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347 私は呪われているのだろうか
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私は雪が舞う中で遠い目になっている。何故にこんな事になってしまっているのだろう。
「流石、ツクヨミの旦那だな」
酒吞の含み笑いの声が聞こえてきた。いや笑えないよ。これは流石に駄目だと思う。
っていうか、なんてものを世界は食べたわけ?
「アンジュ。これは何だ?」
ルディがとある方向に視線を向けながら言っているが、私の目には映したくない。現実逃避をしたい。
「おや?これはもしや、八岐之大蛇ですか?」
戻ってきた茨木の言葉に、私は雪の上に項垂れる。
またヘビ。何故にヘビ。それも頭が八つもあるヘビ。
もしかして、ヘビに呪われている?
そう、ルディが見ている方向には、物語より小型になった中型犬ほどの大きさのヘビがいる。それもツチノコのなり損ないのような、ぶっとい胴体に頭が八つ、尾が八つあるのだ。
「ヤマタノオロチとはなんだ?」
「まぁ通説では、荒れ狂う川の化身と言われていますね」
「また水属性!」
茨木の説明に思わず叫んでしまった。何故に水属性。もうちょっと、まんべんなくならないわけ?
「酒好きだぞ」
「身を滅ぼすほどね」
酒吞の言葉に私が突っ込むと、ドサッという音が聞こえそっちに視線を向ける。するとヘビの塊が雪の上に倒れていた。
いや、本当のことじゃない。
「これ使えるのか?」
その姿にルディの困惑の声が聞こえる。まぁ、つかえるかと言えば使えるかもしれない?
「尻尾を切ると剣が出てくるかも?」
「ぽぎゃ!」
あ?なんか変な鳴き声が聞こえてきた。よく見ると、ヘビの塊の内の一匹がガクガクと震えている。
あれ、一匹一匹が別の個体だったりする?
「そのくっついているところ、切ってみれば、使い勝手が良くなるかも?」
すると八つの頭が騒がしく悲鳴を上げ始めた。なんだ、分離はできないのか。
『主様。流石にそれは非道ではありませぬか?』
『個は分離できませぬ』
突然、同族のヘビ共の声が聞こえてきた。何故、勝手にでてきているわけ?
「私は出てきていいと言っていないけど?」
人型になっているヘビ二人を睨み付けながらいう。昨日……一昨日の夜中なんて呼ばない限り出てこなかったくせに。
『余りにも哀れに思いまして』
『流石に分離は個を無くしてしまいましょう』
ヘビ同士で何か通じるものでもあるのだろうか?しかし、勝手に出てきた言い訳にはならないよ。
『我らに預けていただければ、月が満ちる日までには役に立てるようにいたしましょう』
『主の伴侶よ。このモノに名を与えるがいい』
「ちょっとヘビ共、まだ籍は入れていないよ!」
何を勝手なことを言っているわけ!それに預けるってなに?
神父様の赤い鳥といつの間にか会っていたようだけど、異形たちの関係がどうなっているのか、私には不明だ。
それから、ルディとまだ籍は入れていない。
「そのことだけど、アンジュ」
ルディがどこからか一枚の紙を取り出してきた。
凄く嫌な予感がする。
「これにサインをして欲しい」
ルディから差し出された紙をみて、私は再び遠い目をする。これにサインをするのは期限ギリギリの半年後でいいと思う。
「ルディ。先に名前でもつけてあげれば?」
ルディから差し出されてきたのは、婚姻届だった。
それも既にルディの名前が書かれており、承認者として王様のサインが書かれている。
そして本当であれば、結婚式を挙げる教会の祭司がサインする証人のところに、神父様のサインが既にされていた。
全て王族の名がサインされた用紙に、私がサインするって、どう考えてもおかしいよね!
「名前か。既に名があるようなのだが、別の名を与えて問題ないのか?」
私が遠い目をしていると、ルディの困惑した声が聞こえてきた。既に『八岐之大蛇』という名がある。それなのに名が必要なのかということなのだろう。
「愛称ってことでいいと思うけど、そんなに深く考えなくても適当につければ?」
「適当……」「我々の名は適当……」
聞いてきたルディに私はアドバイスをしたのに、人型のヘビ共が項垂れている。
「リトでどうだ?」
「いや、私に聞かれても困る」
リトは『精霊』を指す言葉だけど、このツチノコの出来損ないのヘビが精霊……まぁ精霊石からでてきたから、そのままでいいか。
「特に意味がなさそうで良いんじゃない?精霊石から出てきた精霊で」
するとツチノコの出来損ないどもの口がパカリと開いて、ぷるぷると震えている。
「いや、守護者の方のリトだ。名前が長いと問題だろう?」
ああ、私が聞き取れないという問題ね。いや、文字は読めるし、固有名詞でなければ大丈夫。
守護者は教会の授業で習ったからわかるよ。しかしそれも安易だね。守り石から出てきた守護者。
なんかヘビ共が喜んでいるから言わないであげるけどね。
「流石、ツクヨミの旦那だな」
酒吞の含み笑いの声が聞こえてきた。いや笑えないよ。これは流石に駄目だと思う。
っていうか、なんてものを世界は食べたわけ?
「アンジュ。これは何だ?」
ルディがとある方向に視線を向けながら言っているが、私の目には映したくない。現実逃避をしたい。
「おや?これはもしや、八岐之大蛇ですか?」
戻ってきた茨木の言葉に、私は雪の上に項垂れる。
またヘビ。何故にヘビ。それも頭が八つもあるヘビ。
もしかして、ヘビに呪われている?
そう、ルディが見ている方向には、物語より小型になった中型犬ほどの大きさのヘビがいる。それもツチノコのなり損ないのような、ぶっとい胴体に頭が八つ、尾が八つあるのだ。
「ヤマタノオロチとはなんだ?」
「まぁ通説では、荒れ狂う川の化身と言われていますね」
「また水属性!」
茨木の説明に思わず叫んでしまった。何故に水属性。もうちょっと、まんべんなくならないわけ?
「酒好きだぞ」
「身を滅ぼすほどね」
酒吞の言葉に私が突っ込むと、ドサッという音が聞こえそっちに視線を向ける。するとヘビの塊が雪の上に倒れていた。
いや、本当のことじゃない。
「これ使えるのか?」
その姿にルディの困惑の声が聞こえる。まぁ、つかえるかと言えば使えるかもしれない?
「尻尾を切ると剣が出てくるかも?」
「ぽぎゃ!」
あ?なんか変な鳴き声が聞こえてきた。よく見ると、ヘビの塊の内の一匹がガクガクと震えている。
あれ、一匹一匹が別の個体だったりする?
「そのくっついているところ、切ってみれば、使い勝手が良くなるかも?」
すると八つの頭が騒がしく悲鳴を上げ始めた。なんだ、分離はできないのか。
『主様。流石にそれは非道ではありませぬか?』
『個は分離できませぬ』
突然、同族のヘビ共の声が聞こえてきた。何故、勝手にでてきているわけ?
「私は出てきていいと言っていないけど?」
人型になっているヘビ二人を睨み付けながらいう。昨日……一昨日の夜中なんて呼ばない限り出てこなかったくせに。
『余りにも哀れに思いまして』
『流石に分離は個を無くしてしまいましょう』
ヘビ同士で何か通じるものでもあるのだろうか?しかし、勝手に出てきた言い訳にはならないよ。
『我らに預けていただければ、月が満ちる日までには役に立てるようにいたしましょう』
『主の伴侶よ。このモノに名を与えるがいい』
「ちょっとヘビ共、まだ籍は入れていないよ!」
何を勝手なことを言っているわけ!それに預けるってなに?
神父様の赤い鳥といつの間にか会っていたようだけど、異形たちの関係がどうなっているのか、私には不明だ。
それから、ルディとまだ籍は入れていない。
「そのことだけど、アンジュ」
ルディがどこからか一枚の紙を取り出してきた。
凄く嫌な予感がする。
「これにサインをして欲しい」
ルディから差し出された紙をみて、私は再び遠い目をする。これにサインをするのは期限ギリギリの半年後でいいと思う。
「ルディ。先に名前でもつけてあげれば?」
ルディから差し出されてきたのは、婚姻届だった。
それも既にルディの名前が書かれており、承認者として王様のサインが書かれている。
そして本当であれば、結婚式を挙げる教会の祭司がサインする証人のところに、神父様のサインが既にされていた。
全て王族の名がサインされた用紙に、私がサインするって、どう考えてもおかしいよね!
「名前か。既に名があるようなのだが、別の名を与えて問題ないのか?」
私が遠い目をしていると、ルディの困惑した声が聞こえてきた。既に『八岐之大蛇』という名がある。それなのに名が必要なのかということなのだろう。
「愛称ってことでいいと思うけど、そんなに深く考えなくても適当につければ?」
「適当……」「我々の名は適当……」
聞いてきたルディに私はアドバイスをしたのに、人型のヘビ共が項垂れている。
「リトでどうだ?」
「いや、私に聞かれても困る」
リトは『精霊』を指す言葉だけど、このツチノコの出来損ないのヘビが精霊……まぁ精霊石からでてきたから、そのままでいいか。
「特に意味がなさそうで良いんじゃない?精霊石から出てきた精霊で」
するとツチノコの出来損ないどもの口がパカリと開いて、ぷるぷると震えている。
「いや、守護者の方のリトだ。名前が長いと問題だろう?」
ああ、私が聞き取れないという問題ね。いや、文字は読めるし、固有名詞でなければ大丈夫。
守護者は教会の授業で習ったからわかるよ。しかしそれも安易だね。守り石から出てきた守護者。
なんかヘビ共が喜んでいるから言わないであげるけどね。
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