339 / 368
338 逆らった反動
しおりを挟む
私はいつもの白い隊服に着替えて、一人分の朝食を作って食べている。
「お願いって言うのが、また聖女の彼女のところに連れて行って欲しいこと」
「駄目です」
ダイニングテーブルの向かい側には黒髪の浅黒い肌の人物が、黒い隊服を身にまとって立っている。
人の姿になった朧だ。
「彼女から情報を得ることが重要なんだよ」
「昨日の朝は暴れて、聖騎士団の本部の一部が破壊される騒ぎになったのです。聖女は現在、要監視人物になっています」
……軟禁程度だったのが、暴れて監視対象になっているってこと?駄目じゃん!
こうなったら上に掛け合ってみる?いや、許可が降りないか、誰か監視がつく。
どうすればいいのか。……私が作った幻影と入れ替える?
「朧。屋根裏から行って彼女と私が作った幻影と入れ替えるっていうのはどう?」
「駄目です」
おかしい。今までなら、朧は私のお願いは聞いてくれていたはずだ。それが頑として頷いてくれない。
悪魔神父の入れ知恵?
「じゃ、もう朧には頼まないよ。無理言って悪かったね」
それなら、茨木あたりを巻き込むかな。そう考えながら、簡単サンドイッチにかぶりつく。
一人分だからと卵焼きを挟んだものと、ハムと野菜を挟んだ具材だけど、卵焼きは手作りケチャップが絶妙にあってて美味しいし、ハムサラダは手作りマヨネーズとマスタードがいいアクセントになっている。
適当に作ったけど、うまっ!
……なんか目の前の朧が凄く落ち込んでいるように見えるのだけど?なんで落ち込んでいるの?
別に私は神父様の命令を優先させたからって、怒ってはいない。それに王族である神父様の命令を聞く方が当たり前だよね。
さて、食べ終わったからさっさと動くか。早く済ませておかないと、ルディーが帰ってきそうだからね。
転移の腕輪を使って戻って来られたら、こっちは対処のしようがないので、やりたいことはさっさと済ませておこう。
そして私はファルから来なくていいと言われた、ポツンと一軒家の第十三部隊の詰め所にやってきた。カビでも生えそうなぐらい凹んでいる朧を後ろに引き連れて。いや、なんだか息切れもしている?
詰め所には来たけど、中には入らない。用があるのは、外だからだ。
「茨木、ちょっといいかな?」
私は雪が舞っている外で、焚き火をしている茨木に声をかけた。
焚き火で炙っている肉は何の肉だろうと思ったけど、それは聞かないでおこう。なんだか硬そうな肉だし。
「アンジュ様。目覚められたのですか?」
これは私の寝坊が、永劫に眠っていそうな感じで伝わっている?いや、私はただ単に寝すぎただけだからね。
「それで私に何か用ですか?」
「そうなんだけど、ちょっと監視されている人を連れ出したいのだけど、いい案ある?もちろん、元の部屋には戻ってもらうよ。ちょっと話がしたいの」
私は監視されているような人物を自由にさせたいわけではなく、ちょっと話をしたいのだという。すると、茨木は二コリと笑みを浮かべて言った。
「アンジュ様のお頼みごとなら、叶えてさしあげますよ」
「なんだ?アマテラス。悪巧みでもしようとしているのか?」
笑顔で了承してくれた茨木とは対象的に、酒吞はニヤニヤとした悪どい笑みを浮かべ、焚き火で炙っていた肉を食べている。
バキッと音がするけど、骨ごと食べているよね。
「別に悪巧みじゃなくて、必要なこと」
「ふーん。で、アマテラスの頼みを断ったヤツがそいつか?」
酒吞は肉がついている骨で私の背後を指した。
あれ?私は一言も朧に断られたなんて言っていないけど?
「お前、馬鹿だなぁ。考えればわかるだろう?」
「名を与えられた主に逆らったのです。当然ですね」
鬼の二人は朧に愚か者だと蔑んだ視線を向けている。何故に?
「え?朧は神父様の命令を聞いたのだから、私に逆らったわけではないよ」
そう、今回のことは私のわがままだと捉えられたのだ。それは仕方が無い。
「名付けの主に逆らったのです。ただで済むはずがありません」
「え?」
私は振り返って朧を見ると、つらそうな表情をしているなとしかわからない。
「因みにアンジュ様は何を言ったのですか?」
「聖女の彼女に会いたい、と言ったら駄目だって言われた」
「では、その後にあの者に向って言った言葉ですよ」
「『じゃ、もう朧には頼まないよ』と言った」
すると、酒吞はやっちまったなぁーと言いながら、どこから調達してきたのかわからない酒を瓶のまま飲んでいる。
茨木は珍しく大きくため息を吐いた。
「以前から貴方には忠告していましたよね。仕える主はアンジュ様だけにしておきなさいと、自業自得です」
「お願いって言うのが、また聖女の彼女のところに連れて行って欲しいこと」
「駄目です」
ダイニングテーブルの向かい側には黒髪の浅黒い肌の人物が、黒い隊服を身にまとって立っている。
人の姿になった朧だ。
「彼女から情報を得ることが重要なんだよ」
「昨日の朝は暴れて、聖騎士団の本部の一部が破壊される騒ぎになったのです。聖女は現在、要監視人物になっています」
……軟禁程度だったのが、暴れて監視対象になっているってこと?駄目じゃん!
こうなったら上に掛け合ってみる?いや、許可が降りないか、誰か監視がつく。
どうすればいいのか。……私が作った幻影と入れ替える?
「朧。屋根裏から行って彼女と私が作った幻影と入れ替えるっていうのはどう?」
「駄目です」
おかしい。今までなら、朧は私のお願いは聞いてくれていたはずだ。それが頑として頷いてくれない。
悪魔神父の入れ知恵?
「じゃ、もう朧には頼まないよ。無理言って悪かったね」
それなら、茨木あたりを巻き込むかな。そう考えながら、簡単サンドイッチにかぶりつく。
一人分だからと卵焼きを挟んだものと、ハムと野菜を挟んだ具材だけど、卵焼きは手作りケチャップが絶妙にあってて美味しいし、ハムサラダは手作りマヨネーズとマスタードがいいアクセントになっている。
適当に作ったけど、うまっ!
……なんか目の前の朧が凄く落ち込んでいるように見えるのだけど?なんで落ち込んでいるの?
別に私は神父様の命令を優先させたからって、怒ってはいない。それに王族である神父様の命令を聞く方が当たり前だよね。
さて、食べ終わったからさっさと動くか。早く済ませておかないと、ルディーが帰ってきそうだからね。
転移の腕輪を使って戻って来られたら、こっちは対処のしようがないので、やりたいことはさっさと済ませておこう。
そして私はファルから来なくていいと言われた、ポツンと一軒家の第十三部隊の詰め所にやってきた。カビでも生えそうなぐらい凹んでいる朧を後ろに引き連れて。いや、なんだか息切れもしている?
詰め所には来たけど、中には入らない。用があるのは、外だからだ。
「茨木、ちょっといいかな?」
私は雪が舞っている外で、焚き火をしている茨木に声をかけた。
焚き火で炙っている肉は何の肉だろうと思ったけど、それは聞かないでおこう。なんだか硬そうな肉だし。
「アンジュ様。目覚められたのですか?」
これは私の寝坊が、永劫に眠っていそうな感じで伝わっている?いや、私はただ単に寝すぎただけだからね。
「それで私に何か用ですか?」
「そうなんだけど、ちょっと監視されている人を連れ出したいのだけど、いい案ある?もちろん、元の部屋には戻ってもらうよ。ちょっと話がしたいの」
私は監視されているような人物を自由にさせたいわけではなく、ちょっと話をしたいのだという。すると、茨木は二コリと笑みを浮かべて言った。
「アンジュ様のお頼みごとなら、叶えてさしあげますよ」
「なんだ?アマテラス。悪巧みでもしようとしているのか?」
笑顔で了承してくれた茨木とは対象的に、酒吞はニヤニヤとした悪どい笑みを浮かべ、焚き火で炙っていた肉を食べている。
バキッと音がするけど、骨ごと食べているよね。
「別に悪巧みじゃなくて、必要なこと」
「ふーん。で、アマテラスの頼みを断ったヤツがそいつか?」
酒吞は肉がついている骨で私の背後を指した。
あれ?私は一言も朧に断られたなんて言っていないけど?
「お前、馬鹿だなぁ。考えればわかるだろう?」
「名を与えられた主に逆らったのです。当然ですね」
鬼の二人は朧に愚か者だと蔑んだ視線を向けている。何故に?
「え?朧は神父様の命令を聞いたのだから、私に逆らったわけではないよ」
そう、今回のことは私のわがままだと捉えられたのだ。それは仕方が無い。
「名付けの主に逆らったのです。ただで済むはずがありません」
「え?」
私は振り返って朧を見ると、つらそうな表情をしているなとしかわからない。
「因みにアンジュ様は何を言ったのですか?」
「聖女の彼女に会いたい、と言ったら駄目だって言われた」
「では、その後にあの者に向って言った言葉ですよ」
「『じゃ、もう朧には頼まないよ』と言った」
すると、酒吞はやっちまったなぁーと言いながら、どこから調達してきたのかわからない酒を瓶のまま飲んでいる。
茨木は珍しく大きくため息を吐いた。
「以前から貴方には忠告していましたよね。仕える主はアンジュ様だけにしておきなさいと、自業自得です」
64
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。
BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。
男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。
いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。
私はドレスですが、同級生の平民でした。
困ります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる