335 / 354
334 精霊石の元は何か
しおりを挟む
私達が北の森から切り上げてきたのは、朝日が昇る頃だった。
見た目では何も変わらない冬の朝。
いや、霜は存在していないけど、森はいつも通り針葉樹と広葉樹が混じり、葉をつけた木々と葉を落とした木々が朝の光を浴びて整然と立っている。
木が燃えた様子もなければ枯れた様子もない。そして地面も何事もなかったように草花を支え、地であることを当たり前のように存在している。
ただ、朝を告げる鳥の鳴き声がない。
これは酒吞の炎にやられてしまったのか、私が広げた常闇に呑まれてしまったのかはわからないけど、これはどうしようもないことなので、そのうち新たに鳥がやってきて巣を作ることを願うしかない。
時間にすれば、六時間ほどのことだったけど、今回の戦いも水属性というものに困惑した。
だけど、新たな戦い方を見出したのも事実。
「だからさぁ、別の属性の聖痕を合わせて攻撃すれば、対処が可能だってこと」
私達は朝食という名の夜食を食べている。
今から寝るから夜食という意味だ。
重苦しい鎧を脱いた皆は疲れた顔をしている。夜中じゅう走り回っていたようなものだからね。
いや、神父様は疲れた様子はなく。私が渡したそのへんの石を観察している。
酒吞は朝からお酒を飲んで、茨木も普通に食事をとっている。この二人の鬼もいつも通りだ。
ただ、一番働いたであろうファルが食事も喉に通らないほど疲れているみたいで、手が全くすすんでいない。
だから軽めの雑炊にしたのになぁ。栄養も取れて、温かい食べ物だからだ。
緊張しているときはいいのだけど、黒い鎖を始末しているときに大分冷えてしまったからね。
「だったら、なぜそれを俺に言わないんだ?」
ルディは不機嫌に私の隣で雑炊を食べている。だからさぁ、説明したよ。
「ルディの聖痕って闇か影だよね。夜叉が水属性って蛇共がいうから、ルディに頼まなかったんだよ」
「どこが関係するんだ?」
どこが関係するっていうか、私はルディの聖痕の力は二つしか知らない。
だから、私はルディの方を向いて口を開ける。そして直ぐに閉じた。
そうルディが隠し持っている聖痕は水の精霊を象った紋だった。水属性なのだ。だから、ルディには頼まなかったのだ。
それを理解したルディは黙る。いや、それでも納得できなかったのだろう。
「それ以外も持っている」
「いや、私は知らないし」
後出しのように言われてもなぁ。
どちらかというと第十二部隊長さんの聖痕って何を持っているのかが気になる。
世界が死を感じるほどの聖痕だ。
一つは砂塵にする聖痕と予想しているけど、もう一つがわからない。
あとでこっそり教えてもらえないかな?
「アンジュ。常闇ってなんだ?」
ファルがよくわからないことを呟いて聞いてきた。そんなこと知らないよ。
色々予想は立てれるけど、真実は何もわからない。
ただ言えるのは……
「異界に繋がった穴だね」
黒狐の王妃が転移をしようとして異界に落ちていった穴だ。それが繋がったままで存在し続けているから、色々弊害が出てしまっている。
「じゃ常闇に呑まれていった者はどうなるんだ?」
「知らないよ」
だけど一つ予想は立てている。
「蛇共に聞けばわかるかもよ」
「え?」
「ほら、出てきてよ」
『御前に主よ』
『ご命令を主よ』
中華風の鎧をまとった青い髪の男性と、黒い髪の男性が私の背後に姿を現した。
「誰だ!」
「人がどこからか出てきた!」
「あら?アンジュちゃん。モテモテね」
リザ姉だけ、おかしな言葉が返ってきたけど、ファルとロゼは私と同じ反応をした。そうだよね。普通はそうだよね。
ルディなんて、スルーだったんだよ。
普通、蛇共が人の姿になったらびっくりするものだと思う。
「ねぇ、君たちって一度常闇に呑まれた異形だよね。力を奪われてミミズみたいになっていたってことだよね」
『ミミズではありませぬ。主よ』
『幼龍であります。主よ』
どちらでもいいよ。
そして、私は神父様の方に視線を向ける。そして、私につけられている二つの指輪を突き出すように見せた。
「この石ってどこから取ってきたもの?王城の地下かな?」
「そうですよ」
「あの暗闇の床の砂利が全部。精霊石?」
「ええ、よくわかりましたね」
これで一つのからくりが見えてきた。これは青嵐と月影が人型にならなかったら、私はわからなかっただろう。
「異界に繋がっている常闇は一つ。それを閉じないと意味がないだよね」
「そういう話しでしたね」
「この石は常闇に呑まれていったものの出がらしだね」
『主よ。酷うございます』
『我々は出がらしではありませぬ』
「ふん!元々ミミズに言われたくないね」
『『グフッ!』』
何か倒れる音がしたけど、気にすることではない。
「常闇の入口はたくさんある。だけど本当の常闇はただ一つ。そこから外に必要なくなったカスを吐き出す。これを持っていると通れる理由は排泄物だから扉を通ることができるってだけで、大した意味は初めはなかったと思うね」
『『排泄物……』』
うるさいよ。
「そして、カスだけど力をまだ保有しているから、王家が使おうとしただけかな?黒狼たちと同じだね」
「アンジュは人も同じだと言っているのですか?」
神父様の言葉に首を傾げる。人も精霊石になるのかと?
見た目では何も変わらない冬の朝。
いや、霜は存在していないけど、森はいつも通り針葉樹と広葉樹が混じり、葉をつけた木々と葉を落とした木々が朝の光を浴びて整然と立っている。
木が燃えた様子もなければ枯れた様子もない。そして地面も何事もなかったように草花を支え、地であることを当たり前のように存在している。
ただ、朝を告げる鳥の鳴き声がない。
これは酒吞の炎にやられてしまったのか、私が広げた常闇に呑まれてしまったのかはわからないけど、これはどうしようもないことなので、そのうち新たに鳥がやってきて巣を作ることを願うしかない。
時間にすれば、六時間ほどのことだったけど、今回の戦いも水属性というものに困惑した。
だけど、新たな戦い方を見出したのも事実。
「だからさぁ、別の属性の聖痕を合わせて攻撃すれば、対処が可能だってこと」
私達は朝食という名の夜食を食べている。
今から寝るから夜食という意味だ。
重苦しい鎧を脱いた皆は疲れた顔をしている。夜中じゅう走り回っていたようなものだからね。
いや、神父様は疲れた様子はなく。私が渡したそのへんの石を観察している。
酒吞は朝からお酒を飲んで、茨木も普通に食事をとっている。この二人の鬼もいつも通りだ。
ただ、一番働いたであろうファルが食事も喉に通らないほど疲れているみたいで、手が全くすすんでいない。
だから軽めの雑炊にしたのになぁ。栄養も取れて、温かい食べ物だからだ。
緊張しているときはいいのだけど、黒い鎖を始末しているときに大分冷えてしまったからね。
「だったら、なぜそれを俺に言わないんだ?」
ルディは不機嫌に私の隣で雑炊を食べている。だからさぁ、説明したよ。
「ルディの聖痕って闇か影だよね。夜叉が水属性って蛇共がいうから、ルディに頼まなかったんだよ」
「どこが関係するんだ?」
どこが関係するっていうか、私はルディの聖痕の力は二つしか知らない。
だから、私はルディの方を向いて口を開ける。そして直ぐに閉じた。
そうルディが隠し持っている聖痕は水の精霊を象った紋だった。水属性なのだ。だから、ルディには頼まなかったのだ。
それを理解したルディは黙る。いや、それでも納得できなかったのだろう。
「それ以外も持っている」
「いや、私は知らないし」
後出しのように言われてもなぁ。
どちらかというと第十二部隊長さんの聖痕って何を持っているのかが気になる。
世界が死を感じるほどの聖痕だ。
一つは砂塵にする聖痕と予想しているけど、もう一つがわからない。
あとでこっそり教えてもらえないかな?
「アンジュ。常闇ってなんだ?」
ファルがよくわからないことを呟いて聞いてきた。そんなこと知らないよ。
色々予想は立てれるけど、真実は何もわからない。
ただ言えるのは……
「異界に繋がった穴だね」
黒狐の王妃が転移をしようとして異界に落ちていった穴だ。それが繋がったままで存在し続けているから、色々弊害が出てしまっている。
「じゃ常闇に呑まれていった者はどうなるんだ?」
「知らないよ」
だけど一つ予想は立てている。
「蛇共に聞けばわかるかもよ」
「え?」
「ほら、出てきてよ」
『御前に主よ』
『ご命令を主よ』
中華風の鎧をまとった青い髪の男性と、黒い髪の男性が私の背後に姿を現した。
「誰だ!」
「人がどこからか出てきた!」
「あら?アンジュちゃん。モテモテね」
リザ姉だけ、おかしな言葉が返ってきたけど、ファルとロゼは私と同じ反応をした。そうだよね。普通はそうだよね。
ルディなんて、スルーだったんだよ。
普通、蛇共が人の姿になったらびっくりするものだと思う。
「ねぇ、君たちって一度常闇に呑まれた異形だよね。力を奪われてミミズみたいになっていたってことだよね」
『ミミズではありませぬ。主よ』
『幼龍であります。主よ』
どちらでもいいよ。
そして、私は神父様の方に視線を向ける。そして、私につけられている二つの指輪を突き出すように見せた。
「この石ってどこから取ってきたもの?王城の地下かな?」
「そうですよ」
「あの暗闇の床の砂利が全部。精霊石?」
「ええ、よくわかりましたね」
これで一つのからくりが見えてきた。これは青嵐と月影が人型にならなかったら、私はわからなかっただろう。
「異界に繋がっている常闇は一つ。それを閉じないと意味がないだよね」
「そういう話しでしたね」
「この石は常闇に呑まれていったものの出がらしだね」
『主よ。酷うございます』
『我々は出がらしではありませぬ』
「ふん!元々ミミズに言われたくないね」
『『グフッ!』』
何か倒れる音がしたけど、気にすることではない。
「常闇の入口はたくさんある。だけど本当の常闇はただ一つ。そこから外に必要なくなったカスを吐き出す。これを持っていると通れる理由は排泄物だから扉を通ることができるってだけで、大した意味は初めはなかったと思うね」
『『排泄物……』』
うるさいよ。
「そして、カスだけど力をまだ保有しているから、王家が使おうとしただけかな?黒狼たちと同じだね」
「アンジュは人も同じだと言っているのですか?」
神父様の言葉に首を傾げる。人も精霊石になるのかと?
43
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした
奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。
そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。
その時、一人の騎士を助けたリシーラ。
妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。
問題の公子がその騎士だったのだ。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる