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──初心者ハンターの基本書、一部抜粋。
『ダンジョンハンター』。
ダンジョンに存在する魔物を討伐し、貴重な資源を回収するのを主な生業とする今では当たり前になっている職業。
世界で登録されているハンターは100万人以上、近接武器や遠距離武器は勿論、魔法・超能力などを武器にダンジョンを攻略する、通称『ハンター』という者たちがいる。
政府お抱え部隊とは違い、言うなれば個人業の一種であるハンターは、大々的に宣伝して活動している者もが大多数であり、9割近くがパーティーを組んで活動している。
それは個人の能力などで、得意不得意を補う為のものである。
逆に言えば、ソロで活動する者は強力な力を有していると同義であり、高レベルのソロハンターは羨望と嫉妬の対象にもなりやすい。
ハンターになれるのは15歳からであり、『ハンター協会』という世界各国に存在するハンターを運営する組織があり、ここでハンターライセンスを得た者はハンター協会に所属して、ソロもしくはパーティーを組み適正レベルの仕事を行うこととなる。
ハンターが入にゅうダンできるダンジョンには当然レベルがあり、下から『I・H・G・F・E・D・C・B・A・S・X・Z』の12に区分されている。
このレベルがハンターレベルに適用され、同レベルのダンジョンまでしか入ダンできないことから、ハンターの生存率上昇および死亡率低下の役割を担う。
レベルを上げる方法は、クエストと呼ばれるレベルごとに分類された依頼を一定回数達成すると、レベルアップクエストが受注可能になる──。
「……当たり前だけど常識的なことしか書かれてないな」
本日15歳の誕生日を迎えた少年、無月夜空。
物心ついた時には両親は消え、親族などにも頼れず、天涯孤独となった無月はつい昨日までとある孤児院で生活していた。
少しでも早く独り立ちしたかった、昔から魔物やダンジョンに興味を持っていた理由で、無い知恵を絞り尽くしてお世話になった先生たちにどうにかこうにか説得した結果、晴れて今日からIレベルダンジョンハンターとなった。
「赤絵さん。この本ありがとうございました」
無月は読んでいた本を静かに閉じて、ハンター登録を含めてここまで対応してくれたギルド受付嬢に手渡す。
「いえいえ、常識的なことしか書かれていないので、ハンター登録に来られた殆どの方は流し読みするんですが、無月さんはしっかり読んでくれて安心しました!」
そう言って感心したように笑顔で本を受け取った赤絵は、最後の手続きとして箱に包まれた『 ハンター専用型魔法デジタル式スマホ』──通称、『ヒムダス』を無月に手渡す。
ヒムダスとは、大手スマホ会社とハンター協会の研究者が共同開発したハンター専用のアイテムである。
「恐らくご存じだと思いますが、ヒムダスは本来のスマホの機能に加え、ハンターレベルが表示される身分証やダンジョンサーチャーといった魔物の討伐数やダンジョン攻略回数など様々な記録がリアルタイムで自動反映されるアプリが搭載されています。万が一、故意的に損傷、失くしてしまいますと多額の請求、再手続が必要になるのでご注意下さい」
その後も軽く説明を受けた無月は、さっそくIレベルクエストを受注してギルド協会からバスで30分ほどで着くIレベルダンジョンに移動した。
──そもそも『ダンジョン』とは、魔力の凝縮によってダンジョンの心臓である『ダンジョンコア』が生まれ、ダンジョンコアに宿る魔力量によって魔物の質が変化する現象である。
ダンジョン内には様々な地形があり、仮に最下層に存在するボスモンスターを討伐したとしても、ダンジョンコアを破壊しない限りダンジョンは在り続け、暫くすると討伐したボスモンスターや通常のモンスターも復活する。
「さてさて、クエスト内容はゴブリン5体の討伐、報酬は5000円。Iレベルクエストの中でも一番難易度が低いけど、追加で倒せば1体500円は美味しいねぇ」
──いや、決して美味しくはない。
本来ならば、このクエスト自体が最低でも2人以上のパーティーを組んで挑むのが基本であり、赤絵の勧めでIレベル帯でパーティー募集をしているチームの紹介もいくつかあったのだが、この男は即答で断った。
理由は明白。
それは無月の魔法が“イカレテ”いるからだ。
自分の能力に関してパーティーメンバー以外には例えギルド協会であっても例外を除き、報告する必要はない。
過去に様々なトラブルが発生して、このような制度になったのだが、無月にとってはとても都合のいいことであった。
「召喚魔法士はレア中のレア。しかも俺の相棒たちは反則すぎる。いつかはバレるのは確定だとして、わざわざ自分からトラブルの種を振りまく理由なんてないしな」
ぼそぼそと独り言を言いながらダンジョンに入った無月は、ここで初めて必要な魔力量を解放した。
そして──
「『クリシ・フロラシオン・ヴィーテ・バハムート』」
そう唱えた無月の正面に、主人公の相棒にして無属性を司る友。亜麻色あまいろの美しく長い髪、空色の瞳、白を基準にしたワンピースを着た見た目14歳くらいの美少女が現れた。
「もう~、やっと私を呼んでくれたね!」
クリシは嬉しそうに無月に近づいてためらいなく笑顔で抱き着く。
「事前に伝えてただろ? 今日は朝からハンターになる為に色々手続きしなきゃいけないから、時間がかかるって」
「それにしたってずいぶん待ったんだよ?」
「まあまあ。今日からは今までと違って一緒に過ごせる時間も長くなるから、機嫌を直してくれ、な?」
慣れた手つきでクリシの頭を優しく数回撫でてから、無月はクリシの自分にまわされた手を外しつつ答えた。
孤児院時代はなかなかクリシを含めた契約している使い魔を召喚するタイミングが無かったのが、今日からは念願の独り暮らし。
当然お金など無一文に等しく、ボロアパートの一室を借りたものの、すぐにお金に困らなくなるだろうと無月は確信していた。
「──さて。もう14時も過ぎたしサクッとクエストを終わらせて、時間が許す限りゴブリンを討伐したいんだけど、協力してくれるか?」
「ニシシ、任せてよ! 私にかかればゴブリンなんて相手にもならないからね!」
相棒の頼もしい返事に無月は頷き、クリシを先頭に2人はゴブリン討伐クエストを開始した。
『ダンジョンハンター』。
ダンジョンに存在する魔物を討伐し、貴重な資源を回収するのを主な生業とする今では当たり前になっている職業。
世界で登録されているハンターは100万人以上、近接武器や遠距離武器は勿論、魔法・超能力などを武器にダンジョンを攻略する、通称『ハンター』という者たちがいる。
政府お抱え部隊とは違い、言うなれば個人業の一種であるハンターは、大々的に宣伝して活動している者もが大多数であり、9割近くがパーティーを組んで活動している。
それは個人の能力などで、得意不得意を補う為のものである。
逆に言えば、ソロで活動する者は強力な力を有していると同義であり、高レベルのソロハンターは羨望と嫉妬の対象にもなりやすい。
ハンターになれるのは15歳からであり、『ハンター協会』という世界各国に存在するハンターを運営する組織があり、ここでハンターライセンスを得た者はハンター協会に所属して、ソロもしくはパーティーを組み適正レベルの仕事を行うこととなる。
ハンターが入にゅうダンできるダンジョンには当然レベルがあり、下から『I・H・G・F・E・D・C・B・A・S・X・Z』の12に区分されている。
このレベルがハンターレベルに適用され、同レベルのダンジョンまでしか入ダンできないことから、ハンターの生存率上昇および死亡率低下の役割を担う。
レベルを上げる方法は、クエストと呼ばれるレベルごとに分類された依頼を一定回数達成すると、レベルアップクエストが受注可能になる──。
「……当たり前だけど常識的なことしか書かれてないな」
本日15歳の誕生日を迎えた少年、無月夜空。
物心ついた時には両親は消え、親族などにも頼れず、天涯孤独となった無月はつい昨日までとある孤児院で生活していた。
少しでも早く独り立ちしたかった、昔から魔物やダンジョンに興味を持っていた理由で、無い知恵を絞り尽くしてお世話になった先生たちにどうにかこうにか説得した結果、晴れて今日からIレベルダンジョンハンターとなった。
「赤絵さん。この本ありがとうございました」
無月は読んでいた本を静かに閉じて、ハンター登録を含めてここまで対応してくれたギルド受付嬢に手渡す。
「いえいえ、常識的なことしか書かれていないので、ハンター登録に来られた殆どの方は流し読みするんですが、無月さんはしっかり読んでくれて安心しました!」
そう言って感心したように笑顔で本を受け取った赤絵は、最後の手続きとして箱に包まれた『 ハンター専用型魔法デジタル式スマホ』──通称、『ヒムダス』を無月に手渡す。
ヒムダスとは、大手スマホ会社とハンター協会の研究者が共同開発したハンター専用のアイテムである。
「恐らくご存じだと思いますが、ヒムダスは本来のスマホの機能に加え、ハンターレベルが表示される身分証やダンジョンサーチャーといった魔物の討伐数やダンジョン攻略回数など様々な記録がリアルタイムで自動反映されるアプリが搭載されています。万が一、故意的に損傷、失くしてしまいますと多額の請求、再手続が必要になるのでご注意下さい」
その後も軽く説明を受けた無月は、さっそくIレベルクエストを受注してギルド協会からバスで30分ほどで着くIレベルダンジョンに移動した。
──そもそも『ダンジョン』とは、魔力の凝縮によってダンジョンの心臓である『ダンジョンコア』が生まれ、ダンジョンコアに宿る魔力量によって魔物の質が変化する現象である。
ダンジョン内には様々な地形があり、仮に最下層に存在するボスモンスターを討伐したとしても、ダンジョンコアを破壊しない限りダンジョンは在り続け、暫くすると討伐したボスモンスターや通常のモンスターも復活する。
「さてさて、クエスト内容はゴブリン5体の討伐、報酬は5000円。Iレベルクエストの中でも一番難易度が低いけど、追加で倒せば1体500円は美味しいねぇ」
──いや、決して美味しくはない。
本来ならば、このクエスト自体が最低でも2人以上のパーティーを組んで挑むのが基本であり、赤絵の勧めでIレベル帯でパーティー募集をしているチームの紹介もいくつかあったのだが、この男は即答で断った。
理由は明白。
それは無月の魔法が“イカレテ”いるからだ。
自分の能力に関してパーティーメンバー以外には例えギルド協会であっても例外を除き、報告する必要はない。
過去に様々なトラブルが発生して、このような制度になったのだが、無月にとってはとても都合のいいことであった。
「召喚魔法士はレア中のレア。しかも俺の相棒たちは反則すぎる。いつかはバレるのは確定だとして、わざわざ自分からトラブルの種を振りまく理由なんてないしな」
ぼそぼそと独り言を言いながらダンジョンに入った無月は、ここで初めて必要な魔力量を解放した。
そして──
「『クリシ・フロラシオン・ヴィーテ・バハムート』」
そう唱えた無月の正面に、主人公の相棒にして無属性を司る友。亜麻色あまいろの美しく長い髪、空色の瞳、白を基準にしたワンピースを着た見た目14歳くらいの美少女が現れた。
「もう~、やっと私を呼んでくれたね!」
クリシは嬉しそうに無月に近づいてためらいなく笑顔で抱き着く。
「事前に伝えてただろ? 今日は朝からハンターになる為に色々手続きしなきゃいけないから、時間がかかるって」
「それにしたってずいぶん待ったんだよ?」
「まあまあ。今日からは今までと違って一緒に過ごせる時間も長くなるから、機嫌を直してくれ、な?」
慣れた手つきでクリシの頭を優しく数回撫でてから、無月はクリシの自分にまわされた手を外しつつ答えた。
孤児院時代はなかなかクリシを含めた契約している使い魔を召喚するタイミングが無かったのが、今日からは念願の独り暮らし。
当然お金など無一文に等しく、ボロアパートの一室を借りたものの、すぐにお金に困らなくなるだろうと無月は確信していた。
「──さて。もう14時も過ぎたしサクッとクエストを終わらせて、時間が許す限りゴブリンを討伐したいんだけど、協力してくれるか?」
「ニシシ、任せてよ! 私にかかればゴブリンなんて相手にもならないからね!」
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