34 / 35
【番外編】彼女の弱点?~後編~
しおりを挟む「ぁっ!?」
柔らかで、それでいて弾力と重量を感じさせるふくらみ。それに両側から挟まれて。
信じられないくらいの快感に包み込まれる。内側に侵入するのとはまた全然違う快感だった。
「んっ」
一体彼女のどこにそんな知識があったのか、いや、長くを生きているから、使わないけれど無駄に知識だけは溜まっていたのかもしれない。けれど、こんなことをしてもらったのは初めてだった。
「ア、アンヌ」
リリアンヌがうつぶせの不自由な体勢ながら、己の乳房を抱き上げて上下させる。そのうちに先走りの汁が潤滑油代わりになって、滑りを助け出す。くちょくちょといやらしい音が彼女の谷間から響いている。
混乱と快感で、サフィールはもう為されるがままだった。
視線を落とせば、熱っぽい表情で懸命に動いている彼女が飛び込んで来る。谷間からサフィールの屹立が時折頭を覗かせ、そうして彼女の唇を掠める。えげつない光景だ。
その唇の柔らかさと、そこから零れる熱い吐息がどんどんとサフィールを追い込んで来る。
どんどんと熱く、硬く。己が反応しているのが分かる。
「あ、っく、アンヌ」
堪らなかった。
酔ったリリアンヌが、まさかここまで大胆になるとは。
サービスがすごくて驚く。
今日、自分は運を使い果たしてるんじゃないだろうか。
明日死ぬんじゃないだろうか。
そんなことすら思う。
口でしてって頼んだら、してくれたりするのだろうか。
邪まな考えが浮かんで、いや、これ以上を望んだら本当に何か怖いしっぺ返しが待っているのではと欲望を追い払う。今、この時点でも十分過ぎるほど気持ち良い。
「あ、リリアンヌ、待っ、もう!」
平素ではあり得ない展開に、我慢がききそうになかった。ビクビクと胸の間で己が脈打つのを、これ以上はコントロールできない。
「アンヌっ!」
無理矢理に引き剥がしたのと、熱い飛沫が放たれたのはほぼ同時だった。大半は彼自身やシーツの上に零れるが、やはり一部彼女の胸と頬を汚してしまっていた。
自分が彼女を汚しているという現実にぞくりとするのと同時に、いやこれはいけないという気持ちも湧いてくる。
「アンヌ…………」
ぺたり、自分の頬に触れる彼女を見て、正気が戻った。
「わぁ、ごめん! ごめんなさい! 待って、すぐ拭く!」
丁度いいものがないので、慌ててシャツを脱ぐ。
その間に彼女は口の端をペロリと下で拭って、眉を寄せた。正直な反応を見せる彼女が、サフィールは好きだ。そして同時に、そんなもので汚してしまって申し訳ないとも思う。
「ごめんごめんごめん」
頬を、胸を、手早く拭う。
その行為に、邪心は一切なかった。ただ、早く綺麗にしなくてはと、それだけを考えていたはずだ。
だが。
「サフィ」
「は、はい!」
「さっきの今で、どうしようもないやつだな」
「はい?」
しな垂れかかられて、またベッドの上に仰向けに。掠めるような口付けは、苦笑の吐息を唇に落としていく。
「もうこんなに反応して」
ずるっと彼女がサフィールの腹の上でずり下がると、何を指摘されているのかは分かった。
「こまったヤツだ」
双丘の割れ目に押し当てられているのは、先ほど放ったばかりのクセにもう勢いを取り戻している自身だった。邪心を捨てきれていなかったらしい。いや、これは健康的なただの生理反応か。どちらにせよ、自覚させられたら欲は溢れ出るばかりなのだが。
彼女が腰を持ち上げ、先端を入口で捕える。
もしかしなくても、彼女はまだ頑張ってくれるらしかった。
「アンヌ……」
柔らかな入口。ゆっくりと落とされる腰。
「んっ!」
少し苦しそうに歪む彼女の顔。
「っくぅ」
そんなつもりはないのだろうが、もったいつけるようにゆっくりゆっくり猛々しい熱が蜜壺に収められていく。なんて卑猥な光景。くびれた彼女の腰が艶かしくくねり、白い乳房はふるりと揺れる。
「っは!」
やがて彼女は彼を全て自身の内に収め、しばらくその質量に己を慣らすように彼の上でじっと動きを止めた。自重が加わるせいか、いつもより当たりが違うらしい。色めいた吐息が時折零れ落ちる。
「アン、ヌ」
呼びかけたら、それに応えるように彼女は動き始めた。上下する度に、蜜口からじゅぷっと卑猥な音が鳴る。
「は、あ、んん」
何もかもがサフィールを昂ぶらせていた。
自分の上に跨る彼女が、自らの意思で腰を振っている。恐ろしく色めいた視線を自分に浴びせかける。
収められた自身は彼女にきゅうきゅうと締め付けられ、彼女の奥の奥を抉じ開けんばかりに突き上げる。激しくなるうねりは、彼の子種を必死に強請っているようだった。
「あぁ、アンヌアンヌアンヌ」
「んぁっ、ふふ、お前、ほんとーに私のこと、すきですきでたまらないんだなぁ?」
内側での反応を見てそう判断しているのか、リリアンヌが満足そうにそう漏らす。
「うん、アンヌ、好き。大好き。愛してる」
何もかもが最高だった。
最初、リリアンヌが机に突っ伏した時はどうしようかと焦ったが、結果美味しいことになっている。まさか酔ったリリアンヌがここまで積極的に、そしてここまで素直に言葉を零してくれるとは思わなかった。
これで酔ったリリアンヌが翌日記憶を失くしているのなら、たまにはこういのもアリなのではと、そんなことまで思ってしまう。記憶が残っていたら、リリアンヌは大いに自分の言動を悔い、盛大にへそを曲げ、忘れろとサフィールに迫るのだろうが。
「んっ! あ、サフィ!」
快感を、ただ享受するだけではもう足りなかった。
サフィールはリリアンヌの腰を掴み、自らも突き上げるようにして腰を動かす。
「あぐっ、や、んんーっ!」
奥を強く突かれて、彼女はその刺激に大きく身を捩る。けれどサフィールはそんな彼女を逃がさまいと、細腰を掴んだ手を離すことなく、更に突き上げを激しくする。
「あ、あぁ!」
ナカのうねりが強くなって、彼女がどんどん高みに昇っているのが手に取るように分かった。お互いがお互いを貪れるだけ貪り、得られる全てを得ようとしている。
「ひ、あ、あぁ――っ!」
「ぐっ!」
絶頂に放り投げられたのは、多分同時だった。サフィールは一度目とそう変わりない勢いで、彼女のナカへ白濁を遠慮なく放つ。
が、次の瞬間―――――
「!?」
今まで経験したことのない感覚が、サフィールを襲った。
「あっ!?」
注ぎ込まれる白濁に、彼女の内側が反応する。
それはいつものこと。全てを飲み干そうと、彼女のナカが強いうねりを見せる。
でも、それだけではなかった。
「アンヌ!?」
「ふふっ」
搾り取られているのは、飛沫だけではない。そうではなくて、もっと別の。
身体を襲う虚脱感。何かが抜けていく感覚。
何と言ったらいいのだろう、気力そのものを吸い取られている、みたいな。
混乱する頭で、けれど一つの単語が弾き出される。
精気。
そう、それだ。
精気を吸い取られている。まさにそういう感覚。
「!?」
サフィールは愕然とした。そんなまさか、と。
だって彼女は処女を大切にする魔女だ。交わりを重んじる魔女とは違う。サフィールが一線を超えたことで、彼女は幾度も幾度もその身体を彼に委ねてはくれたけれど、それは彼女の魔女としての在り方を根本的に揺らすものではない。
彼女の術の練り方は、今までと変わりがないはずだ。サフィール以外との男との交わりは、等しく毒のはずだ。彼女は、だから、男の精気など必要としていないし、そういうものを利用する方法を身に付けていないはずだ。
なのに。
これはまさに、交わりを得意とする魔女のやり口なのでは、と思った。サフィールは今確実に、身の内にある活力という活力を吸い取られていると、断言できる。
「ア、アンヌ! 待って、これは駄目、っぐ!」
制止をかけても、リリアンヌに容赦はなかった。一度放った精は出し切るまで止めることなどできないし、それに合わせるようにして身体の内から力もぐんぐん吸われる。
なされるがまま。
腰を掴んでいた手に力が入らなくなって、パタリとシーツの上に落ちる。リリアンヌには容赦がない。
霞んでいく意識の隅で、サフィールは後悔した。
リリアンヌがこんなに積極的になってくれるならたまにはアリだなんて、調子に乗っていた自分を呪った。
これは、駄目だ。あまりに強烈過ぎる。
やはり魔女から何かを得るには、それなりの代償が必要なのだ。
身を以って、そのことを学ぶ。
「サフィール?」
翌日、ぼんやりと目を開けると、リリアンヌに覗き込まれていた。
「お前、どうしたの。調子が悪い?」
きょとんとした顔で彼女はそう言い、彼の額に手を当てる。
「熱はないみたいだけど」
「あの、ちょっと…………」
身体が、信じられないくらいダルかった。一眠りしたくらいでは回復できなかったらしい。
昨晩、一度は気を失ったものの、しばらくして意識を取り戻した。酷く重い身体を何とか起こすと、彼に寄り添うようにして彼女も意識を手放していた。
そこからの奮闘は思い返すにも涙が滲んできそうである。
サフィールは何とか身体を引き摺って、彼女の身体を清め、新しい服を着させた。自分の身も最低限さっぱりさせ、目覚めた彼女が不審に思わないようにもたつきながら服を着た。そうして、あとはもう倒れ込むように横になった。意識は一瞬後にはふつりと途切れたように思う。
「日頃の疲れでも出たか?」
リリアンヌは力なく呟く彼を見下ろして、小首を傾げた。
「仕方のないヤツだな」
それから一つ嘆息して、身を翻す。
「今日はじっとしておけ。食欲はある? 何か温めて持ってくるけれど」
「あの、リリアンヌ」
「なに」
てきぱきと動く彼女の背に声をかける。
「あの、昨日のことって」
この調子だと覚えていなさそうだが。
「…………煮込み料理を食べた辺りから判然としない」
振り返った彼女は、眉間にシワを寄せてそうボソリと言った。
「お前、もう二度と使うんじゃないよ。絶対、二度と」
「はい、もう絶っっっ対使いません」
身を以って、その恐ろしさを経験した。精気を吸われるというのは、びっくりするくらい一方的でどうしようもない現象だった。
彼女があんなことをできたのは、酔った勢いが起こした偶々のことなのか、いや、酔うと問答無用で使えるようになるものなのか。そこら辺のことは判然としないが、とにかく危険極まりないということはよく分かった。
「あの、ということは何も、覚えて……」
いないと言うことか。
「――――なにか、あったか?」
言い差したら、探るような目でこちらを見つめてくる。
覚えていないなら、その方がいい。
知らされたら、思い出してしまったら、彼女はひどくショックを受けるだろうし、サフィールとしても最終的に情けない結果になったので知られたくないような気はした。
積極的で魅力的だった彼女だけを、そっと心の内にしまっておきたい。
「いや、なんにも、すぐに寝ちゃったから」
「そうか?」
彼女は少しこちらを窺う素振りを見せたが、それは僅かな時間だった。
「まぁいい。今日はしっかり面倒をみてやる」
ぽんぽんと頭を撫でらえる。
「しっかり寝たからか、今日はやけに調子がいいし」
それは、彼女がサフィールの精気を吸ったせいに違いなかった。よく見れば、いつもより肌つやがいいような気もする。
部屋を出て行こうとする魔女に、彼は声をかけた。
「アンヌ、お鍋の料理はアンヌは絶対に食べちゃ駄目だからね」
せっかく美味しくできたと思ったけれど、アレは駄目だ。全て自分が平らげなくては。もう二度と、彼女を酔わせてはいけない。
「分かってるよ」
彼の疲労も知らず、彼女はくすりと苦笑した。
「いいから、大人しくしておいで」
サフィールは誓う。
もう二度と、リリアンヌにルテシアの実を口にさせてはいけない。そう簡単に、酔わせてはいけない。これは駄目だ。
精気を吸われるのが嫌なのではない。リリアンヌのためになるのなら、自分の精気などいくらでも渡す。
でも、その後の自分がここまで使い物にならなくなるのが駄目だ。
リリアンヌの世話は何から何まで全て自分がしたいのに、すっかり役立たずである。逆にリリアンヌがサフィールの面倒をあれこれみることになっている。
たまには、世話を焼かれるのも悪くないかもしれない。けれど、自分の本分は彼女の助けとなることだ。彼女の暮らしを円滑に回すことだ。彼女の役に立つことだ。
彼女の世話をすることは、彼女のために何かすることは、彼の喜びそのものなのだから。
「過ちは、二度と、繰り返さない」
ベッドの中で拳を握りながら、サフィールは決然とそう呟いたのだった。
10
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041


【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる