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350 大丈夫。未来は変わってきている
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これが以前ルディが言っていたこと?聖女の像の話に繋がる?
人々に聖女の存在を意識づけた教会。そして、神ではなく聖女という偶像物を崇めるように刷り込ませた。
その聖女の像は意図的に王都の方を全て向いている。
人々の思いが願いが聖女という存在を生み出し、その聖女は世界の為に戦い、最後には世界の糧となる。
もしその流れを断ち切れば世界は死に向かうしかない。いや、世界が死を迎える前に人は世界が呼び込んだ異物に対処しきれなくなり、いずれは世界の思惑通りに絶滅する。
そうすれば世界は一度リセットされ新たな生命が誕生するように変われるだろう。それが世界の意志だ。
だったら聖女は何の為に存在する?
月と太陽と分けた理由もだ。
「聖女は獅子王と聖王の望んだ世界を構築するためにいる?」
それは何?世界の穴を封じるのは大前提だろう。封じなければこの身は世界に喰われると。
いや、そこには最初の月の聖女の意思が絡んでいる。それも彼らの意思。
「最後に仕掛けられたモノが何かということがわからない限り無理か」
結局、獅子王と聖王が仕掛けたモノがわからない。それが彼らにとっての願いなのだろうから。
私はこれ以上考えるのは無駄だと思って、ふと視線を上げると私に皆の視線が突き刺さっていた。
いや、ただ単に私の独り言だからね。
まぁ、丁度いいか。
「双子の聖女の兄は何かを掴んでいたんだろうなと思うけど、今は今起こっていることに対処した方がいいと思う」
二百年前の人が蘇るのなら話を聞けるかもしれないけど、そんなのは無理だからね。それよりも私が皆をここに呼んだ用件を言おう。
「何処かの貴族の家に養女として、異形が紛れ込んでいるって聞いたんだよね」
すると静まっていた室内が突然騒がしくなった。
「アンジュ!お前いい加減なことを言うなよ!」
「異形が紛れ込んでいるのですか?これのことでしょうかね?スラヴァール」
「異形か。それなら放った黒狼共が戻って来ない理由になるね」
「え?異形って人になれるの?」
「まぁ、幻覚を見せられていたというのはあるわね」
口々に皆が言っていると、ルディが私に向かって聞いてきた。
「それは誰から聞いたんだ?」
やっぱ聞かれるよね。私はへらりと笑って答える。
「聖女シェーンだよ」
「アンジュ!あの女といつ会った!」
怒られるとはわかっていたけど、必要なことだったからね。彼女は誰も知り得ない情報を持っている。
「ルディ。聖女シェーンは聖女だよ?龍神のお……おかみさんのことも言い当てたじゃない?」
「それは結果論で、王都は水に浸かってはいない」
「だからそれは阻止したからだよ。前にも言ったけど、聖女シェーンはちょっと違った未来を知っている。だけど全く違う未来じゃない。それは少しずつ未来を変えていっているからだよ」
そう、少しずつだけど、ゲームの未来とは変わってきている。ゲームでは聖騎士団は半分以下になっていたはずだからだ。
「今回聞いたのはこの前の続き。なぜ王都が水没しなかったことが、最悪だったのか」
「どう考えても王都水没の方が最悪だろう?」
「ファル様。個人の目線ではなくて、もっと広い視線で見れば、これは最悪ではなく、望んでいた未来になるの」
「ああ!わかった!人々の死は全て世界の糧になり、世界は念願だった身の内を食らう害虫を駆除できたということだね」
王様。そうなんだけど、もっといい例えは無かったのかな?人を害虫って……貴族嫌いが人嫌いにまで発展している?
それとも神父様経由で聞いた事がおかしな感じで解釈されている?
「王様の言う通りだね。これは世界にとって望んだ結末だったということ。それで水没しないことが何故最悪だったのか。一つは昨日……一昨日対処したオーガの変異種の夜叉。あれにかなり苦戦を強いられたらしい」
「いや実際苦戦しただろう」
「全然攻撃が効いている感じがなかったわ」
「足止めも無理だったよ」
私の言葉に、ファルとリザ姉とロゼが当たり前だろうという感じの言葉を返してきた。
でもあれは数時間の話で、シェーンが言ったのは恐らく、数日や数週間の単位だと思う。酷ければ数ヶ月に渡ったかもしれない。
「苦戦をしたということは、勝てたという意味ですよね?その未来ではどうやって、あのヤシャを倒したのですか?私もアンジュもファルークスも存在しない未来で」
神父様は強敵の夜叉の倒し方が気になったらしい。今回は第十二部隊長さんのお陰で倒せた……世界に食べさせることができたけど。
「その未来ではヒュー様とアスト様の力って言っていたね」
「そう言われれば、ヒューゲルボルカとアストヴィエントは二人で一つの術を作り出していたな。そう言うことなら、異形には二つの力を一つにした術が効くのか」
私の言葉に神父様ではなくて、ルディが納得した言葉を返してきた。
うーん?それはどうだろう?双子の彼らが使うのは、自分たち以外の拒絶の術だと思われる。
だからチートな空間では、双子以外が存在出来ないと拒否をすれば、異形でも排除対象にされることは予想できた。
新しい力はそうやって作り出すしかない。
「そうかもね」
今までの考え方に囚われない戦い方は必要だと思うよ。
人々に聖女の存在を意識づけた教会。そして、神ではなく聖女という偶像物を崇めるように刷り込ませた。
その聖女の像は意図的に王都の方を全て向いている。
人々の思いが願いが聖女という存在を生み出し、その聖女は世界の為に戦い、最後には世界の糧となる。
もしその流れを断ち切れば世界は死に向かうしかない。いや、世界が死を迎える前に人は世界が呼び込んだ異物に対処しきれなくなり、いずれは世界の思惑通りに絶滅する。
そうすれば世界は一度リセットされ新たな生命が誕生するように変われるだろう。それが世界の意志だ。
だったら聖女は何の為に存在する?
月と太陽と分けた理由もだ。
「聖女は獅子王と聖王の望んだ世界を構築するためにいる?」
それは何?世界の穴を封じるのは大前提だろう。封じなければこの身は世界に喰われると。
いや、そこには最初の月の聖女の意思が絡んでいる。それも彼らの意思。
「最後に仕掛けられたモノが何かということがわからない限り無理か」
結局、獅子王と聖王が仕掛けたモノがわからない。それが彼らにとっての願いなのだろうから。
私はこれ以上考えるのは無駄だと思って、ふと視線を上げると私に皆の視線が突き刺さっていた。
いや、ただ単に私の独り言だからね。
まぁ、丁度いいか。
「双子の聖女の兄は何かを掴んでいたんだろうなと思うけど、今は今起こっていることに対処した方がいいと思う」
二百年前の人が蘇るのなら話を聞けるかもしれないけど、そんなのは無理だからね。それよりも私が皆をここに呼んだ用件を言おう。
「何処かの貴族の家に養女として、異形が紛れ込んでいるって聞いたんだよね」
すると静まっていた室内が突然騒がしくなった。
「アンジュ!お前いい加減なことを言うなよ!」
「異形が紛れ込んでいるのですか?これのことでしょうかね?スラヴァール」
「異形か。それなら放った黒狼共が戻って来ない理由になるね」
「え?異形って人になれるの?」
「まぁ、幻覚を見せられていたというのはあるわね」
口々に皆が言っていると、ルディが私に向かって聞いてきた。
「それは誰から聞いたんだ?」
やっぱ聞かれるよね。私はへらりと笑って答える。
「聖女シェーンだよ」
「アンジュ!あの女といつ会った!」
怒られるとはわかっていたけど、必要なことだったからね。彼女は誰も知り得ない情報を持っている。
「ルディ。聖女シェーンは聖女だよ?龍神のお……おかみさんのことも言い当てたじゃない?」
「それは結果論で、王都は水に浸かってはいない」
「だからそれは阻止したからだよ。前にも言ったけど、聖女シェーンはちょっと違った未来を知っている。だけど全く違う未来じゃない。それは少しずつ未来を変えていっているからだよ」
そう、少しずつだけど、ゲームの未来とは変わってきている。ゲームでは聖騎士団は半分以下になっていたはずだからだ。
「今回聞いたのはこの前の続き。なぜ王都が水没しなかったことが、最悪だったのか」
「どう考えても王都水没の方が最悪だろう?」
「ファル様。個人の目線ではなくて、もっと広い視線で見れば、これは最悪ではなく、望んでいた未来になるの」
「ああ!わかった!人々の死は全て世界の糧になり、世界は念願だった身の内を食らう害虫を駆除できたということだね」
王様。そうなんだけど、もっといい例えは無かったのかな?人を害虫って……貴族嫌いが人嫌いにまで発展している?
それとも神父様経由で聞いた事がおかしな感じで解釈されている?
「王様の言う通りだね。これは世界にとって望んだ結末だったということ。それで水没しないことが何故最悪だったのか。一つは昨日……一昨日対処したオーガの変異種の夜叉。あれにかなり苦戦を強いられたらしい」
「いや実際苦戦しただろう」
「全然攻撃が効いている感じがなかったわ」
「足止めも無理だったよ」
私の言葉に、ファルとリザ姉とロゼが当たり前だろうという感じの言葉を返してきた。
でもあれは数時間の話で、シェーンが言ったのは恐らく、数日や数週間の単位だと思う。酷ければ数ヶ月に渡ったかもしれない。
「苦戦をしたということは、勝てたという意味ですよね?その未来ではどうやって、あのヤシャを倒したのですか?私もアンジュもファルークスも存在しない未来で」
神父様は強敵の夜叉の倒し方が気になったらしい。今回は第十二部隊長さんのお陰で倒せた……世界に食べさせることができたけど。
「その未来ではヒュー様とアスト様の力って言っていたね」
「そう言われれば、ヒューゲルボルカとアストヴィエントは二人で一つの術を作り出していたな。そう言うことなら、異形には二つの力を一つにした術が効くのか」
私の言葉に神父様ではなくて、ルディが納得した言葉を返してきた。
うーん?それはどうだろう?双子の彼らが使うのは、自分たち以外の拒絶の術だと思われる。
だからチートな空間では、双子以外が存在出来ないと拒否をすれば、異形でも排除対象にされることは予想できた。
新しい力はそうやって作り出すしかない。
「そうかもね」
今までの考え方に囚われない戦い方は必要だと思うよ。
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