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335 暁の明星の聖騎士
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「人も同じ?」
考えてみるけど、同じかどうかはわからない。そもそも妖怪と人間は違う。
「同じってどういうことかな?精霊石になるってことかな?」
「そうですね」
「うーん?残る部分って、例えば消化しきれなかったところだと考えると、そのモノの本質が残ったと考えられる。この世界で生まれた存在なら、世界に吸収されて異物として吐き出される可能性は低い……はぁ、本当に守りたいなら二百年前の聖騎士のように魂ごと聖女を燃やすしかないと思う」
精霊として元婚約者が存在しているかもっと淡い期待を神父様にさせてしまったようだ。
この精霊石は世界にとっては異物だ。力を奪い取ったカス。
だから、青嵐と月影は精霊から復活できたのだろう。
「聖女を犠牲にするシステムを考えたのはこの国を作った王たちだ。そこから外れるってことは生半可なことではできないよ」
「だったら、どうすればアンジュを世界から守れる」
私を守るか。根本的な解決をするには長い時が必要だと思う。
私一人では無理だね。
次かその次ぐらいの聖女の出現を待つぐらいじゃないと解決しないと思う。
「さぁ。世界の飢えを無くすか、すべての常闇を閉じるか、世界を殺すか」
「殺せるのか?」
「死者に刃を突きつけても無意味なように無理だと思うけど、私には初代の月の聖女の考えがわからないから、対処のしようがないね」
いや、一つだけ道はあるのかもしれない。今代の月の聖女の彼女だ。
彼女はゲームのエンディングを知っているはず。何をどうすれば、大団円で終わるか知っているはず。もう一度、彼女と接触する必要がありそうだ。
「すべての常闇を閉じるというのは駄目なのか?」
第十二部隊長さんが聞いてきた。駄目じゃないけど、すごく面倒くさい。
「はぁ。私、ブタ貴族に目をつけられているんだよね」
「ブタ貴族……」
「ああ、あれだね。侵入してきたブタ」
「ブタよねぇ」
第十二部隊長さんは言葉を詰まらせていたけど、ロゼとリザ姉は私の言いたいことがわかったらしい。
「隊長。プルエルト公爵にアンジュは昔から目をつけられているのですよ」
「プルエルト公爵?あの聖女信仰の?」
「そうよねぇ。昔、部屋まで乗り込んできたぐらいだったもの」
やはり、ブタ公爵の聖女作ろうぜ信仰は有名らしい。本当に気持ち悪いよね。
「別にヤッてもいいが、プルエルト公爵家の者の考えは基本的に変わらないから無駄だろう?」
……第十二部隊長さん。なぜルディと同じ考えになるのかなぁ。
「骨さえ残らずに消せるが?どうする?」
真剣な面持ちで殺し方を言わなくていいよ。なんとなく何も残らないのだろうなとは理解しているから。
「そうですね。次の聖女お披露目パーティーで、聖女を餌にプルエルトを釣ろうとしているのですよ」
悪魔神父が第十二部隊長さんを、ブタ貴族をブヒブヒ言わそうぜ作戦に入れようとしている。
「プルエルト公爵家の跡継ぎも心配ありません。ロベルに跡を継がせようと思っていますから」
「第一部隊長の?」
「ええ。アンジュ良かったですね。アンドレイアー家が手を貸してくれるとなると、そのあとも色々進みやすいですよ」
胡散臭い笑顔で言わないで欲しい。その後ってなに?
「ということで、ヴァルトルクス第十二部隊長。太陽の聖女の為に、当主の交代をしてください」
「神父様。それは言い過ぎ!」
どうしてアンド公爵家の当主の交代の話になっているの!
「了解した。王家がそれを認めるのであれば、聖女様のために喜んで、皆殺しをしましょう」
「皆殺し!」
「それはスラヴァールも喜ぶでしょうね」
駄目だ。あの白銀の王様は、盛大に喜んでいそうだ。
そもそもアンド家は王様に毒を盛った妃の実家だ。貴族嫌いの王様にトドメを差して、更に貴族嫌いにさせた公爵家。
「そうと決まれば早速……」
そう言って第十二部隊長さんは立ち上がった。
え?今から実行するってことはないよね。
私は慌てて、第十二部隊長さんがいるテーブルを挟んだ反対側に重力の聖痕を使って、飛んでいく。
「ちょっと待ってください。今から行くってことではないですよね?」
私は立ち上がった第十二部隊長さんの行く手を阻むように空中に浮いた。私の背が低いから存在感を出すためだ。
「聖女様の行動を阻害する存在は必要ないでしょう。世界を救うのが聖女様の役目なら、我々聖騎士は聖女様の愁いを払うのも役目です」
「いや、聖女って呼ばないでって……」
私が言っている途中で第十二部隊長さんは、床に膝をついて頭を下げてきた。
「私のような者に聖騎士の聖剣を与えてくださいました聖女アンジュ様には感謝しかございません。そして、あのような力を見せつけても変わらぬ対応。我が命を賭してアンジュ様にお仕え申し上げます」
すごく重いことを言われた。いや、第十二部隊長さんにお願いしたのは私の方だし、無理を言った感はある。
私は床に跪いた第十二部隊長さんと視線を合わすために床にしゃがみ込む。
「ヴァルト様がご自分の聖痕を忌み嫌っているのはなんとなくわかります。でも、それって生き抜くために得た力なのですよね。それで今のヴァルト様があるのでしたら、忌み嫌わずに、受け入れてください」
そう言って、ロゼのほうに視線を向けて、手を差し出す。
「ロゼ。回復薬まだ余っている?」
「あるけど……」
そう言って、ロゼは小指ほどの小瓶を私に差し出してきた。とてもイヤイヤな感じで。
「これ、私の毒の聖痕でできているのです。それを知ってからファル様が死ぬ死ぬとうるさいのですよ」
「それの原液を知っていたら、絶対に嫌だろうが!因みにヴァルトルクス第十二部隊長も原液がどんなものか知っているぞ」
あ、そうなんだ。だったら尚更いいよね。
「毒でも薬になるのですよ。今回の戦いでヴァルト様の力を感じ取った異形が逃げたという行動は、聖騎士として誇っていいとおもいます。誰も決定打を入れなれなかった夜叉に一撃を入れたのですから」
「しかし、それはアンジュ様の言葉があってこそ」
「そんなことはないですよ。力はヴァルト様の力です。自信を持ってください。暁の明星の聖騎士」
すると、私の右目が熱を帯びた。
「あつっ!」
思わず、右目から聖痕を取り出して、頭上に放つ。太陽の光が入ってくる室内に更に明るい光が満たされる。
「っ……!」
第十二部隊長さんも何故か顔をしかめる。え?もしかして火の粉か何か飛んだ?
右手の甲を左手で押さえている。よく見ると、騎士からつけることが義務づけられている手袋が焦げているのが垣間見えた。
やっば!この天使の聖痕って回復の能力した使っていないから、他の能力はそこまで制御できていないんだよ。
「すみません!火の粉が飛んでしまいました?頭上から火花が散るって嫌だから、その能力は使っていなかったので、制御が甘くって……」
……ナニコレ?
治癒で治そうと第十二部隊長さんの左手をのけた下からは、上から見た王冠のように焼けた跡が出てきた。
どうみても私の太陽の聖痕だ。
もしかして、これって乙女ゲームでよくある信頼度みたいな指標が聖騎士に反映するとか、そんなシステム無いよね。
斜め上から魔王様の気配があるのだけど、これも気の所為だよね?
考えてみるけど、同じかどうかはわからない。そもそも妖怪と人間は違う。
「同じってどういうことかな?精霊石になるってことかな?」
「そうですね」
「うーん?残る部分って、例えば消化しきれなかったところだと考えると、そのモノの本質が残ったと考えられる。この世界で生まれた存在なら、世界に吸収されて異物として吐き出される可能性は低い……はぁ、本当に守りたいなら二百年前の聖騎士のように魂ごと聖女を燃やすしかないと思う」
精霊として元婚約者が存在しているかもっと淡い期待を神父様にさせてしまったようだ。
この精霊石は世界にとっては異物だ。力を奪い取ったカス。
だから、青嵐と月影は精霊から復活できたのだろう。
「聖女を犠牲にするシステムを考えたのはこの国を作った王たちだ。そこから外れるってことは生半可なことではできないよ」
「だったら、どうすればアンジュを世界から守れる」
私を守るか。根本的な解決をするには長い時が必要だと思う。
私一人では無理だね。
次かその次ぐらいの聖女の出現を待つぐらいじゃないと解決しないと思う。
「さぁ。世界の飢えを無くすか、すべての常闇を閉じるか、世界を殺すか」
「殺せるのか?」
「死者に刃を突きつけても無意味なように無理だと思うけど、私には初代の月の聖女の考えがわからないから、対処のしようがないね」
いや、一つだけ道はあるのかもしれない。今代の月の聖女の彼女だ。
彼女はゲームのエンディングを知っているはず。何をどうすれば、大団円で終わるか知っているはず。もう一度、彼女と接触する必要がありそうだ。
「すべての常闇を閉じるというのは駄目なのか?」
第十二部隊長さんが聞いてきた。駄目じゃないけど、すごく面倒くさい。
「はぁ。私、ブタ貴族に目をつけられているんだよね」
「ブタ貴族……」
「ああ、あれだね。侵入してきたブタ」
「ブタよねぇ」
第十二部隊長さんは言葉を詰まらせていたけど、ロゼとリザ姉は私の言いたいことがわかったらしい。
「隊長。プルエルト公爵にアンジュは昔から目をつけられているのですよ」
「プルエルト公爵?あの聖女信仰の?」
「そうよねぇ。昔、部屋まで乗り込んできたぐらいだったもの」
やはり、ブタ公爵の聖女作ろうぜ信仰は有名らしい。本当に気持ち悪いよね。
「別にヤッてもいいが、プルエルト公爵家の者の考えは基本的に変わらないから無駄だろう?」
……第十二部隊長さん。なぜルディと同じ考えになるのかなぁ。
「骨さえ残らずに消せるが?どうする?」
真剣な面持ちで殺し方を言わなくていいよ。なんとなく何も残らないのだろうなとは理解しているから。
「そうですね。次の聖女お披露目パーティーで、聖女を餌にプルエルトを釣ろうとしているのですよ」
悪魔神父が第十二部隊長さんを、ブタ貴族をブヒブヒ言わそうぜ作戦に入れようとしている。
「プルエルト公爵家の跡継ぎも心配ありません。ロベルに跡を継がせようと思っていますから」
「第一部隊長の?」
「ええ。アンジュ良かったですね。アンドレイアー家が手を貸してくれるとなると、そのあとも色々進みやすいですよ」
胡散臭い笑顔で言わないで欲しい。その後ってなに?
「ということで、ヴァルトルクス第十二部隊長。太陽の聖女の為に、当主の交代をしてください」
「神父様。それは言い過ぎ!」
どうしてアンド公爵家の当主の交代の話になっているの!
「了解した。王家がそれを認めるのであれば、聖女様のために喜んで、皆殺しをしましょう」
「皆殺し!」
「それはスラヴァールも喜ぶでしょうね」
駄目だ。あの白銀の王様は、盛大に喜んでいそうだ。
そもそもアンド家は王様に毒を盛った妃の実家だ。貴族嫌いの王様にトドメを差して、更に貴族嫌いにさせた公爵家。
「そうと決まれば早速……」
そう言って第十二部隊長さんは立ち上がった。
え?今から実行するってことはないよね。
私は慌てて、第十二部隊長さんがいるテーブルを挟んだ反対側に重力の聖痕を使って、飛んでいく。
「ちょっと待ってください。今から行くってことではないですよね?」
私は立ち上がった第十二部隊長さんの行く手を阻むように空中に浮いた。私の背が低いから存在感を出すためだ。
「聖女様の行動を阻害する存在は必要ないでしょう。世界を救うのが聖女様の役目なら、我々聖騎士は聖女様の愁いを払うのも役目です」
「いや、聖女って呼ばないでって……」
私が言っている途中で第十二部隊長さんは、床に膝をついて頭を下げてきた。
「私のような者に聖騎士の聖剣を与えてくださいました聖女アンジュ様には感謝しかございません。そして、あのような力を見せつけても変わらぬ対応。我が命を賭してアンジュ様にお仕え申し上げます」
すごく重いことを言われた。いや、第十二部隊長さんにお願いしたのは私の方だし、無理を言った感はある。
私は床に跪いた第十二部隊長さんと視線を合わすために床にしゃがみ込む。
「ヴァルト様がご自分の聖痕を忌み嫌っているのはなんとなくわかります。でも、それって生き抜くために得た力なのですよね。それで今のヴァルト様があるのでしたら、忌み嫌わずに、受け入れてください」
そう言って、ロゼのほうに視線を向けて、手を差し出す。
「ロゼ。回復薬まだ余っている?」
「あるけど……」
そう言って、ロゼは小指ほどの小瓶を私に差し出してきた。とてもイヤイヤな感じで。
「これ、私の毒の聖痕でできているのです。それを知ってからファル様が死ぬ死ぬとうるさいのですよ」
「それの原液を知っていたら、絶対に嫌だろうが!因みにヴァルトルクス第十二部隊長も原液がどんなものか知っているぞ」
あ、そうなんだ。だったら尚更いいよね。
「毒でも薬になるのですよ。今回の戦いでヴァルト様の力を感じ取った異形が逃げたという行動は、聖騎士として誇っていいとおもいます。誰も決定打を入れなれなかった夜叉に一撃を入れたのですから」
「しかし、それはアンジュ様の言葉があってこそ」
「そんなことはないですよ。力はヴァルト様の力です。自信を持ってください。暁の明星の聖騎士」
すると、私の右目が熱を帯びた。
「あつっ!」
思わず、右目から聖痕を取り出して、頭上に放つ。太陽の光が入ってくる室内に更に明るい光が満たされる。
「っ……!」
第十二部隊長さんも何故か顔をしかめる。え?もしかして火の粉か何か飛んだ?
右手の甲を左手で押さえている。よく見ると、騎士からつけることが義務づけられている手袋が焦げているのが垣間見えた。
やっば!この天使の聖痕って回復の能力した使っていないから、他の能力はそこまで制御できていないんだよ。
「すみません!火の粉が飛んでしまいました?頭上から火花が散るって嫌だから、その能力は使っていなかったので、制御が甘くって……」
……ナニコレ?
治癒で治そうと第十二部隊長さんの左手をのけた下からは、上から見た王冠のように焼けた跡が出てきた。
どうみても私の太陽の聖痕だ。
もしかして、これって乙女ゲームでよくある信頼度みたいな指標が聖騎士に反映するとか、そんなシステム無いよね。
斜め上から魔王様の気配があるのだけど、これも気の所為だよね?
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