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【第一話】意中の騎士がお見合いするとかで失恋が決定したので娼館でヤケ酒煽ってたら、何故かお仕置きされることになった件について

【第一話】その7

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「ヤケのひとつも起こしたくなるってもんだろ。ゆるせよ」 
「お前が、失恋?」


 そうだ言ってしまえばいい。


「そうだよ、だから夢でくらいもっと優しくしてくれてもいいだろ、きもちーのは嬉しいけど、でも」


 苦しい。虚しい。だってお前は結局別の誰かのものになってしまうのだから。


「シオン、今何て言った? もう一回言ってみろ」


 ぶつぶつと呟いていたら、やり直しを要求された。やめろ、オレにこれ以上悲しい現実を認識させるなと思いながらも、ヤケクソな気持ちで叫ぶ。


「夢でくらい、好きなヤツにやさしくされたいって言ってんの! わけわからんまま抱かれて、せっきょーかまされて、お門違いなしんぱい向けられて。当の本人に、なにがあったか言えだなんて、そんなこと、あんまりざんこくだろーが!」


 叫んでから瞬時に後悔した。
 あまりにもダサい。情けない。王立第四師団の騎士に許される発言じゃない。もうオレのいいところがオレの中に一個も残ってないみたいな状態。


「もうやだ、この夢終わりでいい……」
 この上涙まで滲みそうな気配がしてきて、それを誤魔化すためにオレは枕に顔を埋めた。
「いや待て勝手に終わらせるな」
「うるさい。夢主のオレにそーぞーの産物がいけんするな。オレはもう目をさます」
「いや待て」
「待たん」
 掴まれた肩を捩る。というか、解放してほしいのは肩だけじゃない。よくよく思い出したらまた突っ込まれた状態だ。
 そこら辺、夢なんだから臨機応変に対応しておいてほしい。
「お前、俺のことが好きなのか。オレが上官の娘と見合いすると知って、そんな自暴自棄になってるのか」


 が、弱って疲れてボロボロの時に見る夢と言うのは、やっぱりそれに見合った不幸せなものだった。
 絶望してヤケを起こしてたオレの頭の中に、ハッピーに物事を捉える余裕がなかったのだろう。


「なににやついてる。夢の中のお前は、デリカシーがなくてさいてーだ。ひゃくねんの恋も冷めるいきおい」
「冷めるな冷めるな、あっためといてくれ」
 振り仰いだ顔は大層ムカつく表情をしていて、段々とオレは本当にこの男が好きだったのか、何か勘違いをしていただけではという気もしてくる。少なくともアレクの顔はだらしなく緩んでいて非常に腹の立つ感じだった。


「教えてくれ、シオン。お前、オレが好きなのか」


 デリカシーの意味を代わりに辞書を引いて赤線で強調してその鼻面にぶち当ててやろうか。


「あぁそーだよ! すきだよ! すきですよ! それがどーかしましたかね!」


 プツリ、自分の中で我慢していた諸々が切れる音がした。
 言って、何が変わる。
 上官の意向に逆らって、お見合いやめてくれるのか。オレの受け入れてくれるのか。同じように好きになってくれるのか。
 あり得ない。自棄っぱちになって叫んだって、オレの現実は何も変わらな――――


「うえっ!?」
 ぐん、と腹を埋めるものが急激に体積を増した気がして、寝台の上で小さく撥ねる。
「え、あ、なにおっきくしてんの、あれっ?」
 下腹が、息が苦しい。どこにも隙間がない。みっちりと相手の形に拓かれる感覚に意識が全部支配される。
「や、なにこえ、もうこれ以上はっ、あぁ!」
「シオン」
 そもそももう十分ですというほどご立派なブツを捻じ込まれた気がしたのに、そこから更に上があるなんて聞いてない。いくらなんでもやりすぎだ。自重してほしい。こんなもの、夢だろうと現実だろうと知ってしまったらきっと他の誰でも、何でも満足できなくなってしまう。そんなのは困る。


 でも。


「俺達両想いと言うことか」
「はぁあ? んぅ!」
 息を詰まらせ内側を満たす感覚に耐えているこちらを慮る様子も見せず、熱い吐息でアレクは訳の分からないことを言い出した。
「んっ! ってちょ、まって、あぁ!」


 両想い?
 なんだいきなり。めちゃくちゃ飛躍したな。そもそも会話になっていない。
 けれどそこを追及する余裕はなかった。


「ぁ、あぁ! アレク、らめらって、んくぅ!」


 ガツガツと更に容赦なく抜き差しを繰り返され、喉からは断続的に喘ぎ声しか出てこない。
 でもまぁこの整合性のなさ、展開の雑さ、さすが夢って感じだけど。



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