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4.魔女の純潔
しおりを挟むそして、今。
強引で執拗なキスにすっかり身体と思考の自由を奪われたリリアンヌは、軽々と寝台まで運ばれ、サフィールに組み敷かれていた。
性急に取り払われた黒のドレスは途中から裂け、多分もう使いものにならない。上半身はすっかり肌をさらけ出し、二つのたわわなふくらみは呼吸に合わせ揺れてみせる。
「ね、見て、アンヌ。アンヌのココ、すごいことになってるね?」
サフィールが愉快そうに視線を彼女のふくらみの頂きへ向ける。
「おっ前、縊り殺されたいか!」
真っ赤になりながらリリアンヌは叫んだ。
冗談抜きで、この事態が鎮静化したら、一も二もなく激情のまま呪い殺してしまいそうである。その前に、自分の方が怒りが過ぎて憤死するかもしれないと、彼女はふと、本気で思った。
「アンヌがちゃんと感じてくれてるみたいで、安心してるんだよ」
それからサフィールはもっと感じさせてあげるね、とふざけたことを言ったと思ったら、赤く熟れピンと硬く勃ち上がったソコをおもむろに口腔に含んだ。
「――――~っっ!!」
腰からとんでもない衝動が這い上がり、全身に鋭く拡散される。
気が違いそうな快感だった。それでも、彼女は何とか声を堪えた。
出したくない。出せる訳がない。屈服なんて、できる訳がない。
「ははっ、アンヌ、今ちょっとイッちゃった?」
けれどサフィールは容赦がない。
一瞬解放された頂きは、すぐにまた熱い口腔に含まれ、吸い上げられる。時折甘噛みされ、舌先でころころと転がされる。それだけでもどうにかなりそうなのに、もう一方の頂きは二本の指に挟まれくにくにと転がされ、揉みしだかれたふくらみは面白いくらいにサフィールの思うままに形を変える。
「っは、」
息が乱れる。もう訳が分からない。サフィールはどこかネジが飛んだみたいな、一本線が切れたみたいな状態だ。出て行けと言ったのが、リリアンヌの想像以上に耐え難い衝撃だったのか。
「! や、やめ」
反対の手が下半身に伸びる。下着に触れてしまう。
くちゅり――――
布地に触れられたら、とんでもない音がした。
そこは一度触れられてしまえば、知らないフリなどできないほどに深く深くぬかるんでいた。
「ふっ、すごい音」
くちょり、くちゅん、音を鳴らすことを楽しむように布地越しに指が往復する。その動きにつられて、また奥から愛液が溢れてくる。果てがない。
「うぅ……!」
じんじんと痺れた感じが辛い。けれどそれを解決するためにサフィールを受け入れる訳にはいかない。唸り声を上げた彼女に、サフィールが訊いてくる。
「下着、濡れてて気持ち悪い?」
訊いておいて、返事は待たない。勝手にしゅるりとサイドの紐が解かれて、ぐちょぐちょに濡れそぼった下着が引き抜かれる。
サフィールがぐいとリリアンヌの両脚を開かせる。とんでもない格好にさせられて、それだけでも気絶しそうなほどなのに、サフィールはさらに秘所に向けて頭を潜り込ませた。
「やだやめろそんなとこ……!」
見るな、嗅ぐな、触るな……!
身を捩るもシーツの上を腰が滑るだけで、それ以上には何にもならない。何にもならないどころか、逆にその動作は誘っているかのように映りサフィールの興奮を煽っていた。
「アンヌ、いい匂い……」
「いっ……!?」
「見てるだけでもうとろっとろだって分かるよ」
「っ……!」
「ほら、花芽ももうこんなにぷっくり膨れて。まだロクに触ってないよね?」
「お前、もう黙れ……!」
どれだけ辱めれば気が済むのだ。どうしてここまでしなければならないのだ。
誰にも見られたことのない場所を凝視されて、それだけでもう頭が沸騰しそうだ。なのにサフィールはまぁよく喋る。黙れと言ってもまだ言葉を続けた。
「アンヌ、安心して」
この期に及んで安心しろなどと。
「気持ちイイしか分からなくしてあげる。経験はないけど、知識なら十分だから」
そんなロクでもない知識、どこで身につけて来た……!
リリアンヌの心の絶叫は、結局音になることはなかった。次の瞬間、サフィールが秘所に食らい付いたからだ。
「ひっ、あぁ……っ!」
ずっと我慢していた声が、今度こそ耐え切れず漏れ出してしまった。一度漏れてしまえば、もう止まらない。我慢できない。
「あ、あ、あぁ!」
秘裂を下から上へと舐め上げられ、すっかり充血した花芽を舌先で突かれ食まれ、そして蜜壺に舌を捩じ入れられた。恐怖と一緒に、それを上回る快感が襲って来る。
「や、やめ、あ、あんん!」
じゅるっと蜜を吸い上げられる。当然自分でも触れたことなどない隘路を、肉厚な舌が押し広げ這い回る。突き入れられた舌とは別に、指が花芽を潰して摘まんで弄ぶ。
「それ、あぁそれ、ひっ、止め、あっ、――――っっ!!」
あっという間にリリアンヌは高みに追い上げられイッてしまった。
「ひう!?」
けれどそこで動きは止まらず、息吐く間もなくまた花芽をいじられ、舌を、指を隘路に押し込まれ何度も何度もイかされ続ける。
本当にどこで身に付けてきたのだ、こんなテクニック。
連続で数えきれないほどイかされてから、ようやくサフィールの動きが緩まった。ぽすりと彼女の上にのしかかり、それから耳元でゆっくり告げた。
「リリアンヌ、愛してる」
霞みがかっていた意識が、一息に現実に引き戻された。
馬鹿じゃないかと思った。
「……出て行きたく、ないからって」
愛してるなどと、そんな口から出任せを。
「アンヌ、逆だよ。アンヌが好きだから、愛してるから出て行きたくないんだ」
「――――サフィ、お前のそれは、刷り込みだろう」
サフィールの世界には今やリリアンヌしかいない。惑いの森での暮らしは、他者との関わりを極端に減らす。
リリアンヌは気まぐれではあるが、サフィールを拾ってやった。血を分け与え、食事を、衣服を寝床を与えた。
リリアンヌはここで、サフィールの絶対的支配者だった。命の恩人だった。恩人だったけれど、生かすも殺すも常に彼女の手にかかっていた。
その絶大さを、サフィールは別のものにすり替え、無理矢理綺麗なものにしようとているだけだ。
「ひな鳥によくあるヤツだ。お前の意思とは別に、無意識に私に執着してしまっているだけだろう。思い込みだ。しっかりしろ」
「アンヌの方こそ、しっかりしてよ。思い込みで誤魔化してるのはアンヌの方だ」
サフィールが眉を寄せる。
「ねぇアンヌ、本当にオレが要らない?」
「――――――――要らない。だから出て行けと言った」
「じゃあどうしてただ一択を与えないの。気まぐれは終わりだ、尽崖の贄になってこ来いって」
人間社会に戻って良いなんて、言うの。
今度はリリアンヌが眉を寄せた。
「……お前は私をどこまで極悪非道な存在にすれば気が済むんだ」
そしてそんな極悪非道扱いしている相手に、愛してるなんて嘯くのか。
別にそういうつもりじゃない、とサフィールは言った。
「そうだよ、リリアンヌは優しい。だから、オレに死ねと言わない」
「優しいとはまた違うが……」
「だってそうでしょう。じゃあどうして今までずるずる生かしてきたの」
「それは、たまたまこれといった機会がなかっただけで」
「嘘ばっかり」
サフィールの手がリリアンヌの頬を撫で擦る。
「今まで何度も何度もオレを切り捨てる機会はあったクセに」
「何を」
「オレが川向こうの怪鳥に襲われた時、どうしてそのまま放ってエサにしてしまわず助けてくれたの? 同業者が愛玩用にオレを売れと大金を出して来た時、どうしてそれを跳ね除けて、三年にも亘る長い呪い合いをしてオレを守ったの? オレが惑いの森特有の流行病に犯された時、どうしてこの長くて艶やかで美しく、そして呪まじない物として価値のある髪をバッサリ切って、薬の精製法と引き換えにしてくれたの?」
「――――――――――――」
「髪、まだあの頃の長さまで戻らないね」
するり、長い指が彼女の見事な髪を梳く。髪の長さは背中の中ほど。あの頃は、腰の近くまであったような気がする。
リリアンヌは渋面に渋面を重ねて、呻くように言い捨てた。
「自分のものに手を出されるのが不愉快だっただけだ……!」
それだけの、こと。そう、気まぐれの結果。
「そう……!」
なのに回路の切れたサフィールは、何故かここでパッと笑顔を見せた。意味が分からない。
「そう、オレはアンヌのものなんだよね」
アンヌ覚えてる? とうっとりと囁かれる。
「アンヌがオレを拾った時のこと。アンヌ、オレに何て言った?」
「そんな、細かいこと……」
何年生きていると思っているのだ。見た目の何倍も何倍も生きているのだ。小さい発言の一つ一つまで覚えていられない。
「私のために美味しくおなりって、そう言ったんだ」
そう言われれば、言ったかもしれない。生き延びて、健康体になって、尽崖の魔性が目を奪われるほどの、美味しい生贄になれと。
「だからね、アンヌ。確かめて? 確かめてから、放り出すかどうか決めて?」
「は? って、ひっ……!」
不意に蜜口に硬い尖りが当てられリリアンヌは本当に身を竦ませた。
「サフィ、やめろ、それは本当に……!」
魔女には色々な分類の仕方があるが、その内の一つに処女性を重んじるかどうかという分類がある。
リリアンヌは、処女だ。
他者の気を自分の内側に決して入れないことで、高濃度な術を練り完成させる。
逆に、男の精を絞り尽くして自分の力にするタイプもいる。その手のタイプの魔女は、むしろ積極的に異性と交わる。
どちらを選ぶかは、どちらの方法が自分に合っているかという問題なのだ。魔女は本能で自分がどちらに向いているのかを判断して、行く末を決める。
リリアンヌは、前者のタイプだった。だから本来他者を必要としない。誰かと暮らしを共にすることを好まない。自分の術が、孤独と親和性が高いことを理解しているから。
永くを過ごしてきた今、後者のタイプに最早鞍替えはできない。そういう魔術の練り方に、リリアンヌは適合できないのだ。
だから、この十二年間は、本当にリリアンヌにとってイレギュラーなものだった。
「――――大丈夫だと思うけど」
事の重大さを、リリアンヌの処女の重さを、流石にサフィールとてよくよく理解しているはずなのに。
なのに、この男は。
「適当言うな!」
「適当じゃない」
処女を失えば、リリアンヌは魔女として立ち行かなくなる。即ちそれは死を意味している。
だが、サフィールは言う。
「アンヌ、あの時オレに随分沢山血をくれたでしょ」
あの時――――サフィールを拾った時。
「髪の色、変わっちゃったもんね。でもそのおかげで、オレの中にはリリアンヌの血が根付いてる。あの時拒絶反応を起こさなかったってことは、アンヌとオレの血が融和して分かち難く混ざり合ったてこと。だからアンヌにとって、オレは異物じゃない」
否定は、できないが。だけれど絶対の保証もないようにも思えた。絶対の保証なんてあっても、リリアンヌはサフィールを受け入れるつもりなどないのだが。
ふふ、とサフィールが笑う。
「この髪の色は、だからアンヌの愛の色なんだ」
勝手に気持ち悪いことを言う。
内心ドン引きしていたら、中断されていた侵攻が再開された。
「あ、やめ」
くちゅり、先端が入口に潜り込む。散々繰り返された愛撫にとろとろに解されたソコは、蜜に濡れてサフィールの剛直を誘い込んでしまう。
「あ、あ、あ!」
ぐい、と強めに腰を進められる。
「アンヌが悪いんだよ?」
「ひうぅ!」
拗ねたような声が耳に届く。
「食べ頃になったって言うのに、いつまで経っても食べてくれないんだもん。このままだと、時機を逃して旬を過ぎてしまう」
「サフィ……!」
痛みが走る。にちにちと隘路が無理矢理に押し広げられる。圧迫感に息が詰まる。
「だから、オレが食べさせてあげるね?」
「くっ、や、やめ」
サフィールの剛直はあまりに太く、体格差のせいかリリアンヌの身にはそぐわない気がした。こんなものを入れられては、身体が耐え切れないに違いない。
けれどぐりぐりとソレはリリアンヌのナカを、魔女としてずっとずっとずっと守り続けてきた場所を、蹂躙し犯し尽していく。
「アンヌ、ほら、ちゃんとあーんして?」
下衆い……! この変態……!
「あぁ……!」
「はは、美味しく食べてね」
ふざけた発言に、けれど言葉を投げつける余裕はどこにもなかった。リリアンヌの眦からぽろりと生理的な涙が転げ落ちる。
「あぁ、泣いちゃうくらいイイんだ?」
「サ、あ、あ、ダメ、ダメダメ、あぁ、それ以上来たら……!」
そして遂に。
「あぁ…………!」
リリアンヌの守りの結界を突き破り、痛みを押してサフィールが奥の奥まで突き破ってしまった。ごぷり、とサフィールがリリアンヌのナカに収められてしまった。
キツイ。苦しい。痛い。そして恐ろしく満たされる感覚。
こんな感覚、知りたくなどなかった。一度知ってしまえば、もう二度と知らなかった頃には戻れないのだと、内を満たす熱い塊りが無情にもリリアンヌに教え込む。
「あぁ、アンヌ、キツイ…………辛いね、ごめんね、アンヌの慎ましいお口には、オレはあんまり大き過ぎるね」
まだ言うか、このど変態。
「頑張って、頬張って」
「このっ、馬鹿が……! こんなこと、して……!」
タダで済むと思うなよ。痛みを飲み込んだら、続きの言葉も一緒に飲み込んでしまった。
甘く蕩けた顔で、サフィールは頷く。
「ちゃんと責任取る。一生アンヌの下僕だよ。アンヌのために生きて、アンヌのために死ぬ」
要求してもいないのに勝手にそう決められる。はっきり言って有難迷惑でしかない。
「っんん」
奥まで到達したサフィールはしばらくそのままじっとしてリリアンヌがサフィールに慣れるのを、サフィールがリリアンヌのナカに馴染むのを待っていたようだったが、やがて窺うように小さく腰を動かしてきた。そのちょっとした動きに、彼女の喉から甘い声が漏れる。それに気を良くしたみたいに、サフィールが少しずつ動きを大きくし始めた。
「ふっ、ん、あ」
出したくないのに、声は出てしまう。痛みはまだ確実に残っていたが、それでも上塗りするように快感と呼べるものが引き出される。
「アンヌ、美味しい?」
ぐりぐりとナカを擦り上げながらサフィールが訊いて来たが、もちろん彼女はそれを無視した。
「アンヌのナカ、熱くてとろっとろ。溶け出しそうなぐらい、気持ちイイ……」
無視しても、サフィールは気にした風でもなかったが。
「あ、あ、あ」
段々とナカを穿つ動きが大きく、激しくなっていく。
快楽の鎖に、彼女は繋がれてしまう。
抜き差しされるソレを彼女のナカはぎゅうぎゅうと締め付け、絡め取り、貪欲に快感を得ようとする。思考が、感覚という感覚が、全て擦られているソコに集中していく。擦られていることしかもう考えられない。
気持ちイイ。強烈に、気持ちイイ。
「サフィ、あ、それっ」
「ん? もっと?」
でも、リリアンヌは強請れない。魔女としての矜持がそれを許さない。
「あぁっ」
「もっと欲しい?」
「い、らな」
反対のことしか言えない。
「ふふっ、アンヌ、可愛い」
だがサフィールは笑った。愛しくて堪らないといった風に笑った。
「魔女は可愛げがないなんて言うけど、あれ、嘘だね。少なくとも、リリアンヌには関係ない」
ぐりぃと奥を強く穿たれて、腰が大きく浮く。
「あぁ!」
「魔女のこと全然分かってないヤツが言ってるんだよ」
こんなに、可愛いのにねぇ? と言いながら、いきなり胸の頂きを捻られた。彼女は不意打ちの刺激に、またイってしまう。
「確かに魔女はプライドが高くて、素直じゃなくて、天邪鬼だ。ねぇ、でもそれ以上に魔女は臆病で寂しがりやで、そして一等意地っ張りだもんね? あとおまけに、己にものすごく厳しい」
「んんっ!」
「いじらしくて、堪らない」
ストロークが速まってくる。
「言えないだけで、態度の端々に全部出てるもんね? 素直になれなくて我慢しちゃうの、すごく可愛いもん。びっくりするような言い回しで、優しさを台無しにする態度で、それでもこっちのために何かしてくれるの、頭がおかしくなりそうなほど胸がときめく」
「はぅ、あ、あ、」
「気持ちイイね、アンヌ? もっと欲しいんだよね? ね?」
さっきからリリアンヌが顕著に反応するところを見つけたサフィールが、執拗に執拗にそこばかりを狙う。ぐりぐりされて、本当にもう何にも分からなくなっていく。
「やめろやめろやめろ!」
「どうして?」
叫び声を上げる彼女に、わざとらしい声が投げ掛けられる。
「それっ、それっ」
「イイならイイって言って? もっとしてあげる」
そんなこと、言えない。イイなんて、言えない。
苦し紛れにリリアンヌは中途半端に言葉を投げつけた。
「サフィ、サフィ、っ、そのまま……!」
そのまま続けて。やめないで。もっとして。
「うん、アンヌ、もっと。もっとちょうだい?」
サフィールが小さく笑う気配。言わなかった言葉を全部読み取って、律動が激しさを増す。
そして。
「あ、あ、あ、ああぁっ!」
「っく……!」
彼女が絶頂を迎えたのに一拍遅れて、サフィールも限界を迎える。
ナカでぶるりと震えたソレが、リリアンヌのナカに熱い迸りを放った。最後の一滴まで、余すことなく注ぎ込まれて、リリアンヌのナカはむせび泣くようにそれを享受した。
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