無想無冠のミーザ

はらわた

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第一章 「占拠された花園」

九章 character(4)

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 平和部から早々に退出した浅野率いる一行は、浅野だけテンションを上げて屋上を目指す。

 浅野の鼻息の荒さは闘牛の気合溜めのような張り切った様子が伝わる。先頭は浅野ですぐ後ろに俺が居て、フリアエを引っ張る形で続いていく。

 経験は無いのだが、臆病な妹を連れている兄になった気分だ。

「おい、屋上にどうして行くんだ?」

 一応取り返しのつかないことになる前に訊いてみると、越後屋さながらの悪顔を見せた。

「出入り禁止の場所に行かない理由があるのかよぉ? くっくっく……」

 だよな。

「浅野、お主も悪よのぉ……」

「ギャハハハハハハ、古代も負けてねぇだろうがよぉ!」


「話は聞かせてもらいました!」


「『何奴!?』」
 俺と浅野の秘密の談話に突如入ってきた女の声。俺と浅野は声を合わせて振り向いた。

 そこいたのは自信に満ち溢れた何かを纏い、この世の面白い悪事を聞き逃さない美少女大将軍──エリニュスであった。

「ふっふぅん! 呼ばれずともその姿現さずにはいられない、寂しさで死んでしまううさぎちゃんとは、あぁ~! わたしのことよぉ~!!」

「……フリアエ、お前のお姉様とティシポネの姉さんとメガイラの姉さんがドン引きしてるぞ」

「ふ……、良いんです」

 やり切った快感に浸った顔で歌舞伎役者のような体勢をし、恐らくフリアエとアイザがキレそうな出来事を簡単に受け止めている。

 フリアエの人生狂っちゃう。

「浅野さん、わたし、良いものを持ってるんですよ」

 エリニュスは早速浅野に話し掛け、耳元で囁く。

 浅野の耳がピクピク動いたあと、なにやらすごかったのか、ピエロも怯えるのではないかというほどに大きく口角を上げ、顔に影が掛かるくらいまでゆっくり頷いた。

「なるほどな。俺様は少し勘違いをしていたようだぜぇ? くっくっく……」
 
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