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319 戦う前の食事は大事
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「誰か、運ぶのを手伝って……ってなんで、誰もまだ食べていないの!」
肉を焼き終えたけど量が多いため、人手を要求するために食堂に顔を出せば、まだ誰も食事に手を付けていなかった。いや、神父様はあのゴムの様な硬い肉を食べ終わってはいた。
「はいはい!行くよ」
ロゼが立ち上がってこちらに来てくれ、リザ姉も手伝ってくれるらしく、立ち上がってくれた。
「もう、さっきから凄くいい匂いで、お腹がギュルギュル言っているんだよね」
ロゼ。ギュルギュルってお腹を壊していそうな音だけど大丈夫?
「そう。じゃロゼは、ロゼの分と第十二部隊長さんの分を持っていって」
「隊長の分はアンジュが持っていくんだよ」
なぜかロゼに第十二部隊長さんの分を持って行くのを拒否られた。
「代わりにファルークス副部隊長の分を持っていくから」
よくわからないけど、ファルの分を持っていってくれるというから、ファルの分を渡した。
「じゃ私はリュミエール神父の分を持って行くわ」
リザ姉にはリザ姉の分と神父様の分を渡す。残りは重力の聖痕で浮遊させて私が持っていけばいい。
「なにそれ?」
「またおかしな魔術を創ったのね」
ロゼから白い目で見られた。リザ姉はあらあらと言う感じで、おかしな魔術と言われてしまった。
そう言えば、わかるように重力の聖痕を他の人に見せたのは、ダンジョンの中が初めてだったかも?
「だったら、全部持てたんじゃない?アンジュ」
「ロゼ。肉が皿から落ちていいのなら、持っていくけど?」
「持って行くよ!」
ロゼはそう言って、スタスタとファルのところに寄ってから自分の席に戻っていった。
別に全部持っていってもいいのだけど、上下がどうなってもいいのなら、という条件がつく。あまり多いと、細かい調整がおろそかになってしまうんだよね。
そして、私はルディと第十二部隊長さんのところに配って、鬼の二人には好きなだけ食べていいと、大皿で肉の山をおてくる。
自分には四角く切ったサイコロステーキだ。もちろん中はレア!
「それで、どこまで話が進んだのかな?」
私はハーブソルトをマッシュポテトにかけながら尋ねる。大分時間が経ってしまったから、ほとんど終わっていることだろう。
「アンジュがいないのに、話を始めるわけにはいないでしょう」
「何故に!」
神父様の言葉に思わず突っ込んでしまった。いや、情報交換ぐらいは、すればいいじゃない。
「では、ファルークス。報告を」
「え?無視?」
「この国は聖女様を中心に回っているからですよ」
それは本当のことだろうけど、私を聖女と数えないで欲しい。寒気がする。
「これ美味しい!なんで、これをかけるだけで、こんなに味が変わるわけ?」
「いつものスープ。冷めてしまったのに、美味しいわ。特に香りが良くなっているわ」
そんな中、ロゼとリザ姉は私が作った調味料をいれて食べている。
「最近はこの味に慣れてしまったからなぁ、食堂に行かなくなってしまった」
ファルがそんなことを言って食べている。うん、朝食と夕食は宿舎で一緒に食べているし、昼食はここの食堂で食べている。
休みという概念がないから、毎日だね。
って、報告する気なく、食べている!
第十二部隊長さんは黙々と食べている。
酒吞はお酒を飲みながら、お肉にかぶりついているし、そんな酒吞を茨木は自分の分まで食べないでくださいよと念を押している。
ルディはと言うと私の横で、これが美味しいとかアレが美味しいとか料理を褒めているけど、私が作ったのは肉と調味料だけだからね。
そんな風景を見て神父様は呆れているのかと思えば、ふんわりとした笑みを浮かべていた。
いつもの胡散臭い笑顔ではなく、本当の笑みだ。珍しい。
いや、戦いの前の晩餐だ。
聖騎士はいつ命を落とすかわからない。だから、こうした何気ない食事風景が幸せなのだろう。
きっと神父様は今まで多くの聖騎士たちを見送ってきたに違いない。
「食べすぎて、動けないとかいう者は後ろから刺しますから、お腹いっぱいまでは食べてはいけませんよ」
悪魔神父は戦いの前の食事も十分に取らせないつもりだった!
「神父様。腹が減っては戦はできぬといいますよ」
「それも正論ですが、途中でお腹が痛いとか言う者は必要ないですからね」
その言葉にリザ姉とロゼの手がピタリと止まる。
「リュミエール神父。さっきから不穏な言葉が聞こえているのですが、今から戦闘になることはないですわよね?」
「常闇を閉じるだけって聞いているので、あっていますよね?」
リザ姉とロゼが確認している内容から、本当に何も聞いていないようだった。
「いや、シュテンが戦う気満々だから、それはないだろう?」
ファルは肉をバクバク食べている酒吞を指しながら、予想を口にした。うん。バレバレだね。
肉を焼き終えたけど量が多いため、人手を要求するために食堂に顔を出せば、まだ誰も食事に手を付けていなかった。いや、神父様はあのゴムの様な硬い肉を食べ終わってはいた。
「はいはい!行くよ」
ロゼが立ち上がってこちらに来てくれ、リザ姉も手伝ってくれるらしく、立ち上がってくれた。
「もう、さっきから凄くいい匂いで、お腹がギュルギュル言っているんだよね」
ロゼ。ギュルギュルってお腹を壊していそうな音だけど大丈夫?
「そう。じゃロゼは、ロゼの分と第十二部隊長さんの分を持っていって」
「隊長の分はアンジュが持っていくんだよ」
なぜかロゼに第十二部隊長さんの分を持って行くのを拒否られた。
「代わりにファルークス副部隊長の分を持っていくから」
よくわからないけど、ファルの分を持っていってくれるというから、ファルの分を渡した。
「じゃ私はリュミエール神父の分を持って行くわ」
リザ姉にはリザ姉の分と神父様の分を渡す。残りは重力の聖痕で浮遊させて私が持っていけばいい。
「なにそれ?」
「またおかしな魔術を創ったのね」
ロゼから白い目で見られた。リザ姉はあらあらと言う感じで、おかしな魔術と言われてしまった。
そう言えば、わかるように重力の聖痕を他の人に見せたのは、ダンジョンの中が初めてだったかも?
「だったら、全部持てたんじゃない?アンジュ」
「ロゼ。肉が皿から落ちていいのなら、持っていくけど?」
「持って行くよ!」
ロゼはそう言って、スタスタとファルのところに寄ってから自分の席に戻っていった。
別に全部持っていってもいいのだけど、上下がどうなってもいいのなら、という条件がつく。あまり多いと、細かい調整がおろそかになってしまうんだよね。
そして、私はルディと第十二部隊長さんのところに配って、鬼の二人には好きなだけ食べていいと、大皿で肉の山をおてくる。
自分には四角く切ったサイコロステーキだ。もちろん中はレア!
「それで、どこまで話が進んだのかな?」
私はハーブソルトをマッシュポテトにかけながら尋ねる。大分時間が経ってしまったから、ほとんど終わっていることだろう。
「アンジュがいないのに、話を始めるわけにはいないでしょう」
「何故に!」
神父様の言葉に思わず突っ込んでしまった。いや、情報交換ぐらいは、すればいいじゃない。
「では、ファルークス。報告を」
「え?無視?」
「この国は聖女様を中心に回っているからですよ」
それは本当のことだろうけど、私を聖女と数えないで欲しい。寒気がする。
「これ美味しい!なんで、これをかけるだけで、こんなに味が変わるわけ?」
「いつものスープ。冷めてしまったのに、美味しいわ。特に香りが良くなっているわ」
そんな中、ロゼとリザ姉は私が作った調味料をいれて食べている。
「最近はこの味に慣れてしまったからなぁ、食堂に行かなくなってしまった」
ファルがそんなことを言って食べている。うん、朝食と夕食は宿舎で一緒に食べているし、昼食はここの食堂で食べている。
休みという概念がないから、毎日だね。
って、報告する気なく、食べている!
第十二部隊長さんは黙々と食べている。
酒吞はお酒を飲みながら、お肉にかぶりついているし、そんな酒吞を茨木は自分の分まで食べないでくださいよと念を押している。
ルディはと言うと私の横で、これが美味しいとかアレが美味しいとか料理を褒めているけど、私が作ったのは肉と調味料だけだからね。
そんな風景を見て神父様は呆れているのかと思えば、ふんわりとした笑みを浮かべていた。
いつもの胡散臭い笑顔ではなく、本当の笑みだ。珍しい。
いや、戦いの前の晩餐だ。
聖騎士はいつ命を落とすかわからない。だから、こうした何気ない食事風景が幸せなのだろう。
きっと神父様は今まで多くの聖騎士たちを見送ってきたに違いない。
「食べすぎて、動けないとかいう者は後ろから刺しますから、お腹いっぱいまでは食べてはいけませんよ」
悪魔神父は戦いの前の食事も十分に取らせないつもりだった!
「神父様。腹が減っては戦はできぬといいますよ」
「それも正論ですが、途中でお腹が痛いとか言う者は必要ないですからね」
その言葉にリザ姉とロゼの手がピタリと止まる。
「リュミエール神父。さっきから不穏な言葉が聞こえているのですが、今から戦闘になることはないですわよね?」
「常闇を閉じるだけって聞いているので、あっていますよね?」
リザ姉とロゼが確認している内容から、本当に何も聞いていないようだった。
「いや、シュテンが戦う気満々だから、それはないだろう?」
ファルは肉をバクバク食べている酒吞を指しながら、予想を口にした。うん。バレバレだね。
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