雪に舞う桜吹雪

白凪雪緒

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4話 B級

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「あー、今日もスイパラですか?白凪先輩」
 驚いて振り向くと、そこには知らない少女…というには少し大人っぽいかな。美少女と美女の中間ぐらいか…?まぁ、だいたい16から18ぐらいの女が立っていた。
「はじめまして、B級のレイシャといいます。」
 そういって侍教会のマークを見せるレイシャといった女。
 あぁ、なるほど、侍か。
 最近では剣を振るえるくらい鍛錬した女性も多いし、最近となっては珍しくないレベルになったとはいえ、俺が幼稚園小学校の頃は少なくとも侍の数パーセントくらいしか女性侍はいなかったように感じる。
 正直今は存在しないが女性はくノ一とかやった方がいい気がするのは男女差別だろうか。
 俺はレイシャに向かい疑問を投げかけた。
「B級が俺に何の用?俺今ちょっと腹たってんだけど」
 なんで俺はこんなつっけんどんな返ししか出来んのだ。できるなら「やぁ、どうしたんだい?可愛いお嬢さん」とかくっせぇ台詞吐いてドヤ顔してみたいもんだ。
 エゴサとかしてるとたまに「人に当たり強いけど趣味がかわいいのがギャップ萌え」とか言ってる人もいるが。侍業だって一種の名売業なんだ。いつかみんなに優しいとか言われたいもんだ。
「いえ、私もよくスイパラ行くんですけど…あっちの方向確か女性専用のスイパラだったような~的な。」
 まるで「お前JKかよ」というツッコミを待っているかのように独特な延びのきいた声を出す彼女。
 俺の名前をインターネットで調べたら[もしかして:甘党]と出てくる(出て来ない)ぐらいの周知の事実だ。包み隠すこともないだろう。
「そうだよ…ここのスイパラ行こうとしたら女性専用だったんだよ…全く…」
 あぁ…こういう時一緒に行ける姉か妹でもいたら良かったんだがな。生憎俺は一人っ子。従兄弟に女の子が居るが、残念な事に他県住みだ。
 そして、次の瞬間彼女が吐き出す言葉に俺は甘えることにした。
「じゃあ、私も同伴なら入れますよね?」
 
「あぁ~うめぇ」
 そのスイパラは当たりだった。
 どれもこれも一級品にうまい。目からウロコというのはこういうことか。
 モンブランをフォークですくって口に運ぶ。ふわっとした舌触りに、程よく主張する栗の香り。クリームは乳脂肪分が低めのものを使っているんだろうか?なんにせよ、素晴らしいバランスで幸福を届けてくれる。
「ほんっと、幸せそうな顔で食べますよねぇ…よく掲示板とかに顔貼られてるの見ますけど」
 口の中に食べ物が入ってるのに喋るのは行儀が悪いので、数回咀嚼してから飲み込み、答える。
「逆に、美味い食べ物をわざわざ表情を殺して食べる理由が無いだろう。お通夜の後の食事会かっての」
 もう一口頬張る。美味しい。
「そうやって美味しそうに食べるから結構スイーツ店とかからcmのオファーとか来るんじゃないんですか?この新商品食べてくれ~みたいな。」
 どうやらこいつズカズカと人のプライバシーとか内面に突っ込んでくるタイプだな。こいつが居なかったら今日このスイーツを食べれなかったかもしれないから、とやかく言う権利はないのだが。
「結構DMとか来るぜ?ただ全部断ってるけど」
「なんで断るんです?お金が入ってくるし先輩は美味しいスイーツ食べれるし受けない理由無くないですか?」
 ちったぁ黙ってスイーツ食おうと思わんのか。あとスイパラ来て初っ端からナポリタンとかハンバーグとか食ってるんじゃない。罰当たりめ。
「あんなぁ…侍ってのは名売業とはいえアイドルとか芸能人ってわけじゃない。富、名声、権力。今や不純な理由で侍になる人だっているが、少なくとも俺は仕事と関係ない事で人気を得たり媚びたりしたくないんだよ。」
「うっわ、頭硬くないっすか?先輩。そんなんだからファンサできない人って言われるんですよ、ファンクラブとかで。」
「アホか。そもそも侍にファンクラブがあることがおかしいんだよ。俺はアイドルかっての」
「B級でもバライティ番組とかオファーくる時代ですし、アイドルと大差ないと思いますよ?」
 スイーツ取ってきます、といい席をたったレイシャ。
 っておい待て、スイーツと言ったろうが。カレーよそってるんじゃない。だいたいそういうのは口直しだろうが。仮にもここはスイパラだぞ。
 お、ちゃんとスイーツも取ってる…ナポレオンショートケーキか。さっき俺も食べたが予想通り美味かったぞ。っておい結局殆ど塩気のあるものじゃねぇか。何しとるんだおのれは。
 かたん、とトレーを俺の向かいの席に置き、椅子に座るレイシャ。
 …もう突っ込む気力も無くなってきた。ポテトチップスだろうが唐揚げだろうが勝手に食ってろ。そしていつか太ってしまえ。
 それはそうと、さっきの話を思い出す。
 侍はアイドル業…か。
 正直最近そんな感じがする。
 確かに一般人と触れ合い、人気を獲得し、上位に食い上がろうとする。
 本質はアイドルとなんら変わらないのかもしれない。間違っているのは俺の方だということか。
 そういえば…俺はどうして侍になったんだっけか。何せ三年前の事だ。所々あやふやになっても仕方がないと言うものだろう。
 ぼんやりと、記憶が蘇ってくる。
 あれは確か――
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