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第二章 「深十島〇〇一作戦」
三章 ロリアエ(2)
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仕方がないので、俺がネメシスが話せるようになるまで相手になることにする。
「……今更だけど、どうしてここに来たの? 俺が何か問題を起こしたって勘違いされるんだけど」
その素直な疑問について母さんは真顔で、
「その時は『お兄ちゃんの妹ですぅ。心の狭いチビ人間なんかとはあんまり話さないですから、私へ話しかける際はお兄ちゃんに通してからしやがれ……ですぅ』みたいにすればいいじゃないの」
と、本気で誰なのか分からなくなりそうな母さんとは別人の少女を演じきるので、ツッコミに戸惑ってしまった。
「い、いやいくら母さんが若いからといって、妹のように扱うのは無理があるよ」
俺の言いたいことが伝わったのか母さんは残念そうにするが、懲りずすぐにまた何か閃いて首を縦に振る。
「だったらネメちゃんの姉のフリをすればあるいは……」
「あ、あの、お母様、わたしには既に姉が二人いまして……。それにわたしはミーザといっても有名な方なので、流石にわたしのお姉ちゃんには……すみません……」
ネメシスが本当に申し訳なさそうに手を合わせるので、これで母さんも変な行動を抑えてくれるかと思いきや、まだ言いたりないようだ。
「ネメちゃん。意外な事実とは、事実でなくとも再現できるの」
「……え、ええ」
うわ、ネメシスがまじで困ってる。困ってるところも可愛いなぁ!
「例えば『あれぇ? ネメちゃんったらまたおっぱいおっきくなってるぅ! えい揉ませろ揉ませろぉ!』って気軽に揉みしだけばそれなりに姉妹のように見えるものよ」
「あ、あのぉ、お母様でもそういうのはNGといいますか……。わたし、処女信仰みたいなものなので。未来の愛する旦那様に不安を持たせたくないんです」
「……あらそう」
そこまで言われると流石の母さんも諦めがついたらしく、非常に恨めしそうに俺を見る。
それよりも、俺は思わぬところで一生聞くことがないであろうネメシスの信条を知ることができた。
今までキスだとか、胸の谷間を見せ付けてきたから考えも及ばなかったが、ネメシスという少女は純潔だ。そう言われれば、ネメシスが俺に他の男と仲良く話すところを見せたことはないし、俺の公にできないわがままも恥ずかしがりながら受け止めてくれる。
俺がネメシスに雰囲気的にレズっ気あると思ったのは、男の気配を感じさせないからそうだったのだろう。
しかも今の会話では女とのキャッキャウフフすらしないようだ。『結婚』するまで俺に一筋、浮気は絶対にしないという姿勢を示している。
だが俺はフリアともセットとかいうふざけたハーレム如き発想を持ち、彼女らを馬鹿にしているクソ男ではないか。
……釣り合わないな。俺、成長しないとネメシスに後ろめたさばかり感じてしまいそうだ。
「……そんなことよりも、嗣虎さんは凄いお方ですよね」
「ん、なになに、ネメちゃんもシー君の魅力に気付いちゃった的な?」
「あ、あはは……」
俺を持ち上げる話題を作ろうとしたが、母さんがネメシスにとって照れくさい質問をしてしまう為に少し笑って間を置き、再び話を続けた。
「本当はわたし、 インチキばかりしてきているのです。相手にとって何をすれば嬉しいのか、それを誰よりも知ることが出来ます。それとわたしは精神に問題があるのですよ。……本当、わたしよりも素敵な女の子など、どこにでもいるでしょうに」
「馬鹿! ネメシスの良いところを知っていて好きな俺に、そういう話は苦痛でしかない」
「……なう」
ユーアーワットユーワントトゥセイ?
「……で、でですね、嗣虎さんはほら、自分の本音に向き合う人ですから、わたしのこと『好きだ』って言ってくださった時は凄く恥ずかしくて、嬉しかったのです。でも、気味の悪い、精神の狂った障碍者同然のわたしを、苦労も承知で……ぐす。もう無理です……自分、泣き虫なもので……うぅ」
そのまま次第に顔を歪ませていくと、両手でそれを隠してえんえん泣いてしまった。
自分を悲観にとらえた時点でその兆候は見られたが、俺はネメシスが泣くとは思っていなかった。
感極まって涙を流すことはあっても、今まで俺に泣くところなど見せていないのだ。
何よりネメシスが泣くと……クソ不安になる。フリアや母さんが泣いても同情、あるいは人情が溢れてくるが、ネメシスだけは違う。
ネメシスが泣く限りずっと不安が続きそうなのだ。
「し、シー君どうしよ!?」
母さんが勝手に慌てて俺に目でも訴えてくるが、俺はこういう場合の対応マニュアルを知りゃしない。
い、一応抱いていればよかろうか。
「な、泣くなよ。ネメシスはそれだけじゃないだろ?」
「……す、ううぅ……ずず…………うぇ……ん……」
左腕をネメシスの肩に回して寄せ、右手でネメシスの俯いた顔を隠すように頭を撫でる。
……ところで、どうして母さんはここに来たのだろうか
「……今更だけど、どうしてここに来たの? 俺が何か問題を起こしたって勘違いされるんだけど」
その素直な疑問について母さんは真顔で、
「その時は『お兄ちゃんの妹ですぅ。心の狭いチビ人間なんかとはあんまり話さないですから、私へ話しかける際はお兄ちゃんに通してからしやがれ……ですぅ』みたいにすればいいじゃないの」
と、本気で誰なのか分からなくなりそうな母さんとは別人の少女を演じきるので、ツッコミに戸惑ってしまった。
「い、いやいくら母さんが若いからといって、妹のように扱うのは無理があるよ」
俺の言いたいことが伝わったのか母さんは残念そうにするが、懲りずすぐにまた何か閃いて首を縦に振る。
「だったらネメちゃんの姉のフリをすればあるいは……」
「あ、あの、お母様、わたしには既に姉が二人いまして……。それにわたしはミーザといっても有名な方なので、流石にわたしのお姉ちゃんには……すみません……」
ネメシスが本当に申し訳なさそうに手を合わせるので、これで母さんも変な行動を抑えてくれるかと思いきや、まだ言いたりないようだ。
「ネメちゃん。意外な事実とは、事実でなくとも再現できるの」
「……え、ええ」
うわ、ネメシスがまじで困ってる。困ってるところも可愛いなぁ!
「例えば『あれぇ? ネメちゃんったらまたおっぱいおっきくなってるぅ! えい揉ませろ揉ませろぉ!』って気軽に揉みしだけばそれなりに姉妹のように見えるものよ」
「あ、あのぉ、お母様でもそういうのはNGといいますか……。わたし、処女信仰みたいなものなので。未来の愛する旦那様に不安を持たせたくないんです」
「……あらそう」
そこまで言われると流石の母さんも諦めがついたらしく、非常に恨めしそうに俺を見る。
それよりも、俺は思わぬところで一生聞くことがないであろうネメシスの信条を知ることができた。
今までキスだとか、胸の谷間を見せ付けてきたから考えも及ばなかったが、ネメシスという少女は純潔だ。そう言われれば、ネメシスが俺に他の男と仲良く話すところを見せたことはないし、俺の公にできないわがままも恥ずかしがりながら受け止めてくれる。
俺がネメシスに雰囲気的にレズっ気あると思ったのは、男の気配を感じさせないからそうだったのだろう。
しかも今の会話では女とのキャッキャウフフすらしないようだ。『結婚』するまで俺に一筋、浮気は絶対にしないという姿勢を示している。
だが俺はフリアともセットとかいうふざけたハーレム如き発想を持ち、彼女らを馬鹿にしているクソ男ではないか。
……釣り合わないな。俺、成長しないとネメシスに後ろめたさばかり感じてしまいそうだ。
「……そんなことよりも、嗣虎さんは凄いお方ですよね」
「ん、なになに、ネメちゃんもシー君の魅力に気付いちゃった的な?」
「あ、あはは……」
俺を持ち上げる話題を作ろうとしたが、母さんがネメシスにとって照れくさい質問をしてしまう為に少し笑って間を置き、再び話を続けた。
「本当はわたし、 インチキばかりしてきているのです。相手にとって何をすれば嬉しいのか、それを誰よりも知ることが出来ます。それとわたしは精神に問題があるのですよ。……本当、わたしよりも素敵な女の子など、どこにでもいるでしょうに」
「馬鹿! ネメシスの良いところを知っていて好きな俺に、そういう話は苦痛でしかない」
「……なう」
ユーアーワットユーワントトゥセイ?
「……で、でですね、嗣虎さんはほら、自分の本音に向き合う人ですから、わたしのこと『好きだ』って言ってくださった時は凄く恥ずかしくて、嬉しかったのです。でも、気味の悪い、精神の狂った障碍者同然のわたしを、苦労も承知で……ぐす。もう無理です……自分、泣き虫なもので……うぅ」
そのまま次第に顔を歪ませていくと、両手でそれを隠してえんえん泣いてしまった。
自分を悲観にとらえた時点でその兆候は見られたが、俺はネメシスが泣くとは思っていなかった。
感極まって涙を流すことはあっても、今まで俺に泣くところなど見せていないのだ。
何よりネメシスが泣くと……クソ不安になる。フリアや母さんが泣いても同情、あるいは人情が溢れてくるが、ネメシスだけは違う。
ネメシスが泣く限りずっと不安が続きそうなのだ。
「し、シー君どうしよ!?」
母さんが勝手に慌てて俺に目でも訴えてくるが、俺はこういう場合の対応マニュアルを知りゃしない。
い、一応抱いていればよかろうか。
「な、泣くなよ。ネメシスはそれだけじゃないだろ?」
「……す、ううぅ……ずず…………うぇ……ん……」
左腕をネメシスの肩に回して寄せ、右手でネメシスの俯いた顔を隠すように頭を撫でる。
……ところで、どうして母さんはここに来たのだろうか
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