聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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338 逆らった反動

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 私はいつもの白い隊服に着替えて、一人分の朝食を作って食べている。

「お願いって言うのが、また聖女の彼女のところに連れて行って欲しいこと」
「駄目です」

 ダイニングテーブルの向かい側には黒髪の浅黒い肌の人物が、黒い隊服を身にまとって立っている。
 人の姿になった朧だ。

「彼女から情報を得ることが重要なんだよ」
「昨日の朝は暴れて、聖騎士団の本部の一部が破壊される騒ぎになったのです。聖女は現在、要監視人物になっています」

 ……軟禁程度だったのが、暴れて監視対象になっているってこと?駄目じゃん!

 こうなったら上に掛け合ってみる?いや、許可が降りないか、誰か監視がつく。

 どうすればいいのか。……私が作った幻影と入れ替える?

「朧。屋根裏から行って彼女と私が作った幻影と入れ替えるっていうのはどう?」
「駄目です」

 おかしい。今までなら、朧は私のお願いは聞いてくれていたはずだ。それが頑として頷いてくれない。

 悪魔神父の入れ知恵?

「じゃ、もう朧には頼まないよ。無理言って悪かったね」

 それなら、茨木あたりを巻き込むかな。そう考えながら、簡単サンドイッチにかぶりつく。
 一人分だからと卵焼きを挟んだものと、ハムと野菜を挟んだ具材だけど、卵焼きは手作りケチャップが絶妙にあってて美味しいし、ハムサラダは手作りマヨネーズとマスタードがいいアクセントになっている。

 適当に作ったけど、うまっ!

 ……なんか目の前の朧が凄く落ち込んでいるように見えるのだけど?なんで落ち込んでいるの?

 別に私は神父様の命令を優先させたからって、怒ってはいない。それに王族である神父様の命令を聞く方が当たり前だよね。

 さて、食べ終わったからさっさと動くか。早く済ませておかないと、ルディーが帰ってきそうだからね。
 転移の腕輪を使って戻って来られたら、こっちは対処のしようがないので、やりたいことはさっさと済ませておこう。



 そして私はファルから来なくていいと言われた、ポツンと一軒家の第十三部隊の詰め所にやってきた。カビでも生えそうなぐらい凹んでいる朧を後ろに引き連れて。いや、なんだか息切れもしている?

 詰め所には来たけど、中には入らない。用があるのは、外だからだ。

「茨木、ちょっといいかな?」

 私は雪が舞っている外で、焚き火をしている茨木に声をかけた。
 焚き火で炙っている肉は何の肉だろうと思ったけど、それは聞かないでおこう。なんだか硬そうな肉だし。

「アンジュ様。目覚められたのですか?」

 これは私の寝坊が、永劫に眠っていそうな感じで伝わっている?いや、私はただ単に寝すぎただけだからね。

「それで私に何か用ですか?」
「そうなんだけど、ちょっと監視されている人を連れ出したいのだけど、いい案ある?もちろん、元の部屋には戻ってもらうよ。ちょっと話がしたいの」

 私は監視されているような人物を自由にさせたいわけではなく、ちょっと話をしたいのだという。すると、茨木は二コリと笑みを浮かべて言った。

「アンジュ様のお頼みごとなら、叶えてさしあげますよ」
「なんだ?アマテラス。悪巧みでもしようとしているのか?」

 笑顔で了承してくれた茨木とは対象的に、酒吞はニヤニヤとした悪どい笑みを浮かべ、焚き火で炙っていた肉を食べている。
 バキッと音がするけど、骨ごと食べているよね。

「別に悪巧みじゃなくて、必要なこと」
「ふーん。で、アマテラスの頼みを断ったヤツがそいつか?」

 酒吞は肉がついている骨で私の背後を指した。
 あれ?私は一言も朧に断られたなんて言っていないけど?

「お前、馬鹿だなぁ。考えればわかるだろう?」
「名を与えられた主に逆らったのです。当然ですね」

 鬼の二人は朧に愚か者だとさげすんだ視線を向けている。何故に?

「え?朧は神父様の命令を聞いたのだから、私に逆らったわけではないよ」

 そう、今回のことは私のわがままだと捉えられたのだ。それは仕方が無い。

「名付けの主に逆らったのです。ただで済むはずがありません」
「え?」

 私は振り返って朧を見ると、つらそうな表情をしているなとしかわからない。

「因みにアンジュ様は何を言ったのですか?」
「聖女の彼女に会いたい、と言ったら駄目だって言われた」
「では、その後にあの者に向って言った言葉ですよ」
「『じゃ、もう朧には頼まないよ』と言った」

 すると、酒吞はやっちまったなぁーと言いながら、どこから調達してきたのかわからない酒を瓶のまま飲んでいる。

 茨木は珍しく大きくため息を吐いた。

「以前から貴方には忠告していましたよね。仕える主はアンジュ様だけにしておきなさいと、自業自得です」

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