聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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353 真の王はただ一人

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「ルディ。それは後でね」

 私は振り返ってへロリと笑いながら言う。だから全ての工程を素通りする書類においそれとサインなんて出来ないよ。

「この状況で断わるって流石アンジュだな」

 ファルうるさいよ。言っておくけど私には何も教養がない。教会で教えられてきたことのみだ。

 そんな私が王族に名を連ねるとか、バカじゃない限り了承するわけないじゃない!

「アンジュ」

 だから瞳孔が開いた目で見下さないでよね。
 これ以上しつこいと、紙を事故的に燃やそう。再生が不可能なぐらい灰も残さまいように燃やし尽くそう。

「第十三部隊長。少し落ち着いてください」

 あれ?リザ姉がいつのまにか向かい側のところに立っていた。

「何だ?リザネイエ第十二副部隊長」

 怒気をはらんだルディの声に、リザ姉は肩をビクッと揺らしつつも、更に言葉を続ける。

「アンジュちゃんは、私達と同じキルクスの子飼いとして育ちました」
「それがどうした」
「その……貴族とか権力者というのに、どうしても拒否反応が出てしまうのです」
「……」
「え……っと、その……言いたいことは……それ以上強く言い寄りますと、アンジュちゃんに殺されますよ」
「リザ姉。私はそこまでは考えていないよ」

 私は婚姻届という紙を燃やして、時間稼ぎをしようと思っていただけで、ルディを殺そうとまでは思っていない。

「というぐらい、近いことを考えていたということです。アンジュちゃんに一度、どうしてキルクスに大人しくいるのかと聞いたことがあるのです。何て答えたと思います?」
「リザ姉その話はしなくていいよ」
「テンイの術が上手く構築できないからですって、ということは、テンイの術が使えればリュミエール神父も出し抜けるということです」
「それ、もう先手打たれてたから、神父様の方が上手うわてだったよ」

 そう、私の口座を差し押さえるという権力者の横暴なやり口で……あのときは本当にしてられれたと思ったね。
 神父様は、私が何処かに逃げ去るという想定をしていたということだ。

「あら?そうなの?でも、何かわからないけど、その契約をプルエルト公爵が持ってきたらどうするの?」
「え?取り敢えず、ミンチにして押しつぶして原型がわからないようにしてから、他国に逃げる」
「という感じですので、恐らく第十三部隊長が、アンジュちゃんに餌付けをした分は考慮されていると思いますわ」

 いや、餌付けはされていない……はず。なぜ、ロゼまでうんうんと頷いているわけ?

「うーん。困ったね。シュレインの要望が君なんだよね。それに僕は反対することも無いし、国としても君が王妃であることの方がメリットがあると思うのだよ」

 リザ姉の言葉にルディではなく、何故か王様が答えた。そのルディはというと、凄く闇をまとった存在に進化していた。
 ちょっとリザ姉、これどうするわけ?
 闇落ちしそうなのだけど?

「王妃になることのどこが嫌なのかな?」
「そもそも平民が王族って無理がありますよね」
「王族と言っても元は、ここに居た王を退かせた蛮族ということだよね。身分が無い者が王につけないとなると、我々も王族では無くなる」
「それ屁理屈です」
「でも、本当のことだよね。真の王はこの地下に存在する不老不死の王ただ一人。僕達はただの聖騎士」
「あ……そこで、王族が聖騎士ということに繋がるんだ」

 王様にそこまで言われて、この国のおかしな状態に納得ができた。王族は聖女に仕える聖騎士。
 真の王は地下にいる不老不死の王ただ一人。

 だから王族に身分を求めてはいない。 

 なぜなら真の王の意は、聖女という偶像物を守る存在でしかないのだから。

「そう言われると、納得できた」
「アンジュ!だったら」

 復活したルディが私に詰め寄っきたけど、私は手を上げてそれと止める。

「だけど、結局国を治めることには変わらないよね?」
「変わらないけど、君が今までしてきたことを考えると、それが一番いいと僕は思っている」

 私はそんなにおかしなことはやっていないよ?

「君、あの聖女に力を与えたよね?」

 ……その情報をもう王様は掴んでいるのか。まぁ、彼女に影がつけられているのを承知で連れ出したのだから、そこは問題視するところではない。

「これであの聖女は君に逆らうことはしないよね?」

 なんだか嫌な感じがする。
 王様はニコニコと笑みを浮かべながら爆弾発言をした。

「表向きはあの聖女に動いてもらって、聖騎士の全体の指揮を君がとればいい。それがこの国に求められている太陽ソールの王妃のあり方だよ」

 太陽ソールの王妃。また新たな言葉がでてきた。恐らくこれは二百年前から使われなくなった言葉を、王様は引っ張り出してきたのだろう。

 双子の聖女。彼女たちはそれぞれ別々の役目を与えられていたと。

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