関などからのアクセスには、ギルド協会が矢面に立って事前に防いでくれたため、彼らに特別負担を強いられることもないでいた。
現に事件の翌日から柊と秋澤は普通に学校に登校している。
普段の無月は社交的ではあるものの、面倒事を嫌い、悪意ある者には容赦のない性格ではあるのだが、善意には素直だ。
色々と面倒事から守ってくれたギルド協会から、今回の出来事について話が聞きたいと打診があった際も、無月は快諾した。
──そして現在。
通称モンスターネスト事件から早数日、無月はギルド協会のギルド長室に足を運んでいた。
クリシが『フリューゲル・フリーゲン』という無属性魔法を唱える。
この魔法は、具現化されたドラゴンの翼が背中に生えて空が飛べるようになる。
そして勢いよく空を駆けるクリシは、1番近くにいたハーピーに容赦ないドロップキックをぶちかます。
そのときクリシが着ているワンピースのスカートは、魔力操作によって捲れ上がることもなく、絶対領域を完成させていた。
吹っ飛ばされたハーピーが、周りにいたハーピーに弾丸の如く衝突し、巻き込まれたハーピー共々そのまま消滅する。
「『シュペルノヴァ』!」
今度は攻撃系統の無属性魔法で、絶大な魔力が圧縮されて、無属性の塊を複数放ち爆発させる。
過剰な量の弾幕により、瞬く間に残りのハーピーの命が散っていく。
それとほぼ同時に、地上ではオークの群れと対峙していたフレイアシエが、
「ガハハハッ! クリシは相変わらずはしゃいでんな! ……まぁ、俺は魔法を使うまでもねぇけどな」
肩に担いでいた、炎と鋼で形成された槍、『レーヴァテイン』をただ一閃真横に振るう。
その刹那、全てのオークは灼熱の炎に身を焦がす。
──秒殺だった。
使い魔たちの圧倒的な力量差に、ハーピーとオーガに避ける、防御する、カウンターを仕掛けるなどの選択肢をそもそも与えてはくれなかった。
……モンスターたちにとっては、痛みもなく消滅できたことが救いだったのかもしれない。
その光景を柊と秋澤はポカンと口を開けて呆けている。
ここにきた時とは違う意味でまた混乱していたのだ。
「……へ? 終わったの?」
ぽつりと秋澤が呟く。
ぱちぱちと軽く拍手をしながら自分の使い魔を労っている、魔力量が暴力的なまでに底が見えない男を、柊は静かに見つめたが、
「──助けてくれてありがとう。遅くなってしまったけど、私は柊琴音」
「あたしは秋澤茉莉! 助けてくれてありがとね!」
少しして感情が落ち着いてきた2人は、無月に感謝の言葉を口にして、自分の名前を伝える。
「どういたしましてだ。……俺は無月夜空、そしてハーピーを倒したのがクリシ、オーガを倒したのがフレイアシエ」
無月も自己紹介を通して、今回の功労者である使い魔の名前を伝える。
クリシたちも柊、秋澤と簡単に会話を終えて、無月は使い魔を戻し魔力解放を解く。
そして、3人は何事もなく元のダンジョンに帰ってきた。
──『ダンジョン都市』。
ダンジョンの存在が当たり前になっている現代では、世界各国にギルド協会が点在している。
そこには日本も例外ではなく、ダンジョン都市の中心にギルド協会本部がある。
そもそもダンジョン都市とは、東京のとある区域に複数のダンジョンが発生した際に、ハンター協会を中心とした都市が建設された。
今のところ日本にてダンジョンの存在が確認されているのは、このダンジョン都市のみである。
現在では、ダンジョンハンターを始めとした様々な人々が生活しており、柊と秋澤が通うハンター育成専門高等学校もこの都市にあった。
モンスターネストが発生した場合、それを目撃したハンターは速やかにヒムダスを使って、ギルド協会に緊急連絡しなければならない決まりがある。
つまりは、帰ってきた無月たちの周りには、元々いたハンター以外にも、ギルド協会の職員、ダンジョン&ハンターを専門にする特殊部隊ブレイブなど、たくさんの人で溢れかえっていた。
そこからは無月たちにとって怒涛の展開だった。
歴史上2回目、ダンジョンネストから帰還したという衝撃的な光景を目の当たりにした者たちの口から漏れ出し、数日の内には世界的ニュースとして世界を震撼させることになった。
しかしすぐさまギルド協会による緘口令かんこうれいが敷しかれて、世間に名前や顔などまでは知られることはなかった。
また、記者会見や黒い噂の絶えない研究機関などからのアクセスには、ギルド協会が矢面に立って事前に防いでくれたため、彼らに特別負担を強いられることもないでいた。
現に事件の翌日から柊と秋澤は普通に学校に登校している。
普段の無月は社交的ではあるものの、面倒事を嫌い、悪意ある者には容赦のない性格ではあるのだが、善意には素直だ。
色々と面倒事から守ってくれたギルド協会から、今回の出来事について話が聞きたいと打診があった際も、無月は快諾した。
──そして現在。
通称モンスターネスト事件から早数日、無月はギルド協会のギルド長室に足を運んでいた。
20
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる