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血の繋がり
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美男美女を連れて、創士は王都を闊歩する。人の視線を集めるのは得策ではないが、なにかとサービスをしてもらえるのは得なのだろう。創士はその恩恵にあずかれないが。
デッドアイは言わずもがな、男店主に試食を貰ったり特別安くしてもらったりしている。サスタスも、おば様達に大人気でお菓子を貰ったり、情報を聞き出したりしている。
魔王側が何故人間側の通貨を持っているのかというと、ダンジョン等に攻めてきた冒険者などから頂いている。使えそうな武器等は使わせてもらい、着れない防具や装飾品等は売って金にする。あくまでも相手のフィールドに立って取引を行う。これが魔王城の最低限のルールだ。
柑橘系の果物『リネス』はすぐに見つかった。デッドアイが上目遣いで値切ると、店主はあっさり籠絡されてしまった。その他にも魔道具店に寄って、ガンバスに改造してもらえば掃除道具になりそうな魔力石を買ったり、ブラン王子に着けたら可愛くなりそうなアクセサリーを買ったり、まるで休日のショッピングのようだ。
(お忍びなのに、魔族ってのは豪胆だなぁ)
側から見ればただの人間にしか見えない。まぁ自然に振る舞うのが一番良いのは分かっているんだけども。
「見て!あれは美術品店かしら?ちょうど模様替えしたかったのよね!行きましょ!」
美術品で模様替えとは…。さすが王女である。
「模様替えの前に部屋を片付けません?」
「うっさいわねぇ!」
デッドアイは創士の手を引いて店内へと入る。店内には壺や絵画、装飾を凝らした鏡や彫刻などが置いてある。どうやら先客がいたようで、何やら店主に対して嫌味を言っているようだ。
「クソみたいな物しか置いてないじゃないか!前にもっと良いものを入荷しておけと言っただろう⁉︎」
店主はひたすら謝り続ける。どこかの貴族だろうか?お供に連れている3人の男は武装しており、店に入ってきた我々を監視している様だった。
店の入り口で、入り辛そうに貴族と店主のやりとりを眺める創士。そんなものはお構いなしとばかりにズカズカと店内に入って物色するデッドアイ。そんな創士の後ろからサスタスが耳元へ顔を近づけ小さな声で話す。
「あれは、この国の王子ですよ」
なるほど、それならお供が帯刀している事も高圧的な態度なのも納得がいく。関わり合うのも面倒なので、なるべく目を合わさないように隅の方の置物を眺める事にした。サスタスも同じ考えのようで、気配を消しつつ隅の方の絵を眺めている。
すると、王子が我々に気付いた。我々というよりはデッドアイに、と言うべきか。
「おや?こんなに美しい女性が王都にいたとは…」
そう言いながら王子は物色中のデッドアイの手を取る。
「邪魔しないでくれる?」
王子の手を振り払うと再び美術品を眺め始めた。王子は小さく笑うとデッドアイの進行方向に先回りして再び話しかけた。
「これは失礼した、何処の貴族の御令嬢かな?」
「は?私はベルライト家の者だけど、それが何か?」
「ベルライト……お前達知ってるか?」
王子は従者達に聞くが、3人とも首を振った。王子は皮肉を込めた笑いを顔に浮かべながらデッドアイの肩に手を置いた。
「どこの田舎貴族か知らんが、私を知らんとはな。私はこの国の第一王子、トーデス・ヴァシリウス・ペリファニアだぞ!」
あっそ、と軽くあしらって再び美術品を物色するデッドアイ。さすがに王子の顔も引き攣り始める。創士はあまりの無視されっぷりに『同情』と『ざまあみろ』が混ざり合った不思議な感情になった。
尚も話しかけ続ける王子に、そろそろデッドアイがキレそうなので、創士は仲裁に入ろうと近づいていった。
痺れを切らした王子がデッドアイの左腕を掴み引っ張るとデッドアイが右手で拳を作り振りかぶった…ところで間に割り込み、両手で2人を遠ざける創士。
「まぁまぁ2人とも落ち着いて。アイ、相手は王子なんですから、もう少し愛想良くしましょう?」
デッドアイは不満げに口を尖らせる。
「王子様も、ここは一つ穏便に…」
「下賤の者が触るなぁ!」
みぞおちを下から突き上げるように殴られた。
殴られたと思った。
鋭い痛みが込み上げてくる。
王子の手には赤く染まったナイフが握られていた。
自分の腹を見る。床に落ちた赤色を自分の血だと認識した時には、創士の体は糸の切れた人形のように地面に倒れた。
デッドアイは足下で倒れている人間を見た。
床を赤く染める人間を見た。
動かなくなった…創士を見た。
店内がまるで黒い霧にでも覆われたかのように黒いオーラで包まれ、空気が一気に冷える。
王子の従者達は異変に気付き、王子の前へと飛び出し剣を抜刀した。目の前の女の目が漆黒へと変わり瞳孔は赤く染まった。従者達の剣が小刻みに震える。
サスタスは予言の事を思い出した。
(この事ですか…!)
サスタスがデッドアイを止めようと踏み込んだ瞬間、従者達が美術品を壊しながら壁へと吹き飛んだ。王子は逃げ出そうと踵を返して走り出した。その背中をめがけデッドアイは手に魔力を纏い、心臓を貫こうとした。
それよりも僅かに早くサスタスの昏睡の魔法が王子に掛かりその場に崩れ落ちた。空を切ったデッドアイの貫手。次の行動に移る前にサスタスがデッドアイを羽交い締めにする。
「アイ様!王子を殺めてはなりません!」
大粒の涙を流し、唸り声をあげながらもがくデッドアイ。
「それよりも沖田様をレサーナに診せるのが先です!」
ハッと意識を取り戻すデッドアイ。もがくのをやめて立ちすくむ。サスタスは持ってきていたテレポート石を取り出した。
「アイ王女、これでミシオンの所へ飛んで、すぐにレサーナに診せましょう。そこの王子は捕虜にします。持ってきてくれますか?」
ミシオンに渡すようフィティアに頼んだ『テレポート石』。ミシオン側の石に座標を固定する事でサスタス側の石に魔力を込める事でゲートが展開できる。
デッドアイは何の感情もなく歩き出し、王子の足を持って引き摺りながらサスタスの足下に放り投げる。
サスタスがゲートを開くと、デッドアイは創士を抱き抱え急いでゲートに入っていった。
―――魔王城 ミシオンの部屋――――
ゲートから飛び出してきたデッドアイに驚いたミシオンとレサーナ。フィティアからテレポート石を渡された時に、『念の為』とレサーナを呼んでおくよう言われていたので、部屋でお茶会をしていた。
「アイ王女!どうし………沖田さん⁉︎」
さらに驚いたレサーナは2人に駆け寄り、創士を床に降ろすよう指示する。
腹部からの出血を確認したレサーナは、服をめくりあげ刺された部分を確認すると治癒魔法をかけ始めた。
「とりあえず傷は癒しました」
「大丈夫よね⁉︎死なないよね⁉︎」
「これ以上の出血は無いですが、人間を治したことが無いので分かりません。人間は魔族に比べ脆弱ですので…」
流した血までは戻らない。とにかく安静にさせて様子を見ましょうとレサーナは伝えた。
デッドアイは創士を部屋へと運び、ベットへと寝かす。ベットの傍に座ると創士の手を握って静かに泣き始めた。
自分が美術店に入ろうと言わなければ…
自分が王子をうまくあしらっていれば…
自分の行いを全て否定していく。人間の存在すら否定したくなる。でもそれは創士を否定する事であり、自分をも否定してしまう事になる。
いけない、先ずは前を向こう。後ろを振り返っていては好転するはずもない。デッドアイは強く手を握った。
(流した血までは戻らない……そうだ!)
デッドアイは部屋を飛び出し、第二王女の元へと向かった。
―――魔王城 離宮―――
「エル姉!ちょっと来て欲しいの」
「どうしたの?アイ」
第二王女エルブラッドは吸血鬼である。真紅のドレスを身に付けた彼女は、普段はあまり離宮から出る事はない。
「私の血をあげたい人がいるの!」
エルブラッドは首を傾げて頭の上にハテナを咲かす。
「どういう事かしら?」
「その人、怪我をして血が足りないから私の血を分けてあげたいの!」
あらあら大変とエルブラッドは、おっとりとした口調で言った。
「それで、その方はどちらに?」
「こっちよ!」
デッドアイは部屋を飛び出し走る。しかし後ろを見るとエルブラッドは走っているのか歩いているのか分からない速度で走っている。
「アイちゃん待って~」
アイはエルブラッドの手を掴んで走り出した。
「アイちゃん早~い!」
創士のように宙を泳いでいるが、さすがは吸血鬼といったところか、楽しんでいるようだ。
―――魔王城 創士の部屋―――
「この人よ!」
「あらあら、人間?」
エルブラッドは召喚の儀の時も離宮にいたので、創士を見るのは初めてだった。
「私も半分人間だし、大丈夫でしょ」
エルブラッドは少し困ったような顔で微笑みながらデッドアイを見つめた。
「100%安全かと言われると…自信はないわ。私が人間に血を与えると眷属になっちゃうけど、アイちゃんなら…大丈夫なのかしら?」
デッドアイの期待する目に押し負けてしまうエルブラッド。
「よほど大切な人なのね。……分かったわ。妹のために一肌脱ぎますか!」
エルブラッドはデッドアイと創士の腕を爪で斬りつけた。滴る血を操りデッドアイの血を創士の傷口へと流す。吸血鬼は血を操ることが出来る。デッドアイの腕から、まるで赤い糸のように創士の腕へと血が流れていく。
ある程度入れたところで傷口の血を凝固させるエルブラッド。
「入れ過ぎも良くないから、これで様子を見てみましょ?」
デッドアイはコクリと頷いて、再び創士の傍に座った。
「ねえねえ、この人アイちゃんの大事な人何でしょ?お姉ちゃんに、この人の事教えて欲しいな」
2人の女子トークは夜まで続いた。
創士は3日間、目を覚まさなかった。
デッドアイは言わずもがな、男店主に試食を貰ったり特別安くしてもらったりしている。サスタスも、おば様達に大人気でお菓子を貰ったり、情報を聞き出したりしている。
魔王側が何故人間側の通貨を持っているのかというと、ダンジョン等に攻めてきた冒険者などから頂いている。使えそうな武器等は使わせてもらい、着れない防具や装飾品等は売って金にする。あくまでも相手のフィールドに立って取引を行う。これが魔王城の最低限のルールだ。
柑橘系の果物『リネス』はすぐに見つかった。デッドアイが上目遣いで値切ると、店主はあっさり籠絡されてしまった。その他にも魔道具店に寄って、ガンバスに改造してもらえば掃除道具になりそうな魔力石を買ったり、ブラン王子に着けたら可愛くなりそうなアクセサリーを買ったり、まるで休日のショッピングのようだ。
(お忍びなのに、魔族ってのは豪胆だなぁ)
側から見ればただの人間にしか見えない。まぁ自然に振る舞うのが一番良いのは分かっているんだけども。
「見て!あれは美術品店かしら?ちょうど模様替えしたかったのよね!行きましょ!」
美術品で模様替えとは…。さすが王女である。
「模様替えの前に部屋を片付けません?」
「うっさいわねぇ!」
デッドアイは創士の手を引いて店内へと入る。店内には壺や絵画、装飾を凝らした鏡や彫刻などが置いてある。どうやら先客がいたようで、何やら店主に対して嫌味を言っているようだ。
「クソみたいな物しか置いてないじゃないか!前にもっと良いものを入荷しておけと言っただろう⁉︎」
店主はひたすら謝り続ける。どこかの貴族だろうか?お供に連れている3人の男は武装しており、店に入ってきた我々を監視している様だった。
店の入り口で、入り辛そうに貴族と店主のやりとりを眺める創士。そんなものはお構いなしとばかりにズカズカと店内に入って物色するデッドアイ。そんな創士の後ろからサスタスが耳元へ顔を近づけ小さな声で話す。
「あれは、この国の王子ですよ」
なるほど、それならお供が帯刀している事も高圧的な態度なのも納得がいく。関わり合うのも面倒なので、なるべく目を合わさないように隅の方の置物を眺める事にした。サスタスも同じ考えのようで、気配を消しつつ隅の方の絵を眺めている。
すると、王子が我々に気付いた。我々というよりはデッドアイに、と言うべきか。
「おや?こんなに美しい女性が王都にいたとは…」
そう言いながら王子は物色中のデッドアイの手を取る。
「邪魔しないでくれる?」
王子の手を振り払うと再び美術品を眺め始めた。王子は小さく笑うとデッドアイの進行方向に先回りして再び話しかけた。
「これは失礼した、何処の貴族の御令嬢かな?」
「は?私はベルライト家の者だけど、それが何か?」
「ベルライト……お前達知ってるか?」
王子は従者達に聞くが、3人とも首を振った。王子は皮肉を込めた笑いを顔に浮かべながらデッドアイの肩に手を置いた。
「どこの田舎貴族か知らんが、私を知らんとはな。私はこの国の第一王子、トーデス・ヴァシリウス・ペリファニアだぞ!」
あっそ、と軽くあしらって再び美術品を物色するデッドアイ。さすがに王子の顔も引き攣り始める。創士はあまりの無視されっぷりに『同情』と『ざまあみろ』が混ざり合った不思議な感情になった。
尚も話しかけ続ける王子に、そろそろデッドアイがキレそうなので、創士は仲裁に入ろうと近づいていった。
痺れを切らした王子がデッドアイの左腕を掴み引っ張るとデッドアイが右手で拳を作り振りかぶった…ところで間に割り込み、両手で2人を遠ざける創士。
「まぁまぁ2人とも落ち着いて。アイ、相手は王子なんですから、もう少し愛想良くしましょう?」
デッドアイは不満げに口を尖らせる。
「王子様も、ここは一つ穏便に…」
「下賤の者が触るなぁ!」
みぞおちを下から突き上げるように殴られた。
殴られたと思った。
鋭い痛みが込み上げてくる。
王子の手には赤く染まったナイフが握られていた。
自分の腹を見る。床に落ちた赤色を自分の血だと認識した時には、創士の体は糸の切れた人形のように地面に倒れた。
デッドアイは足下で倒れている人間を見た。
床を赤く染める人間を見た。
動かなくなった…創士を見た。
店内がまるで黒い霧にでも覆われたかのように黒いオーラで包まれ、空気が一気に冷える。
王子の従者達は異変に気付き、王子の前へと飛び出し剣を抜刀した。目の前の女の目が漆黒へと変わり瞳孔は赤く染まった。従者達の剣が小刻みに震える。
サスタスは予言の事を思い出した。
(この事ですか…!)
サスタスがデッドアイを止めようと踏み込んだ瞬間、従者達が美術品を壊しながら壁へと吹き飛んだ。王子は逃げ出そうと踵を返して走り出した。その背中をめがけデッドアイは手に魔力を纏い、心臓を貫こうとした。
それよりも僅かに早くサスタスの昏睡の魔法が王子に掛かりその場に崩れ落ちた。空を切ったデッドアイの貫手。次の行動に移る前にサスタスがデッドアイを羽交い締めにする。
「アイ様!王子を殺めてはなりません!」
大粒の涙を流し、唸り声をあげながらもがくデッドアイ。
「それよりも沖田様をレサーナに診せるのが先です!」
ハッと意識を取り戻すデッドアイ。もがくのをやめて立ちすくむ。サスタスは持ってきていたテレポート石を取り出した。
「アイ王女、これでミシオンの所へ飛んで、すぐにレサーナに診せましょう。そこの王子は捕虜にします。持ってきてくれますか?」
ミシオンに渡すようフィティアに頼んだ『テレポート石』。ミシオン側の石に座標を固定する事でサスタス側の石に魔力を込める事でゲートが展開できる。
デッドアイは何の感情もなく歩き出し、王子の足を持って引き摺りながらサスタスの足下に放り投げる。
サスタスがゲートを開くと、デッドアイは創士を抱き抱え急いでゲートに入っていった。
―――魔王城 ミシオンの部屋――――
ゲートから飛び出してきたデッドアイに驚いたミシオンとレサーナ。フィティアからテレポート石を渡された時に、『念の為』とレサーナを呼んでおくよう言われていたので、部屋でお茶会をしていた。
「アイ王女!どうし………沖田さん⁉︎」
さらに驚いたレサーナは2人に駆け寄り、創士を床に降ろすよう指示する。
腹部からの出血を確認したレサーナは、服をめくりあげ刺された部分を確認すると治癒魔法をかけ始めた。
「とりあえず傷は癒しました」
「大丈夫よね⁉︎死なないよね⁉︎」
「これ以上の出血は無いですが、人間を治したことが無いので分かりません。人間は魔族に比べ脆弱ですので…」
流した血までは戻らない。とにかく安静にさせて様子を見ましょうとレサーナは伝えた。
デッドアイは創士を部屋へと運び、ベットへと寝かす。ベットの傍に座ると創士の手を握って静かに泣き始めた。
自分が美術店に入ろうと言わなければ…
自分が王子をうまくあしらっていれば…
自分の行いを全て否定していく。人間の存在すら否定したくなる。でもそれは創士を否定する事であり、自分をも否定してしまう事になる。
いけない、先ずは前を向こう。後ろを振り返っていては好転するはずもない。デッドアイは強く手を握った。
(流した血までは戻らない……そうだ!)
デッドアイは部屋を飛び出し、第二王女の元へと向かった。
―――魔王城 離宮―――
「エル姉!ちょっと来て欲しいの」
「どうしたの?アイ」
第二王女エルブラッドは吸血鬼である。真紅のドレスを身に付けた彼女は、普段はあまり離宮から出る事はない。
「私の血をあげたい人がいるの!」
エルブラッドは首を傾げて頭の上にハテナを咲かす。
「どういう事かしら?」
「その人、怪我をして血が足りないから私の血を分けてあげたいの!」
あらあら大変とエルブラッドは、おっとりとした口調で言った。
「それで、その方はどちらに?」
「こっちよ!」
デッドアイは部屋を飛び出し走る。しかし後ろを見るとエルブラッドは走っているのか歩いているのか分からない速度で走っている。
「アイちゃん待って~」
アイはエルブラッドの手を掴んで走り出した。
「アイちゃん早~い!」
創士のように宙を泳いでいるが、さすがは吸血鬼といったところか、楽しんでいるようだ。
―――魔王城 創士の部屋―――
「この人よ!」
「あらあら、人間?」
エルブラッドは召喚の儀の時も離宮にいたので、創士を見るのは初めてだった。
「私も半分人間だし、大丈夫でしょ」
エルブラッドは少し困ったような顔で微笑みながらデッドアイを見つめた。
「100%安全かと言われると…自信はないわ。私が人間に血を与えると眷属になっちゃうけど、アイちゃんなら…大丈夫なのかしら?」
デッドアイの期待する目に押し負けてしまうエルブラッド。
「よほど大切な人なのね。……分かったわ。妹のために一肌脱ぎますか!」
エルブラッドはデッドアイと創士の腕を爪で斬りつけた。滴る血を操りデッドアイの血を創士の傷口へと流す。吸血鬼は血を操ることが出来る。デッドアイの腕から、まるで赤い糸のように創士の腕へと血が流れていく。
ある程度入れたところで傷口の血を凝固させるエルブラッド。
「入れ過ぎも良くないから、これで様子を見てみましょ?」
デッドアイはコクリと頷いて、再び創士の傍に座った。
「ねえねえ、この人アイちゃんの大事な人何でしょ?お姉ちゃんに、この人の事教えて欲しいな」
2人の女子トークは夜まで続いた。
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