53 / 54
【番外編】美貌の騎士とガチムチ騎士の犬も食わない系の話とかこっちは必要としてないんですけど、アイツら何故かオレに声をかけてくる件について
【番外編】その3
しおりを挟むさすがに我慢ならないと言いたげな声を上げたアレクだったが、途中でその声音は疑問に変わった。
「……それは?」
「いや、たまには逆でも良くない?」
「逆」
「オレもアレクを食べたいなって」
「…………は?」
手にした容器を眼前で振る。
「いや、えっと、それはその、お前が俺に突っ込みたいとかそういう?」
ごくり、アレクの喉が大きく上下した。
「いや、さすがにそういう気は起きないけど」
アレクを抱きたいかと言われれば、そういうことはない。
でも、自分ばかりあんあん啼かされるのは面白くない。
「ええっと、じゃあ」
戸惑いをたっぷり含ませて、問われた。
「ソレは、俺に使おうと?」
手にしているものは、パッケージを見れば分かる。
ホイップクリームの入った容器だ。ちなみに枕の下にはチョコソースバージョンもある。そういうことに使う用の、そう、プレイ用のやつ。
普通のと何が違うのかと言うと、すぐに垂れ落ちないように粘度なんかが調整されているし、眉唾レベルだけど媚薬効果があるとかそういうの。恋人向けのグッズだ。
「どこで、そんなもの」
「細かいことは気にしなくて大丈夫」
そう、つまり女体盛りならぬ男体盛りである。
愉しいかどうかは分からない。でも、サスから提案されてアリかな、と思ったのだ。
だって普通に恥ずかしくないか?
こんなものを自分の身体に塗りたくられて愉しまれるなんて、自分がされたらと思ったらとんでもなく恥ずかしい。
それに思い出したのだ。いつぞや最後の想い出作りと覚悟して、アレクを押し倒したことがあった。あの時乳首を責めたら、結構な喘ぎ声を漏らしたのだ、この男は。しかもそれを恥ずかしがっていた記憶もある。
これは使える。今日はさらに恥ずかしさを倍増させるアイテムを使って、アレクをぎゃふん! と言わせるのである。
「シオン、え、お前に使うんじゃなく、俺に? 何が楽しいんだ、それは」
「お前が楽しいことはオレがしても楽しいだろ」
「いやいや、まずビジュアルが最悪だろうが」
「ごちゃごちゃ言わない!」
やってしまえばこっちの勝ち! と勢いで中身を開ける。
「んくっ!」
冷たかったのだろうか、アレクが妙な声を上げた。
よしよし、滑り出しは好調である。好きなだけ声を上げてくれ。カイルの部屋はオレたちの寝室からは離れている。万が一にも聞かれる可能性はない。
が。
「よーし、アレク、今夜は覚悟し、ろ……」
直前で動きが鈍ってしまった。
だって。
「……シオン?」
え、卑猥。
え。どうしよ。待って、思った以上になんか卑猥。
生クリームとアレクの取り合わせが思った以上にけしからん感じ。
いや待て。待て待て?
いつもあれこれされるのが恥ずかしかった。だから何かし返してやろうって思った。
でもこれ、する方が恥ずかしいんじゃ?
だって、だってアレだろ?
「っ」
今からオレがコレを舐める訳でしょ?
想像してみて、すぐに限界を感じた。
いや、卑猥。コレを舐めてる図が卑猥すぎる。というか、舐めさせられてる、という言い方が頭を過る。
舐めてるんじゃない。アレクに、舐めさせられてる。
そういう見方をすると、結局はこっちが恥ずかしい思いをすることになる気がする。
でも。でもでも。
じゃあ逆にアレクに舐めさせればいいのか? と言うと、そうでもない。
こんなものを身体に塗りたくって、アレクに舐められるなんてそんなの恥ずかしいの極みである。
つまり。
どっちをやっても超恥ずかしいやつ!
え!? オレって馬鹿なの!? なんでそれを最初にちゃんと考えなかった!
内心頭を抱えるが、ここまできて尻尾を巻いて逃げる訳にはいかない。
「シオン」
「おさわり禁止! じっとしとくこと!」
分かっている。こういうのは羞恥心を持った時点で負けなのだ。
いつものアレクを思い返してみろ。コイツには羞恥心なんてものはない。そういうものを投げ出してるから、いつも愉しい思いをしてるのだ。だから、オレもそうするべき。アレクが乳首でちょっと感じちゃうことは事実なんだから、戦法は間違っていないはずなのだ。
「んっ」
正気をかなぐり捨て、オレはアレクの胸元に舌を這わせた。
「っ」
アレクが小さく身震いしたのが分かる。口内に含んだ生クリームは甘さ控えめだった。これならすぐに胸やけせずに済みそうである。そういう配慮もされた商品なんだろうな、とも思う。
「ふっ、ん」
小さな突起を捕まえて、生クリームを舐めとるついでに吸い上げてやった。唇から伝わる拍動は、段々と速さを増している気がする。
いいぞ、いけてる。多分アレクも感じてる。恥ずかしがってるに違いない。
これでもかというほど執拗に舌先で責め続け、そろそろアレクも羞恥に見悶えているだろうとオレはちらりと視線を上げた。
――――失敗でした。えぇ、とんだ判断ミスです。
「!」
アレクはひどく顔を上気させてはいたけど、羞恥に身悶えるというよりかは獰猛な衝動を必死に抑えている獣という感じで。
「シオン、もう終いか?」
おまけにそんな風に聞いてくるなんて、まだ足りないと言われているみたいで。
「必死に吸い上げてる姿は大分そそられるんだが」
「はっ!?」
しかもそんなことを言われれば、抑え込んでいた羞恥心は大爆発必至だ。
「な、な、なにを……!」
結局アレクが愉しんでいる!
待て待て待て、どうしてこうなった。そりゃちょっと見通しが甘かったなとは思ったけど、今頃アレクは乳首を責めに責められて悶えているはずだったのに!
「シオン、まだ残ってるんだが」
「んむっ!」
アレクは自分の身体に残っていたクリームを人差し指で掬い上げ、そうしてオレの口に突っ込んだ。
「んぅ! はっ、ぁ、んむ」
口の中を搔き回される。クリームの甘い味を内頬に、舌に、上顎に執拗に塗り込まれる。
「シオン、美味いか」
おかしい。おかしい。主導権を取られてる。立場が逆転してる。こんなはずじゃなかったのに。
「ぁ、やめ、ん!」
口の中を搔き回される。唾液と生クリームが混じり合う。嚥下しないと口の端から垂れてしまう。仕方がないからその指を舐めて、吸い上げるしかない。
おかしい。こんなはずじゃなかったのに。なかったのに!
「ははっ、シオン可愛いな」
「ん~~! んむ~~~~っ!」
拳で胸板を叩くが、抗議を示してもあまり意味がない。ちゅぷちゅぷとこね回される音が唇の隙間から漏れるだけ。
おかしい、おかしい、どうしてこうなった。
乳首を責められるより、舐めてるオレの姿に興奮したってこと?
それでクリーム作戦威力が半減したとかそういう?
「ん――っ!」
どうしてこうなった、ぎゃふんと言わせるはずだったのに。オレが今日は優越感に浸れるはずだったのに。
まさかオレ、墓穴を掘ってた?
そんな! こんなの! おかしい!
15
お気に入りに追加
2,582
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される
秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】
哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年
\ファイ!/
■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ)
■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約
力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。
【詳しいあらすじ】
魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。
優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。
オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。
しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
※エロあり。モブレなし。
王様との縁談から全力で逃げます。〜王女として育った不遇の王子の婚姻〜
竜鳴躍
BL
アリアは、前王の遺児で本来は第一王子だが、殺されることを恐れ、地味メイクで残念な王女として育った。冒険者になって城から逃げる予定が、隣国の残酷王へ人質という名の輿入れが決まって……。
俺は男です!子どもも産めません!
エッ。王家の魔法なら可能!?
いやいやいや。
なんで俺を溺愛するの!?
【完】俺の嫁はどうも悪役令息にしては優し過ぎる。
福の島
BL
日本でのびのび大学生やってたはずの俺が、異世界に産まれて早16年、ついに婚約者(笑)が出来た。
そこそこ有名貴族の実家だからか、婚約者になりたいっていう輩は居たんだが…俺の意見的には絶対NO。
理由としては…まぁ前世の記憶を思い返しても女の人に良いイメージがねぇから。
だが人生そう甘くない、長男の為にも早く家を出て欲しい両親VS婚約者ヤダー俺の勝負は、俺がちゃんと学校に行って婚約者を探すことで落ち着いた。
なんかいい人居ねぇかなとか思ってたら婚約者に虐められちゃってる悪役令息がいるじゃんと…
俺はソイツを貰うことにした。
怠慢だけど実はハイスペックスパダリ×フハハハ系美人悪役令息
弱ざまぁ(?)
1万字短編完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる