5 / 11
4話 B級
しおりを挟む
「あー、今日もスイパラですか?白凪先輩」
驚いて振り向くと、そこには知らない少女…というには少し大人っぽいかな。美少女と美女の中間ぐらいか…?まぁ、だいたい16から18ぐらいの女が立っていた。
「はじめまして、B級のレイシャといいます。」
そういって侍教会のマークを見せるレイシャといった女。
あぁ、なるほど、侍か。
最近では剣を振るえるくらい鍛錬した女性も多いし、最近となっては珍しくないレベルになったとはいえ、俺が幼稚園小学校の頃は少なくとも侍の数パーセントくらいしか女性侍はいなかったように感じる。
正直今は存在しないが女性はくノ一とかやった方がいい気がするのは男女差別だろうか。
俺はレイシャに向かい疑問を投げかけた。
「B級が俺に何の用?俺今ちょっと腹たってんだけど」
なんで俺はこんなつっけんどんな返ししか出来んのだ。できるなら「やぁ、どうしたんだい?可愛いお嬢さん」とかくっせぇ台詞吐いてドヤ顔してみたいもんだ。
エゴサとかしてるとたまに「人に当たり強いけど趣味がかわいいのがギャップ萌え」とか言ってる人もいるが。侍業だって一種の名売業なんだ。いつかみんなに優しいとか言われたいもんだ。
「いえ、私もよくスイパラ行くんですけど…あっちの方向確か女性専用のスイパラだったような~的な。」
まるで「お前JKかよ」というツッコミを待っているかのように独特な延びのきいた声を出す彼女。
俺の名前をインターネットで調べたら[もしかして:甘党]と出てくる(出て来ない)ぐらいの周知の事実だ。包み隠すこともないだろう。
「そうだよ…ここのスイパラ行こうとしたら女性専用だったんだよ…全く…」
あぁ…こういう時一緒に行ける姉か妹でもいたら良かったんだがな。生憎俺は一人っ子。従兄弟に女の子が居るが、残念な事に他県住みだ。
そして、次の瞬間彼女が吐き出す言葉に俺は甘えることにした。
「じゃあ、私も同伴なら入れますよね?」
「あぁ~うめぇ」
そのスイパラは当たりだった。
どれもこれも一級品にうまい。目からウロコというのはこういうことか。
モンブランをフォークですくって口に運ぶ。ふわっとした舌触りに、程よく主張する栗の香り。クリームは乳脂肪分が低めのものを使っているんだろうか?なんにせよ、素晴らしいバランスで幸福を届けてくれる。
「ほんっと、幸せそうな顔で食べますよねぇ…よく掲示板とかに顔貼られてるの見ますけど」
口の中に食べ物が入ってるのに喋るのは行儀が悪いので、数回咀嚼してから飲み込み、答える。
「逆に、美味い食べ物をわざわざ表情を殺して食べる理由が無いだろう。お通夜の後の食事会かっての」
もう一口頬張る。美味しい。
「そうやって美味しそうに食べるから結構スイーツ店とかからcmのオファーとか来るんじゃないんですか?この新商品食べてくれ~みたいな。」
どうやらこいつズカズカと人のプライバシーとか内面に突っ込んでくるタイプだな。こいつが居なかったら今日このスイーツを食べれなかったかもしれないから、とやかく言う権利はないのだが。
「結構DMとか来るぜ?ただ全部断ってるけど」
「なんで断るんです?お金が入ってくるし先輩は美味しいスイーツ食べれるし受けない理由無くないですか?」
ちったぁ黙ってスイーツ食おうと思わんのか。あとスイパラ来て初っ端からナポリタンとかハンバーグとか食ってるんじゃない。罰当たりめ。
「あんなぁ…侍ってのは名売業とはいえアイドルとか芸能人ってわけじゃない。富、名声、権力。今や不純な理由で侍になる人だっているが、少なくとも俺は仕事と関係ない事で人気を得たり媚びたりしたくないんだよ。」
「うっわ、頭硬くないっすか?先輩。そんなんだからファンサできない人って言われるんですよ、ファンクラブとかで。」
「アホか。そもそも侍にファンクラブがあることがおかしいんだよ。俺はアイドルかっての」
「B級でもバライティ番組とかオファーくる時代ですし、アイドルと大差ないと思いますよ?」
スイーツ取ってきます、といい席をたったレイシャ。
っておい待て、スイーツと言ったろうが。カレーよそってるんじゃない。だいたいそういうのは口直しだろうが。仮にもここはスイパラだぞ。
お、ちゃんとスイーツも取ってる…ナポレオンショートケーキか。さっき俺も食べたが予想通り美味かったぞ。っておい結局殆ど塩気のあるものじゃねぇか。何しとるんだおのれは。
かたん、とトレーを俺の向かいの席に置き、椅子に座るレイシャ。
…もう突っ込む気力も無くなってきた。ポテトチップスだろうが唐揚げだろうが勝手に食ってろ。そしていつか太ってしまえ。
それはそうと、さっきの話を思い出す。
侍はアイドル業…か。
正直最近そんな感じがする。
確かに一般人と触れ合い、人気を獲得し、上位に食い上がろうとする。
本質はアイドルとなんら変わらないのかもしれない。間違っているのは俺の方だということか。
そういえば…俺はどうして侍になったんだっけか。何せ三年前の事だ。所々あやふやになっても仕方がないと言うものだろう。
ぼんやりと、記憶が蘇ってくる。
あれは確か――
驚いて振り向くと、そこには知らない少女…というには少し大人っぽいかな。美少女と美女の中間ぐらいか…?まぁ、だいたい16から18ぐらいの女が立っていた。
「はじめまして、B級のレイシャといいます。」
そういって侍教会のマークを見せるレイシャといった女。
あぁ、なるほど、侍か。
最近では剣を振るえるくらい鍛錬した女性も多いし、最近となっては珍しくないレベルになったとはいえ、俺が幼稚園小学校の頃は少なくとも侍の数パーセントくらいしか女性侍はいなかったように感じる。
正直今は存在しないが女性はくノ一とかやった方がいい気がするのは男女差別だろうか。
俺はレイシャに向かい疑問を投げかけた。
「B級が俺に何の用?俺今ちょっと腹たってんだけど」
なんで俺はこんなつっけんどんな返ししか出来んのだ。できるなら「やぁ、どうしたんだい?可愛いお嬢さん」とかくっせぇ台詞吐いてドヤ顔してみたいもんだ。
エゴサとかしてるとたまに「人に当たり強いけど趣味がかわいいのがギャップ萌え」とか言ってる人もいるが。侍業だって一種の名売業なんだ。いつかみんなに優しいとか言われたいもんだ。
「いえ、私もよくスイパラ行くんですけど…あっちの方向確か女性専用のスイパラだったような~的な。」
まるで「お前JKかよ」というツッコミを待っているかのように独特な延びのきいた声を出す彼女。
俺の名前をインターネットで調べたら[もしかして:甘党]と出てくる(出て来ない)ぐらいの周知の事実だ。包み隠すこともないだろう。
「そうだよ…ここのスイパラ行こうとしたら女性専用だったんだよ…全く…」
あぁ…こういう時一緒に行ける姉か妹でもいたら良かったんだがな。生憎俺は一人っ子。従兄弟に女の子が居るが、残念な事に他県住みだ。
そして、次の瞬間彼女が吐き出す言葉に俺は甘えることにした。
「じゃあ、私も同伴なら入れますよね?」
「あぁ~うめぇ」
そのスイパラは当たりだった。
どれもこれも一級品にうまい。目からウロコというのはこういうことか。
モンブランをフォークですくって口に運ぶ。ふわっとした舌触りに、程よく主張する栗の香り。クリームは乳脂肪分が低めのものを使っているんだろうか?なんにせよ、素晴らしいバランスで幸福を届けてくれる。
「ほんっと、幸せそうな顔で食べますよねぇ…よく掲示板とかに顔貼られてるの見ますけど」
口の中に食べ物が入ってるのに喋るのは行儀が悪いので、数回咀嚼してから飲み込み、答える。
「逆に、美味い食べ物をわざわざ表情を殺して食べる理由が無いだろう。お通夜の後の食事会かっての」
もう一口頬張る。美味しい。
「そうやって美味しそうに食べるから結構スイーツ店とかからcmのオファーとか来るんじゃないんですか?この新商品食べてくれ~みたいな。」
どうやらこいつズカズカと人のプライバシーとか内面に突っ込んでくるタイプだな。こいつが居なかったら今日このスイーツを食べれなかったかもしれないから、とやかく言う権利はないのだが。
「結構DMとか来るぜ?ただ全部断ってるけど」
「なんで断るんです?お金が入ってくるし先輩は美味しいスイーツ食べれるし受けない理由無くないですか?」
ちったぁ黙ってスイーツ食おうと思わんのか。あとスイパラ来て初っ端からナポリタンとかハンバーグとか食ってるんじゃない。罰当たりめ。
「あんなぁ…侍ってのは名売業とはいえアイドルとか芸能人ってわけじゃない。富、名声、権力。今や不純な理由で侍になる人だっているが、少なくとも俺は仕事と関係ない事で人気を得たり媚びたりしたくないんだよ。」
「うっわ、頭硬くないっすか?先輩。そんなんだからファンサできない人って言われるんですよ、ファンクラブとかで。」
「アホか。そもそも侍にファンクラブがあることがおかしいんだよ。俺はアイドルかっての」
「B級でもバライティ番組とかオファーくる時代ですし、アイドルと大差ないと思いますよ?」
スイーツ取ってきます、といい席をたったレイシャ。
っておい待て、スイーツと言ったろうが。カレーよそってるんじゃない。だいたいそういうのは口直しだろうが。仮にもここはスイパラだぞ。
お、ちゃんとスイーツも取ってる…ナポレオンショートケーキか。さっき俺も食べたが予想通り美味かったぞ。っておい結局殆ど塩気のあるものじゃねぇか。何しとるんだおのれは。
かたん、とトレーを俺の向かいの席に置き、椅子に座るレイシャ。
…もう突っ込む気力も無くなってきた。ポテトチップスだろうが唐揚げだろうが勝手に食ってろ。そしていつか太ってしまえ。
それはそうと、さっきの話を思い出す。
侍はアイドル業…か。
正直最近そんな感じがする。
確かに一般人と触れ合い、人気を獲得し、上位に食い上がろうとする。
本質はアイドルとなんら変わらないのかもしれない。間違っているのは俺の方だということか。
そういえば…俺はどうして侍になったんだっけか。何せ三年前の事だ。所々あやふやになっても仕方がないと言うものだろう。
ぼんやりと、記憶が蘇ってくる。
あれは確か――
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる