7 / 10
第七話 同窓会
しおりを挟む
scene-1
歓談の時間が経つにつれ、皆すっかり昔の顔になっていた。卒業以来二十年振りに開催された小学校の同窓会。めっちゃ恐かった担任がまるっと好々爺になっていたり、密かに好きだった女子が赤ん坊を抱いてたり‥僕は水割りを片手に、そんな“同窓会あるある”にどっぷり浸っていた。仲間達としばらく話し込んでいて、ふと思い出した。当時クラスの男子を集めて結成‥でも、たった三日で解散してしまった“少年探偵団”のことを。
scene-2
江戸川乱歩が大好きだった。明智小五郎と怪人二十面相の知恵比べに夢中だった。そして素晴らしいアイデアが浮かんだ。
-少年探偵団を作るぞ!- 勿論僕が団長だ。手製の団員証を作りクラスの男子たちに配った。探偵とはなんぞやを得意げに話し、放課後は事件を探して町内を警備して回った。しかし‥そう、小説のような犯罪など現実には起きないのである。
scene-3
町はのんびりと平和だった。怪しい老婆やピエロの格好をした怪人などいるはずもなく、最初は乗り気だった皆もすぐに飽きてしまった。
と言うわけで、少年探偵団は三日で解散‥昔話ついでに「あの時のことを覚えているか?」と仲間達に尋ねてみると、概ね「あーそう言えば」くらいの反応。
だよな、そう納得した僕の肩をポンと叩く男がいた。
scene-4
振り向くと、ん?誰だ? と言うくらい覚えがない奴。
「これ、まだ持ってるよ」彼の手に、あの時僕が作った少年探偵団の団員証が!
そうか、思い出ってこういうものかも知れない。
意外な場所でひっそりと息づいている‥「じゃあ」そう言って別の輪に戻って行く彼の名を、僕は最後まで思い出せなかった。
end
歓談の時間が経つにつれ、皆すっかり昔の顔になっていた。卒業以来二十年振りに開催された小学校の同窓会。めっちゃ恐かった担任がまるっと好々爺になっていたり、密かに好きだった女子が赤ん坊を抱いてたり‥僕は水割りを片手に、そんな“同窓会あるある”にどっぷり浸っていた。仲間達としばらく話し込んでいて、ふと思い出した。当時クラスの男子を集めて結成‥でも、たった三日で解散してしまった“少年探偵団”のことを。
scene-2
江戸川乱歩が大好きだった。明智小五郎と怪人二十面相の知恵比べに夢中だった。そして素晴らしいアイデアが浮かんだ。
-少年探偵団を作るぞ!- 勿論僕が団長だ。手製の団員証を作りクラスの男子たちに配った。探偵とはなんぞやを得意げに話し、放課後は事件を探して町内を警備して回った。しかし‥そう、小説のような犯罪など現実には起きないのである。
scene-3
町はのんびりと平和だった。怪しい老婆やピエロの格好をした怪人などいるはずもなく、最初は乗り気だった皆もすぐに飽きてしまった。
と言うわけで、少年探偵団は三日で解散‥昔話ついでに「あの時のことを覚えているか?」と仲間達に尋ねてみると、概ね「あーそう言えば」くらいの反応。
だよな、そう納得した僕の肩をポンと叩く男がいた。
scene-4
振り向くと、ん?誰だ? と言うくらい覚えがない奴。
「これ、まだ持ってるよ」彼の手に、あの時僕が作った少年探偵団の団員証が!
そうか、思い出ってこういうものかも知れない。
意外な場所でひっそりと息づいている‥「じゃあ」そう言って別の輪に戻って行く彼の名を、僕は最後まで思い出せなかった。
end
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】バイトに行ったら、ある意味モテた。ただし、本人は、納得できない模様
buchi
ライト文芸
地味め、草食系の修平は、新しいバイト先で、顔立ちはキレイだが、かなり変人の葉山と一緒になった。葉山が一緒にいるばっかりに、恋愛レベル低めの修平が、次々とトラブルに巻き込まれる羽目に。修平は、葉山を追いかける女子大生サナギに付きまとわれ、友人の松木は葉山に誘惑される。だが、最大の被害者は、バイト先の社長だろう。眉をひそめて、成り行きを静観していた修平だったが、突然、自分が最悪の被害者になっていることに気が付いた………もう、葉山なんか死ねばいいのに。
二枚の写真
原口源太郎
ライト文芸
外からテニスの壁打ちの音が聞こえてきた。妻に訊くと、三日前からだという。勇は少年が一心不乱にテニスに打ち込む姿を見ているうちに、自分もまたボールを打ってみたくなる。自身もテニスを再開したのだが、全くの初心者のようだった壁打ちの少年が、たちまちのうちに腕を上げて自分よりうまくなっていく姿を信じられない思いで見つめる。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
クロネコノダンザイ
はじめアキラ
ライト文芸
「最近、猫が死ぬ事件が続いてるらしいんだよ。片方は野良だったらしいけど、もう片方は散歩中の飼い猫だったって」
黒猫のクロコの飼い主は、心配そうにこちらを見た。
望月町で続く猫の変死。どこか人ごとだと思っていたその危機は、クロコのすぐ傍にも迫っていた――。
大事な仲間を殺した犯人は誰なのか。そして、猫と人間は共生することができるのか。
フリーダムなボス猫、クロコの冒険が始まる。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる