7 / 16
7
しおりを挟む
昔ソーハンを訪ねて来た仕事仲間の男は、ソーハンたちにある仕事の協力の依頼がきたがどうするかという相談をしにやってきたのだ。
それを依頼したのは旧ティリティアのエリオポール公爵の息子アーロンだ。
父親の公爵は処刑されてしまったが逃げ延びて成人した彼は後に王子たちと共に逃げた護衛の騎士たちと合流する。
彼らは王子と王女の捜索活動を水面下で行い、マクガイアを倒す機会を窺っている。
主だった貴族や騎士たちは皆捕まり処刑されたため仲間が欲しかった彼らはマクガイア王国に不満を持つソーハンの盗賊団に目を付け仲間に誘い入れることにした。
ソーハンは王子の事はどうでもいいが、マクガイアが倒れティリティアが再興したらソフィアが王女として幸せに暮らせると思い、アーロンの誘いに乗ることにした。
盗賊団の仲間には成功した暁には報酬がたんまりもらえると言って、ついてきたい者だけついて来いと言ったらほぼ全員がついてくることになった。
腕に覚えはあるソーハンでも万が一ということもある。
ソフィアが悲しい思いをする前に消えた方がいいと思った。
もし生き残ったとしてもソフィアが王女になれば自分は側にいることはできない。
アーロンの誘いはちょうどソフィアと距離を置くべきと思っていた時期と重なっていたこともあり、何もかもがソフィアと離れた方がいいという道を示していた。
ソーハンはアーロンから高額報酬の仕事の依頼が入り、そのために首都に出て、現在フィルベールを捜していることを正直に話した。
ソフィアはマクガイアを倒すなど無謀な計画が立てられていることにびっくりした。
それにソーハンが協力するなどありえない。死んでしまうかもしれないことを考えると恐ろしくなった。
「……お兄様を捜してくれていたのは有難いと思っている。でも私は王女に戻りたいなんて思っていない。マクガイアを倒すなんて無理よ。今すぐ手を引いて」
「それは無理だ」
「どうして!」
「仲間も高額報酬にやる気になっている。家族を置いてこっちに出てきている奴もいる。それに……王女に戻ったらいちいち髪を染めなくてもいいし偽名を使わなくていい。堂々とお日様の下を歩けるんだぞ。裕福で幸せな人生が待っている。俺はお前には幸せになってほしいんだ」
「人の幸せを勝手に決めないで。私はソーハンのお嫁さんになるって決めているの。それが私の幸せよ」
「またそれか」
「もう十八で大人なのよ。真剣に考えてよ!」
「真剣に考えているからこその決断だったんだ。お前にはお前の年齢にあったもっとちゃんとした男がいる!」
「わかってない。たったの十二歳差よ。村のおばさん夫婦は八歳差だったわ。四年しか違わないでしょ。それにちゃんとした男って何? ソーハンだってちゃんとしてるじゃない」
「俺は盗賊なんだ!」
ついに言ってしまった。ソーハンはこれはもう仕方がないと腹をくくる。
軽蔑されてもいい。それでソフィアが自分から離れるのならと。
「ふん、そんなの察しはついていたわ」
「……盗み、人殺しでもなんでもやってきたんだぞ」
「それが何なのよ!」
ソフィアは何も考えずただソーハンに養われていたわけではない。
いつも帰りは遅く、昼間は家にいることが多いソーハンに大きくなるにつれて村の他の男たちと違うと思うようになった。
人には言えないような仕事をしているかもしれないとは思っていたのだ。
でもそれが一体なんだ。そんなことは気にしない。
「貴族も騎士たちも、人なんてたくさん殺しているわ。戦争だってそうじゃない。国民や、お父様とお母様を殺したマクガイア国王も人殺しだわ! 征服したティリティアから全てを盗んだ泥棒よ! さも当然の権利のように! でもティリティアが勝っていたとしてもきっとマクガイアと同じことをしたわ。だから私は何も言えないの。あなたと違う所なんて無いのよ! 正義なんてどこにも無いのよ!」
ソフィアは一歩も引く気は無かった。
それを依頼したのは旧ティリティアのエリオポール公爵の息子アーロンだ。
父親の公爵は処刑されてしまったが逃げ延びて成人した彼は後に王子たちと共に逃げた護衛の騎士たちと合流する。
彼らは王子と王女の捜索活動を水面下で行い、マクガイアを倒す機会を窺っている。
主だった貴族や騎士たちは皆捕まり処刑されたため仲間が欲しかった彼らはマクガイア王国に不満を持つソーハンの盗賊団に目を付け仲間に誘い入れることにした。
ソーハンは王子の事はどうでもいいが、マクガイアが倒れティリティアが再興したらソフィアが王女として幸せに暮らせると思い、アーロンの誘いに乗ることにした。
盗賊団の仲間には成功した暁には報酬がたんまりもらえると言って、ついてきたい者だけついて来いと言ったらほぼ全員がついてくることになった。
腕に覚えはあるソーハンでも万が一ということもある。
ソフィアが悲しい思いをする前に消えた方がいいと思った。
もし生き残ったとしてもソフィアが王女になれば自分は側にいることはできない。
アーロンの誘いはちょうどソフィアと距離を置くべきと思っていた時期と重なっていたこともあり、何もかもがソフィアと離れた方がいいという道を示していた。
ソーハンはアーロンから高額報酬の仕事の依頼が入り、そのために首都に出て、現在フィルベールを捜していることを正直に話した。
ソフィアはマクガイアを倒すなど無謀な計画が立てられていることにびっくりした。
それにソーハンが協力するなどありえない。死んでしまうかもしれないことを考えると恐ろしくなった。
「……お兄様を捜してくれていたのは有難いと思っている。でも私は王女に戻りたいなんて思っていない。マクガイアを倒すなんて無理よ。今すぐ手を引いて」
「それは無理だ」
「どうして!」
「仲間も高額報酬にやる気になっている。家族を置いてこっちに出てきている奴もいる。それに……王女に戻ったらいちいち髪を染めなくてもいいし偽名を使わなくていい。堂々とお日様の下を歩けるんだぞ。裕福で幸せな人生が待っている。俺はお前には幸せになってほしいんだ」
「人の幸せを勝手に決めないで。私はソーハンのお嫁さんになるって決めているの。それが私の幸せよ」
「またそれか」
「もう十八で大人なのよ。真剣に考えてよ!」
「真剣に考えているからこその決断だったんだ。お前にはお前の年齢にあったもっとちゃんとした男がいる!」
「わかってない。たったの十二歳差よ。村のおばさん夫婦は八歳差だったわ。四年しか違わないでしょ。それにちゃんとした男って何? ソーハンだってちゃんとしてるじゃない」
「俺は盗賊なんだ!」
ついに言ってしまった。ソーハンはこれはもう仕方がないと腹をくくる。
軽蔑されてもいい。それでソフィアが自分から離れるのならと。
「ふん、そんなの察しはついていたわ」
「……盗み、人殺しでもなんでもやってきたんだぞ」
「それが何なのよ!」
ソフィアは何も考えずただソーハンに養われていたわけではない。
いつも帰りは遅く、昼間は家にいることが多いソーハンに大きくなるにつれて村の他の男たちと違うと思うようになった。
人には言えないような仕事をしているかもしれないとは思っていたのだ。
でもそれが一体なんだ。そんなことは気にしない。
「貴族も騎士たちも、人なんてたくさん殺しているわ。戦争だってそうじゃない。国民や、お父様とお母様を殺したマクガイア国王も人殺しだわ! 征服したティリティアから全てを盗んだ泥棒よ! さも当然の権利のように! でもティリティアが勝っていたとしてもきっとマクガイアと同じことをしたわ。だから私は何も言えないの。あなたと違う所なんて無いのよ! 正義なんてどこにも無いのよ!」
ソフィアは一歩も引く気は無かった。
10
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説



人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる